英国LSE「情報クライシスへの取り組み」レポート:メディア政策の観点からのプラットフォーム政策

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 本コラム、しばらく日本の情報政策の話題が続きましたが、しばらくまた元々のテーマである外国のことを書かせて頂こうと思います。

 本日は英国LSE(London School of Economics and Political Science)のLSE Truth, Trust and Technology Commissionが先日公表したばかりの以下の「情報クライシスへの取組み(Tackling the Information Crisis)」レポートについて。ここしばらく英国は所謂GAFAさんをはじめとしたプラットフォームに関連する政策について、主に競争政策等の観点から重要な検討レポートを立て続けに出していて各所で話題になっているのですが(これとかこれとか)、今回のものはメディア政策の観点からの非常に興味深い内容です。

 

Tackling the Information Crisis: A Policy Framework for Media System Resilience THE REPORT OF THE LSE COMMISSION ON TRUTH TRUST AND TECHNOLOGY

 

 個人的な注目点を中心に、内容をざっくりと。

 

●まず全体としてIndependent Platform Agency (IPA) という組織を創設する提言が中心になっています。3pの以下通り、OfcomやCMA、ICO、選挙委員会等の関係機関と連携して機能する、Observatory的な組織を想定しているようですね。3月の英国貴族院レポートで提案されたDIgital Authorityのような組織の役割についてメディア政策の観点から論じたものと言っても良いかもしれません。ちなみに原資はSNSと検索広告への課税で運営されることが想定されているようです。ICOも確か企業からの登録料で運営されているはずでしたが、英国のIndependent Administrative Agencyはこういう形態で運営されることが多いようです。

The IPA should be established by legislation and have the following duties:

- Report on trends in news and information sharing according to a methodological framework subject to public consultation. This should include real data on the most shared and read stories, broken down by demographic group.

- Report on the effectiveness of self-regulation of the largest news-carrying social and search platforms. This should include reports on trust marks, credibility signalling, filtering and takedown.

- Mobilise and coordinate all relevant actors to ensure an inclusive and sustained programme in media literacy for both children and adults, and conduct evaluations of initiatives. The

IPA should work with Ofcom to ensure sufficient evidence on the public’s critical news and information literacy.

- Report annually to Parliament on the performance of platforms’ self-regulation and the long- term needs for possible regulatory action.

- Provide reports on request to other agencies such as the Electoral Commission, Ofcom and the Information Commissioner’s Office, to support the performance of their duties, according to agreed criteria.

- Work closely with Ofcom and the Competition and Markets Authority to monitor the level of market dominance and the impact of platforms on media plurality and quality.

出典:Tackling the Information Crisis, 3p

 

●21pに、関連する各種自主・共同規制アプローチのことが紹介されています。ヘイトスピーチdisinformation改正AVMSDコンテンツ削除等に関わるデュープロセス等色々なアプローチが実践・提案されているところですが、そうしたものをIPAが監督・調整するべきだとします。こうしたもの沢山あると調整するのも大変ですし、また各分野のプラットフォーム政策でも国際的に常に論点となっているように、分野横断的な形でのmonitoringを強化することは、プラットフォーム経済における自主・共同規制を成り立たせる上で非常に重要な部分です。

 

●23pのプラットフォーム課税によるデジタルジャーナリズム支援アプローチ一覧は大変便利。某研究会で最大のdisinformation対策はデジタルジャーナリズム強化だとお話しさせて頂いたのはこの論点です。何かと話題のDSM著作権指令案もEUではここにカテゴライズされるものです。DSM著作権指令案についてはまたどこかで詳しく解説をさせて頂きたいと思います。

Tackling the Information Crisis, 23p
Tackling the Information Crisis, 23p

●24p~に競争政策。最近米国大統領選挙出馬予定のエリザベス・ウォーレンの公約で話題になるようなフェイスブックやグーグルの分割・解体の論点に触れ、特に25pのこれまでのメディア政策関連提案一覧(これも画像添付)は興味深い。フェイスブック推薦アルゴリズムの分割案とかあったんですね。メディア政策と競争政策の接点はこれから改めてよく考える必要があります。

Tackling the Information Crisis, 25p
Tackling the Information Crisis, 25p

 

 全体として、EUやUSの最近のPF競争政策の議論は、問題や価値、あるいはシナジーや影響のスコープをどの範囲に設定するかで、180度評価が変わってきうるのだと感じています。色々な観点からの勉強頑張ります。