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米加州で大麻解禁、合法化加速

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
(写真:ロイター/アフロ)

 米カリフォルニア州は1日、大麻(マリファナ)を嗜好目的で売買したり吸ったりすることを合法化した。米国では大麻を解禁する州が相次いでいるが、米最大の人口と経済規模を誇り、他州への影響力も大きいカリフォルニア州の大麻解禁は、「画期的な出来事」(AP通信)で、大麻をめぐる米社会の情勢を「劇的に変える」(CNNテレビ)と見られている。

 カリフォルニア州は2016年11月の住民投票で、嗜好目的での大麻の売買や使用を合法化することを決定。州大麻管理局が法整備を進め、今年1月1日に解禁した。

21歳以上なら合法

 所有や使用が認められるのは21歳以上で、所有は1人1オンス(約28グラム)まで。タバコ同様、大半の公共スペースでは使用禁止。飲酒運転と同様に、大麻を吸いながらや大麻の影響を受けた状態での車の運転も禁止だ。

 一方、大麻の販売業者となるには州の販売免許が必要となる。販売を独自の条例で禁止する自治体も多く、解禁とは言っても野放し状態になるわけではない。

 米国では、医療目的での大麻の使用は約半数の州で認められているが、嗜好目的での使用は最近まで認められていなかった。しかし、2014年にコロラド州が全米で初めて、嗜好目的での使用を合法化したのを皮切りに、昨年までに、ワシントン、アラスカ、オレゴン、ネバダの各州が、相次いで合法化。今年も、カリフォルニアのほか、マサチューセッツとメーンで合法化が予定されている。

2兆7000億円市場に

 カリフォルニア州の大麻解禁は、米国内での大麻合法化の流れを加速すると見られている。

 米全体の12%を占める4000万人の人口を抱えるカリフォルニア州は、政治や経済、文化など様々な分野で他州への影響力が大きい。1996年に医療目的での大麻の使用を最初に解禁したのも同州だった。世論調査機関のギャロップは、2年前のカリフォルニア州の住民投票の前に、「住民投票で大麻の合法化が決まれば、他の多くの州も合法化に動き出すのではないか」と指摘した。

 ある調査会社の予測によると、米国の大麻市場は、嗜好目的の使用解禁の動きにより、2025年までに2016年の3.7倍増となる241億ドル(2兆7000億円)に拡大する見通しだ。

 大麻合法化の背景にあるのは、大麻の取り締まりに関する法律や警察の態度を人種差別的だと見る米国民が非常に多いことだ。黒人などマイノリティーの間には、大麻常習者には白人も多いのに、逮捕されるのはいつも自分たちという強い不満がある。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、「大麻を禁止する法律により、過去何十年の間に、何百万人という市民が逮捕され、何万人もの市民が刑に服した。だが、大麻で逮捕され投獄された人たちの圧倒的大多数は、一度も凶悪犯罪に手を染めたことのない人たちだ。大麻に関する政府の政策は、とりわけ国内のマイノリティー社会に壊滅的な影響を及ぼしている」と指摘し、大麻合法化を支持する。

薄い罪悪感

 また、違法にもかかわらず多くの米国人は大麻を吸った経験があり、大麻を吸うことに対し罪悪感が薄いことも、大麻合法化の背景だ。

 カリフォルニア州の大麻解禁に合わせてロサンゼルスに大麻販売会社を設立したビル・ロッキャー元カリフォルニア州司法長官は、地元紙のインタビューに、学生時代に大麻を吸った経験があると語った。ビル・クリントン元大統領やバラク・オバマ前大統領も、若いころに大麻を吸ったことを認めている。各種世論調査によると、米国の成人の約6割は大麻合法化に賛成だ。

 州レベルで解禁の動きが広がるなか、連邦法は依然、大麻の所持や使用を禁じている。しかし、連邦政府が各州の動きに介入する気配は今のところない。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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