「生貝直人の情報政策論」はじめます

『情報社会と共同規制:インターネット政策の国際比較制度研究』勁草書房、2011年

はじめまして、今日からここで「生貝直人の情報政策論」というコラムを持たせて頂く生貝直人(いけがい・なおと)です。2012年に東京大学の学際情報学府というところで博士(社会情報学)を頂いて、今は国立情報学研究所やいくつかの大学や政府機関で研究者をしています。

タイトルの通り「情報政策」について色々書かせて頂くことになりますが、情報政策とは何かというと、ここではプライバシーや著作権、表現の自由、サイバーセキュリティ、あるいはイノベーションといった情報に関わる法律や政策全般を指しています。特に僕自身は日本の情報政策をヨーロッパ(単にEUと示すことが多いです)・アメリカと比較することを専門にしているので、EUやアメリカの最新の話題を適時お届けしていくことができればと思います。

僕自身の研究の内容としては、拙著『情報社会と共同規制』(勁草書房、2011年)をお目汚し頂くのが一番よいのですが、ちょっと内容的にはハードコア(?)な感じかもしれず、最近ではいくつか一般向けのメディア紹介記事なども出して頂いておりますので、ぜひこちらもご覧くださいませ。

「【生貝直人氏インタビュー】情報社会でいかにルールを作るのか──共同規制、プライバシー、クリエイティブ・コモンズ 『情報社会と共同規制』著者 生貝直人氏インタビュー|ソフトバンク ビジネス IT」

| SYNODOS -シノドス-」 「法制度からオープン・データを考える | SYNODOS -シノドス-」

「“忘れられる権利”はネット社会を変えるか? - NHK クローズアップ現代」

さて、少しだけ本題です。なぜヤフーさんのコラムで「EUやアメリカの」情報政策を書くのでしょうか。僕たちは基本的に日本に住んでるわけで、日本の法律や政策さえ知っていれば大して困ることはないんじゃないかという気もします。実際問題法律や政策ってえらくわかりづらくて日本だけでも精一杯だよー、というのが多くの方々の実感だと思われますが、それでもやはり、ある意味では「日本の情報政策以上に」、EUやアメリカの情報政策を「知る必要がある」理由はおおよそ下記の通りです。

1、第一に、僕たちが日常的に使っているグーグルやフェイスブック、ツイッターなんかの巨大サービスが、基本的にはアメリカのシリコンバレーに本社を置いているということです。彼らはもちろん日本の法律を尊重していますけれど、基本的にはグローバルに同じサービスを提供しているので、やっぱり彼らにとって一番大事なアメリカの(そしてシリコンバレーがあるカリフォルニア州の)法律や政策のスタンダードで動いています。フェイスブックでプライバシーを侵害された!と思ったら、もちろん日本の個人情報保護法を調べる必要がある一方、アメリカのプライバシー保護法についても知らないと、僕たちのプライバシーは守ってもらえないかもしれないのです。

2、第二に、日本の多くの(あるいはほとんどの)情報関係の法律や政策が、アメリカはもちろん、それ以上にEUの情報政策を参考にして作られているということです。たとえば2005年に施行された日本の個人情報保護法はEUで1995年に作られた「データ保護指令」を全面的に参考にして作られていますし、ネット企業のみなさんにとって最も重要な法律であるいわゆる「プロバイダ責任制限法」は、2001年のEU「電子商取引指令」や1998年のアメリカ「デジタルミレニアム著作権法」なんかを全面的に参考にして作られています。今日本でも個人情報保護法を全面的に改正しようとする作業が進められていますけれど、これも基本的には2012年にEUで公表された「データ保護規則」案の影響を非常に強力に受けてのものです。つまりEUやアメリカの現在の情報政策を知る事は、ある意味では日本の将来の情報政策を知ることに他ならないのです。

3、第三に、これはインターネットの「ユーザー」には普通はあんまり関係ないのですが、インターネットを使って外国の人も使うウェブサービスを開発・提供しようとする人は、当然にそういうサービス提供先の外国の法律も知っておく必要があります。そうじゃないと「あなたのサービスがイタリアの法律に違反しています!」といってインターポールの銭形警部があなたを捕まえにきたり、、ということもないとは言い切れません。こういう事例も適宜ご紹介していきます。

日本に住んでるのに外国の法律も知らないといけないなんて、もう大変な時代ですよね。でもインターネットの「本性」ってそもそもそういうものだったという気もします。本当の意味でのグローバル化が進む中で、ちょっとでもガイドになるような情報を書いていければと思いますので、どうぞ今後よろしくお付き合いくださいませ。