「特別養子縁組」を巡る議論が盛り上がっているのでまとめてみる

目下関心があるテーマなので、駒崎さんのツイートを中心に、論点をまとめてみます。

発端は読売新聞の記事

児童福祉法で営利目的の活動が禁じられている特別養子縁組のあっせん事業を巡り、東京都内の2団体が2011年度までの3年間に90件のあっせんを手がけ、うち80件で養父母側から寄付金名目で計約8300万円を受け取っていたことが分かった。

出典:養子あっせん80件で計8300万円「寄付金」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

このニュースだけ見ると、いかにも「あっせん事業」が悪いことであるように読めます。2chなんかを見ても「人身売買!」「寄付高杉ww」といったクチコミが散見されますね。

しかし、問題はそう簡単ではありません。

この報道と養子縁組の現状については、フローレンスの駒崎さんが強い問題意識を持って、意見を発信しています。

まず、養子縁組は虐待問題の解決策になっている、という指摘。

日本では毎年50人近くの子ども達が虐待で死んでいて、そのうち半数が産まれたばかりの乳児。計算すると、2週間に1人、この世に生を受けた瞬間に実の母親から殺されている赤ちゃん達がいることになります。特別養子縁組が、人知れずこうした失われるはずの命を救っているのです。

出典:赤ちゃんの命を救う特別養子縁組 | 駒崎弘樹公式サイト:病児保育・小規模保育のNPOフローレンス代表

虐待をはじめとする問題解決にあたって、行政の関与がないという指摘。

児童福祉法であっせん手数料を禁じている、というのも馬鹿らしい話。だったら諸外国のように、養子縁組団体に補助すべき。厚労省は規制だけして支援はせず、虐待死の問題にまともに取り組んでいない。児相だけに任務を押し付けている。全くのナンセンスだ。

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

児童養護施設に偏重している現状の指摘。

諸外国では既に施設養護から家庭養護へ、ということで、里親委託や養子縁組等を中心に置いているが、日本では施設養護が9割を占めている。本当に後進的な政策を取り続けてきたにも関わらず、今民間の家庭養護の道まで閉ざそうとしている。

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

関連して、厚労省の資料より。日本は里親委託が圧倒的に少ないですね。

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朝日新聞の記者とのやり取り。100万円程度という費用は決して高くない、という指摘(この費用感については、「一件200万円は高いのか?養子縁組の費用について調べてみる」という記事を書きました)。

@asahi_kazoku 100万円を超すのが高額、というのは何が根拠ですか?課題を抱える妊婦のカウンセリングから始まって、出産費用の肩代わりや、養親の研修までやっていたら、100万を超えるのはおかしくないです。むしろ諸外国ではある特別養子縁組への補助がない方が問題では?

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

行政の実態について。

朝日新聞(@asahi_kazoku)が全く理解していないので解説すると、児童相談所の多くは、望まない妊娠をした妊婦が相談しても「産んでから来て頂ければ・・・」等と言って、対応してくれない場合も多い。そこを対応し、特別養子縁組に繋げてきたのは民間団体だった。

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

民間団体の質を上げるためには、行政の支援、政策的な議論が必要だという主張。

もし民間団体の質を上げたいならば、諸外国のようにきちんと補助(税投入)し、適切なルールを守らせれば良い。現在、厚労省は補助ゼロで、何ら支援を行っていない。そうした構造こそをメディアは多角的に取材すべきだ。人の命が掛かっている、ということを強く認識してほしい。

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

マスコミの報道によって、民間の特別養子縁組が危機に瀕するのではないか、という危惧。

@asahi_kazoku マスコミがこうした報道を行うことで、「フィーを取るのがおかしい」という論調になり、そうすると諸外国と違って補助が一円も出ていない日本では、特別養子縁組事業者は全滅します。不確かな情報に基づいて意見されるのは、責任ある態度があるとは言えないのでは?

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

メディアの方々には、単なる業者叩きではなく、日本の社会的養護の貧弱さ、その犠牲になってトイレで死ぬ乳児達、それでも進まない特別養子縁組政策、こういった所にスポットライトを当ててほしい。切なる願いだ。

出典:駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) July 11, 2013

谷中ベビマム安心ネットの矢嶋さんの指摘。

でも本当に、特別養子縁組の大半は民間が担っていることを知らない人が多い。行政が関与してくれる=安心、という誤解。行政の養子縁組はハードルが高いんだよ、乳児はほぼやらないし。行政は民間と連係しないし、補助もない。監督する必要はあると思うが、それならもっと国で活発に議論すべきだ。

出典:矢嶋桃子 (@mom_yaj) July 11, 2013

その議論の中に当然乳児の特別養子縁組も入ってくるだろうし、妊産婦の支援も考えられるだろう。今の状況は、特別養子縁組自体が触れてはいけないもののように、何だかよくわからない恐ろしいものとして扱われているような印象を受ける。

出典:矢嶋桃子 (@mom_yaj) July 11, 2013

ひとまずポイントをまとめると、

・養子縁組によって救われる命がある(虐待問題の解決策)

・行政の取り組みの不十分さを、民間が補っているという現状がある

・日本は諸外国に比べて、施設養護が圧倒的に多い

・100~200万円という費用は「高額」とはかぎらない

・民間団体の規制、質向上に取り組む上でも、政策的な議論が必要

・メディアが事業者をバッシングすることで、民間の養子縁組が危機に瀕する可能性がある。そうなれば、救われていた命も救われなくなる。

なんてところになるでしょう。

特に、養子縁組は命が関わる問題であることを認識するのは、大切なことだと思われます。救われる命があることを理解して、健全な制度設計の議論につなげていきましょう。