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ストローの次はレシート? 米加州が禁止を検討へ

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
(写真:ロイター/アフロ)

 ストローの次はレシート? 米カリフォルニア州議会に8日、スーパーなどで買い物をした際に発行される紙のレシートを禁止する法案が提出された。レシートのコーティングに使われる化学物質が人の健康や自然環境に有害というのが理由だ。成立すれば、米社会への影響は必至だ。

 法案によると、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店は、客が要求しない限り、従来の紙のレシートは発行できなくなる。代わりに、電子レシートなど紙以外の方法での対応を迫られることになる。

 法案を提出した民主党のフィル・ティン下院議員は同日開いた会見で、オンラインショッピングやクレジットカード払いの普及に伴い、すでに多くの小売店が電子レシートを発行しており、紙のレシートを禁止することは難しいことではないと強調した。また、2022年1月の施行を目指すと述べた。

生殖機能への影響を懸念

 紙のレシートを禁止する理由としてティン議員が挙げたのが、レシートのコーティングに使われている化学物質ビスフェノールAが、人の健康や自然環境に害を及ぼす可能性だ。同議員は「紙のレシートの大半にはビスフェノールAが含まれている」と述べた。

 ビスフェノールAは、食品容器やOA機器、土木・接着剤など様々なプラスチック製品に使われているが、人の生殖機能への影響や発がん性が疑われており、米食品医薬品局(FDA)は、ビスフェノールAを使用した素材をほ乳瓶や乳幼児用の食器に使うことを、2012年に禁止した。

 欧州も、フランスが2015年に食品の包装容器へのビスフェノールAの使用を禁止するなど規制強化の方向だ。2017年には、欧州化学品庁(ECHA)がビスフェノールAを、人体への影響が極めて懸念される「高懸念物質」に認定。これにより、企業は製品にビスフェノールAが使用されている場合は、購入者にその旨を通知しなければならなくなった。

 また、ティン議員は、「レシートは紙でできているが、ビスフェノールAが入っているためリサイクルできない」と指摘。レシートをつくるために大量の樹木と水が消費されており、紙のレシートを廃止することは自然環境保護のためにも不可欠であると強調した。

 カリフォルニア州では1日、米国の州では初めてとなる、レストランで使い捨てのプラスチック製ストローを提供することを禁止する州法が施行されたばかり。ほかにも、全米一厳しいとされる排ガス規制や喫煙規制を導入したり、2015年にはやはり他州に先駆けて使い捨てのプレスチック製レジ袋を禁止したりするなど、先進的な環境規制で知られている。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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