「県外からボランティアが入れない…」コロナ禍での災害支援のあり方を熊本豪雨から考える

「実家が被災したけれど、コロナ禍の中では手伝いに行かない方がいいの?」

「東北の震災では現地にボランティアに行ったけど…、今後はどうするのがいい?」

コロナ禍の中で、こんな疑問を持つ人もいるでのはないでしょうか。自然災害が多く発生する日本。特に夏から秋にかけて、大型台風や豪雨による被害も発生しています。

熊本県南部を中心に甚大な被害をもたらした豪雨発生から1カ月半。8月になっても1400人以上が避難所で生活しています。私が代表を務めるNPOカタリバは、発災直後から現在も避難所で子どもたちの居場所を運営しています。

これまでの災害支援とは大きく違う、コロナ禍という壁

カタリバは、東日本大震災(2011)・熊本地震(2016)・東日本台風(2019)などの災害でも、子どもたちに緊急支援・その後の中長期支援を行ってきました。けれどこれまでの災害と大きく違うのは、熊本豪雨はコロナ禍で起きたということ。

まず、これまでであればカタリバの各拠点横断でタスクフォースチームを組み、複数のスタッフを派遣します。でも今回のコロナ禍では、県外から人が移動してくることがはばかられるし、実際にリスクになってしまうかもしれない。

どうしようか考える中で、「熊本県へ移住した元カタリバスタッフがいる」と頭をよぎりました。彼女は企業からカタリバへ転職したと同時に発災した熊本地震で、被災した子ども達への支援の現場を任せた人。3年働いた後も熊本県益城町で暮らしています。

すぐさま彼女に連絡し、緊急調査チームを立ち上げ、2日後には現地調査をスタート。現地とリモートで連絡を取り合いながら、学校現場や避難所で先生や保護者にニーズを聞き取りました。

現地の状況からみて、例えば昨年起きた台風19号の被災地同等か、地域によってはそれ以上の状況が起きていると判断。関係各所と協議を行い、被災者数が最大規模であった人吉市と球磨村の避難所に、子どもの居場所と遊び場支援「カタリバパーク」を発災5日後から開始することができました。

(1)感染症や熱中症の予防…ハードな子どもの体調管理

しかし、子どもの居場所を運営する上でも、いつもと違う動きが求められます。

何よりもまず、感染症予防。限られたスペースでできるだけ密を避けながらも、子どもたちには楽しんでもらいたい。ソーシャルディスタンスを保った遊びを提案し、1時間ごとの消毒タイムなどを設けました。

また外は連日30度を超えており、熱中症対策も求められます。換気のために窓を開け放しつつもエアコンを効かせるなど、空調管理を行いました。

マスクをずっとつけていると熱中症リスクも上がります。こまめに水分をとってもらったり、体調変化を気にしないといけません。

これまでの災害支援では、子どもの気持ちの変化をくみ取ったり、精神的なケアをすることが多かったのですが、今はまず子どもたちの体調管理をしないといけない。その上で、気持ちのケアや学習支援も行っていく。

発達特性のある子どももおり、被災によるストレスも重なって大きな声で叫ぶ子どもや、突然泣き始める子、暴力で当たり散らす子どももいます。一見大人しそうに見える子でも、自傷行為が増えていることもあります。限られた人数でこれら多様なニーズを全方位でケアしていくため、スタッフの疲労度はいつもより高い状態でした。

(2)県外からの人手は望めず…現地採用と遠隔支援という新たな形

またこれまでの災害であれば、全国から支援の手が差し伸べられ、週末・連休には泥かきや片付けの手伝いなどのボランティアがあふれる状況でした。

しかし、今回は熊本県として外からのボランティアを受け付けていません。県内の人ですら、新型コロナウイルスのクラスターが発生した地域からは簡単に移動ができない状況です。

カタリバが実施したことは、現地の人たちを採用することでした。近隣の地域内にも、被害が大きかったエリアとそうではないエリアがあり、働くことができる人もいます。いちはやく求人を出し、地域の人に有償スタッフとして動いてもらうことができました。

また現場のボランティアについては、熊本県の教育委員会と連携して元教員や大学生などを集めてもらうことができ、最低限の人数を確保することができました。

バックオフィスもリモートでできないかと募集してみると、北海道のNPO法人ezorock(エゾロック)さんや、その他現地にゆかりがあるビジネスマンの方などが「遠隔でできることがあれば手伝うよ」と声をあげてくれました。

近隣から来てくれるボランティアさん達にオンラインで活動説明会をしてくれたり、物品寄付の問い合わせに対してとりまとめを行ってくれることで、とても助かりました。

現地で行うものだと思っていた業務も、一部は遠隔から担えることが改めてわかりました。移動が制限されるコロナ禍では、遠方からのオンライン支援と、現地採用の組み合わせが、災害時の緊急支援のひとつのあり方になっていくのかもしれません。

(3)現場での支援と、オンラインによる学習支援の組み合わせ

また遠隔から、バックオフィス支援だけでなく、子どもたちへの学習支援も行うことができました。

球磨村の中学校では、夏休み期間に学校から中学三年生を対象にタブレットが配布されたため、家や避難所からカタリバオンラインにつないでもらい受験勉強などの学習支援をすることもできました。

また、道ががれきや土砂でふさがり学校に通えなくなった高校生に対して、「奨学パソコン」としてパソコンとWi-Fiルーターを無償で70台貸与。家や避難所、仮設住宅からオンラインで授業に参加することができるようになりました。

この取り組みは、困窮している子どもを支援する「あの子にまなびをつなぐ」プロジェクトで実施しており、現在は費用の一部を集めるクラウドファンディングも行っています。

ただ、オンラインに慣れていない子どもや保護者も地方ではより多いため、慣れた人が現地側でフォローする必要はあります。パソコンなどの機器をただ送るだけではオンライン支援は成り立たず、現地との協力関係があってこそ効果を出せるといえそうです。

コロナ禍での災害対策、みんなで考えていく契機に

医療資源の乏しい地方で、コロナを蔓延させるようなことがあってはいけない。でも、だからといって何の支援もしなくていいわけではない。そんなジレンマを抱えながらも活動を続けてきました。

私たちが今やっている方法がベストというわけではありません。とにかく歩みを止めないよう動きながら、私も現場スタッフもどうするのがいいか試行錯誤しています。

今は発災から1ヶ月半が経ち、緊急支援から中長期支援を考えるフェーズに来ています。「ストレスが増えて子どもたちもすごく不安定だったけれど、子どもたちが過ごしたいようにすごせる居場所があることで落ち着いた」とスタッフに声をかけてくれた地元の先生もいるそうです。

コロナ禍の中で、県外のメディアは現場に入れないなど、報道も制限されています。知る機会が少ないこともあるのか、今回の災害では寄付もいつもほど集まっていません。

いま起きていることを知らないと、次の災害に備えることもできない。今回の災害のことを少しでも記録に残せたらと思い、こうして記事を書きました。

災害で苦しむ子どもたちを減らすために、私たちももっといいやり方を見つけていきたい。コロナ禍における今後の災害をどのように乗り越えていくのがいいか、みなさんと考えていけたらと思っています。