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新年の目標 三日坊主防ぐには

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
(写真:アフロ)

 「今年は仕事で大きな成果を上げる」「今年こそはTOEICで800点をとる」。年の初めに新年の目標を立て、気合いを入れて新たな1年のスタートを切るビジネスマンは多い。だが、張り切った割には三日坊主に終わる人もこれまた大勢いる。どうすれば挫折せずに目標を達成できるのか。鍵は「目標の立て方」と「スタート」にあると専門家は指摘する。

8割が挫折

 新年の目標を立てるのは日本だけの習慣ではない。新年の目標を英語ではNew Year’s Resolutionと言う。自身のNew Year’s Resolutionを毎年公開しているのが、フェイスブックのマーク・ザッカ―バーグ最高経営責任者だ。公開する場はもちろんフェイスブック。例えば、2017年初めに公開したその年の目標は、「米国の全州を訪ね、現地の人たちと暮らしや仕事、未来について話をすること」。32万人が「いいね」を押した。

 ビジネスマンにとって新年の目標を立てることは、自分を成長させ、キャリアップにつながる。多くの企業経営者や企業幹部を顧客に持つエグゼクティブ・コーチの和気香子さんは、毎年、年の初めに「今年の目標やテーマを決めませんか」と顧客に提案するという。

 だが、目標を立ててスタートを切ったものの、途中で挫折する人が多いのも現実だ。米国では、新年の目標を立てた人の8割が途中で達成を諦め、3人に1人は2月を迎える前に挫折するとの調査結果がある。

 逆に、1年間努力を続け、目標を達成する人もいる。この違いはどこから来るのか。「意志の強さ」を理由に挙げる人もいるが、和気さんは、「意志の強弱は無関係。正しい方法でやれば結果は付いて来る」と強調する。

 では正しい方法とは何か。ここでは2つの方法を紹介しよう。最初は、習慣化コンサルタントとして企業や個人の目標達成をサポートする古川武士さんの勧める方法だ。

ワクワク感が大切

 1)まず、3~5年後の自分をイメージする。例えば、「営業職として会社の業績に大きく貢献し、出世して高給取りになっている」「会社を辞めて起業し、仕事も私生活も充実している」などだ。

 ポイントは、イメージした時にワクワクした気持ちになれるかどうか。ワクワク感がないと、目標に向かって努力するモチベーションがわいてこないためだ。もう1つのポイントは、現状の自分とかけ離れたイメージを描くこと。それぐらいでないと、ワクワク感は出てこない。

 2)次に、自分の描いたイメージに近づくため、この1年間でやるべきことを決める。これが『新年の目標』になる。例えば、3年後ぐらいに優秀な営業マンとしての評価を確立したいなら、今年の目標は「人脈を広げる」「ビジネス知識を身に付ける」「コミュニケーション力を強化する」などが候補に上がる。

 目標は3つまで。多すぎては実現可能性が低くなるからだ。また、3~5年後のイメージは非現実的で構わないが、この1年の目標は、努力すれば確実に達成可能な現実的なものにすることが重要だ。高すぎる目標は挫折の原因となる。

 3)最後に、1年の目標を達成するために日頃やるべきことを決める。いわゆるTODOリストだ。例えば、「人脈を拡大する」ためには「毎週、会食する」「毎月、100人と名刺交換する」。「ビジネス知識を身に付ける」には「毎日ビジネス書を読む」「ビジネススクールに通う」などが浮かぶ。この中には生活や行動の習慣化が必要なものも含まれる。

 ここで注意点が2つある。複数のことを1度に習慣化しようとしないこと。そして、いきなりハードルを高くしないこと。いずれも挫折の原因になる。例えば、「朝5時に起きて1時間英語の勉強をする」というTODOは、設定してはいけない。この場合、まず朝5時に起きることを習慣化し、それができたら英語の勉強を習慣化するのが正しいやり方だ。

 勉強時間も、いきなり1時間はハードルが高い。最初は、例えば15分から始め、無理なくできるようになったら、30分、1時間と延ばしていく。最初は物足りなさを感じるかもしれないが、挫折のリスクは減る。これは「ベビーステップ」と呼ぶ、多くの専門家が効果を確認している手法だ

 次に、エグゼクティブ・コーチの和気さんの勧める方法を紹介する。

するべきことではなくしたいこと

 1)まず、目標を立てる際は、何をするべきかではなく何をしたいかを考える。したいことと、するべき(と思い込んでいる)ことを混同している人は多い。自分の本当にしたいことを確認するには、過去1年間のスケジュール表や日記を見返し、心の動いた出来事を思い出すとよい。心が動くのは、自分が大切にしている価値観に触れた証拠。つまり、自分が本当にやりたいこと、実現したいことがわかる。1年を振り返るのは自分と向き合うことになり、気持ちを新たにするためにも有効だ。

 2)心の動いた事を見つけたら、次に、今から1年後の正月をどういう気持ちで迎えているか想像し、一言で表現する。例えば、「仕事が順調で充実感にあふれている」「大きな事を成し遂げホッとしている」など。そして、そういう気持ちで1年後の正月を迎えるためには具体的に何をするべきか、思い付く限り書き出す。気持ちをワクワクさせる効果がある。

 3)第3に、書き出したものはいったん脇に置き、再び1年後の正月を思い浮かべて、そこから1年間を振り返ったつもりでタイトルを付ける。例えば「2018年は独立・起業に向け自信を深めた1年だった」など。これが『新年の目標』になる。タイトルは抽象的で構わない。

 4)第4に、タイトルを現実のものとするため、この1年間にとるべき具体的な目標を決める。例えば、タイトルが独立・起業に向け自信を深めるなら、具体的な目標は「経営の知識を得る」「資金の目途を立てる」などになる。この時、先に思い付く限り書き出したことが参考になる。

5)最後に、これら具体的な目標を日々の行動に落とし込んでいく。ここでもやはりキーワードはベビーステップ。例えば、経営の知識を得るためにビジネス書を読もうと決めたら、まずは、アマゾンでビジネス書を探すことを当座の目標にしてもいい。簡単な目標を1つずつ着実にクリアすることで、自信を積み重ねて行くことが成功のカギだ。

 今年こそは是非、飛躍の1年にしたいものだ。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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