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スーパーの次のトレンドは"プラントベース"? 商談展示会から見えた食の最先端とは

池田恵里フードジャーナリスト
地方・地域産品展示会場(全国スーパーマーケット協会写真提供)

コロナ禍で中止が余儀なくされるなか、今年もスーパーマーケット・トレードショーは開催された。

開催日:2022年2月16日、17日、18日

場所:幕張メッセ

出展者数1652社・団体、2976小間。

全国各地から自治体や地方金融機関などのとりまとめにより、1170社以上の

地域産品メーカーが出展。

海外から6か国。69社・団体、70小間が参加。

同時に開催されていた「デリカテッセン・トレードショー2022」と合計すると出展社数1690社・団体、3197小間での開催                               (一般社団法人全国スーパーマーケット協会、スーパーマーケット・トレードショー運営局のニュースリリースによる)

日本でも最大のトレードショーである。

まずは今回、主催している全国スーパーマーケット協会からコロナ禍におけるトレードショー開催にあたり、運営、そして最近の食の動向について、産業調査室長の名原孝憲氏(以下名原氏)にお話を伺った。

産業調査室長名原孝憲氏(筆者撮影)
産業調査室長名原孝憲氏(筆者撮影)

コロナ禍での開催にあたっての経緯

名原氏「2020年2月はコロナウイルス感染拡大の直前でしたので、8万人(出展社や関係者をあわせると約10万人)規模で盛大に開催したのですが、緊急事態宣言下での開催となった21年には来場者2万6000人にまで来場を絞込みました」

スーパーマーケットトレードショーと他の展示会の大きな違いは、全国スーパーマーケット協会の主催であること。

名原氏「主催者側はスーパーであり、そして来場者もスーパー中心であるということが大きな特徴です。スーパーはコロナ禍であっても営業を続けなければなりません。食品は、オンラインでの商談はどうしても難しいものがあります。来場者であるスーパー各社にとっては、実際に見て、持った時の重量感を確かめ、そして食べてみないと選びづらいのです。つまりリアルでの商談の場が大切です。また、食品だけでなく、お店の営業継続を支えるシステムや感染対策の提案も紹介される場でもあります。そのためにも感染対策を徹底した上で開催し、安心感をもって商談してもらえるよう運営を心掛けました」

主催者では、スーパーの売り場に並んだときをイメージしやすいように、事前に出展するメーカーと、来場者であるスーパー企業の代表者が、トレードショーにおいてどのような提案が望ましいか議論する場を設け、お互いのビジネスチャンスを拡大できる展示場を作り上げている。

多くのトレードショーでは出展者の側による自社アピールが強く打ち出されやすい。しかし事前に話し合いが行われることで、来場者であるスーパーにとっても、出展するメーカーにとっても、良い結果につながる好循環が生まれているのだという。

密集対策として

2021年

出展小間数は感染拡大前より3割減とし、通路を広くとった。また、1小間あたりの出展者は2名までに制限し、来場者においても、招待券の発行枚数を絞り、事前登録を必要とした。これにより会場内の密集を避けた。

2022年

2021年を開催実績を素に、今回は小間を前回より1割増やしたが、事前の出展申し込みは、キャンセル待ちが出るほどであった。

来場者は21年と同様に事前に招待券があり、事前登録を必須とした。

今回、初出展となった参加企業のなかには、外食など業務用の需要が厳しいなか、スーパーなどでの市販用に活路を拡大しようとするメーカー、あるいは外食産業からの参入などが多く見けられた。

次に22年の食の傾向を伺った。

名原氏「まずはプラントベース、近頃は大豆ミートやオートミールなどを使用したメニューが多くなったと思います。次に外食が軒並みダウンしたことで、テイクアウトや中食、デリバリー向けの機器や容器なども見受けられるようになりました。外食参入組と参入するために必要な機械、容器なども見受けられるようになりました。冷凍技術の発達したこともあり、冷凍食品や冷凍ケース、冷凍食品の自販機の展示も多く見受けられましたね。また、プラスチック資源循環促進法が4月から施行されることもあり、紙製や木製、あるいはプラスチック使用量を削減した容器やスプーン、フォークなどの提案も急速に拡大しました」

ということで、今回のトレードショーで目立った動きは以下の通り。

・プラントベース(植物性の食材)

・4月に施行されるプラスチック資源循環促進法の対応

・テイクアウトやデリバリーを考慮した提案

・食品ロス削減に向けた量り売りや未利用食材の活用などの提案

・冷凍技術の発達によるから自販機など新たな冷食の販売方法

では順に追って企業の取り組みを紹介しよう。

プラントベース(植物性の食材)について

プラントベースとは

プラントベースフードは、植物をより積極的に摂っていこうというコンセプトに基づいて作った食品のことを示す。

つまりヴィーガンとは、同じカテゴリーではない。共通としては、動物性を摂らないということ。

そこで帝人株式会社が手掛けるプランドベースを見てみよう。

帝人株式会社の機能性食品

帝人では2016年よりオーストラリアからスーパー大麦「バーリーマックス」を輸入し、2017年からはファミリーマートでおむすびに年間商品として採用され、昨年12月にはこれが2億食を突破。好評を得ている。スーパー大麦「バーリーマックス」は白米の約40倍、一般的の大麦(押麦)の約2倍以上の食物繊維が摂れるという。

一方、水溶性食物繊維ついては、日本以外は水溶性繊維の海外で主流のチコリ根由来のイヌリンが主流である。帝人株式会社では欧州で栽培されたチコリから抽出したものを使用している。その商標名は「イヌリア」である。加工食品の原料として広く、BtoBで活用されている以外にeコマース業者が一般消費者へ販売。プレバイオティクス食材として浸透しつつある。

4月に施行されるプラスチック資源循環促進法の対応

2021年6月「プラスチック資源循環促進法」から2022年4月 プラスチック資源循環促進法)」は、プラスチックの使用量を減らし、資源として循環する、そうした社会を目指すための法律である。本法律に基づき,2022年4月をめどに、コンビニなどで無償提供されていたプラスチック製スプーンなどの有料化などが始まる。6月に成立した「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」は、プラスチックの使用量を減らし、資源として循環する、そうした社会を目指すための法律である。本法律に基づき,2022年4月をめどに、コンビニなどで無償提供されていたプラスチック製スプーンなどの有料化などが始まる。

シーピー化成株式会社

シーピー化成ではこれまで3つの取り組みを行ってきた。

Reduce(省資源化の推進と廃棄物の削減)

Renewable(環境負荷低減に寄与する技術、製品開発)

Reuse/Recycle(廃棄物の再利用・再資源化)

これらを23年(中長期目標)までに

・Reduceでは、20年より5%以上の削減、

・Renewableでは、21年4月までに190アイテムから23年には500アイテム超え

・Reuse/Recycleでは、工場内の再利用は従前より100%の再利用を行っており、産業廃棄物のリサイクル発泡技術だけでなく成型技術の軽量化に取り組んだことでプラスチックの使用量の削減にも徐々に寄与している。

については、20年段階で90%だったものを95%にまで向上させる。

成形技術による軽量化(筆者撮影)
成形技術による軽量化(筆者撮影)

発泡技術だけでなく成形技術による軽量化に取り組んだことでプラスチックの使用量の削減にも徐々に寄与している。

現場の負荷の軽減

「強嵌合」の仕組み説明画(筆者撮影)
「強嵌合」の仕組み説明画(筆者撮影)

これまでシーピー化成といえば、現場において良い包材といった印象が強い。なかでも印象的だったのが、強篏合。篏合部が深く、蓋が本体に『カチッ!』と嵌まる従来にない嵌合性を実現し、蓋をした後のテープを張る手間が除かれたのだ。

実際、パートさんから喜ばれ、大いに作業時間の短縮が図られた。

最近では機能性、そして社会貢献の二本柱で商品を作り上げているのが特徴である。

株式会社折兼

食品包装専門商社の株式会社折兼では、たためる容器を展示していた。紙だとプラスチックを60%削減できるが、バガス(サトウキビの残渣)を使用することで81%、プラスチックが削減できる。

材質はファルカタで、木より成長早く、成熟してCO₂吸収量が鈍化したファルカタを使用し、新たな植林を繰り返すことでCO₂削減効果が見込める。

そしてまた折り畳み式の容器なので、作業場やバックルームにおいて、かさばりにくいメリットもある

折兼の「ファルカタ」折りたためることで店舗内のバックルームも収納しやすい(筆者撮影)
折兼の「ファルカタ」折りたためることで店舗内のバックルームも収納しやすい(筆者撮影)

中央化学株式会社

中央化学株式会社でも脱プラに向けて、いろいろな提案がなされていた。

そこで中央化学株式会社加耒敦宣氏にお聞きした。

今回の展示における訴求ポイントは、『地球環境と食の安全のために~

エッセンシャルユースとしての、容器の機能と役割~』とのこと。

加耒氏「容器メーカーとして、容器の素材で追及するCO2削減やリサイクル、素材+包装形態での食品ロスの削減等、日本の豊かな食文化の更なる発展に寄与出来たら幸せだと考えており、容器にはまだやれることがたくさんあると思っております」

SDGs環境配慮型製品が展示されている場所をわかりやすく紹介している(筆者撮影)
SDGs環境配慮型製品が展示されている場所をわかりやすく紹介している(筆者撮影)

中央化学ではPETボトルの再利用により、バージンPETと比較してCO2を約27%削減している。

写真はC-APGである。C-APGは三層構造になっており、再生原料を挟む形でバージン原料があり、再生原料が直接食品に触れないようになっている。

2017年から2020年でC-APG製品の素材が48%から66%に増加しており、さらに製品を増やしていくという。

CーAPGは再生原料を食品に直接、ふれない。そしてつぶせることで使用後、二分の一の圧縮することでかさばらない。(筆者撮影)
CーAPGは再生原料を食品に直接、ふれない。そしてつぶせることで使用後、二分の一の圧縮することでかさばらない。(筆者撮影)

コロナ禍により、外食のテイクアウトは昨年より急増。同時に様々な問題も生じている。

配達途中の開封防止策「開かない」

海外の事例の一つとして、配達途中で弁当を開けてしまう事もある。

今回の機能は開封した痕跡が残る「改ざん機能」により「作る側」「運ぶ側」「消費者」へ安心も届ける事が出来る。

「改ざん機能」により「作る側」「運ぶ側」「消費者」へ安心も届ける事が出来る(筆者撮影)
「改ざん機能」により「作る側」「運ぶ側」「消費者」へ安心も届ける事が出来る(筆者撮影)

株式会社寺岡精工 「ゴミを出さないスーパー」

海外では、量り売りがごく普通に売り場にある。その一方で日本では、まだまだ袋詰め、もしくはプラスチック包装が見受けられている。

そこで株式会社寺岡精工では、京都にある量り売り専門卸「斗々屋」の700アイテムをいかにスムーズに購入してもらうか、技術面で全面的にバックアップした売り場をこのトレードショーで再現したのだ。

なかでも注目したのが写真のこの機械。

まず自分の好きな商品のところに自分が持ってきた容器を置くと、必要量もカスタマイズでき、ナッツの種類をいろいろ選べ、たとえ価格が違ったとしても、一つの容器に入れられる。選んだナッツの情報はすべてプリンター側に保持され、そこからナッツの価格ラベルが発行できる仕組みだ。

つまり余分に買うことは必要はないし、何といっても無駄がない。実際、見せてもらって思った以上にわかりやすく、風袋引きのプロセスがないので手間取らない。

「All-in-One Rack」 顧客が持ってきた容器にそれぞれの価格の違う商品を一つにいれても問題なく全体の価格がわかる。自分の好きな量をいろいろカスタマイズできる(筆者撮影)
「All-in-One Rack」 顧客が持ってきた容器にそれぞれの価格の違う商品を一つにいれても問題なく全体の価格がわかる。自分の好きな量をいろいろカスタマイズできる(筆者撮影)

コロナ禍で地域のお土産が伸び悩んでいる。地元の土産物店、デパートのみだと経営が立ちゆかないのだ。そこでスーパーに向けて、「こだわり食品フェア2022」では都道府県ごとに意欲的に出展しようとしている。BtoBとして、全国スーパーのセントラルキッチンにいれようと考えているところもある。

地方土産店から全国スーパーへ、ヤンマーホールディングスの取り組み 

茨城県のブースに訪れ「ライステクノロジーかわち」ヤンマーホールディングス食事業推進室フードソリューション部ライスジュレグループ部長土屋邦保氏(左)ライステクノロジーかわち株式会社取締工場長野田修平氏 (筆者撮影)
茨城県のブースに訪れ「ライステクノロジーかわち」ヤンマーホールディングス食事業推進室フードソリューション部ライスジュレグループ部長土屋邦保氏(左)ライステクノロジーかわち株式会社取締工場長野田修平氏 (筆者撮影)

茨城県では「ライステクノロジーかわち」が「ライスジュレ」を使ったフィナンシェを展示していた。

フィナンシェはしっとりとした食感でライスジュレはヤンマーホールディングスのオリジナル商品。ライスジュレは将来、BtoBで販路拡大することが期待できる商品でもある。

お菓子だけでなく、原料として汎用性が高い(ヤンマーホールディングス写真提供)
お菓子だけでなく、原料として汎用性が高い(ヤンマーホールディングス写真提供)

外食のテイクアウトから急速に広がる冷凍食品

急速冷凍機「ブラストチラー」を厨房内に入れる店舗も増えている。店舗で一括冷凍し、テイクアウトがスムーズにいくようにしようとする試みだ。

最近、よく見かける無人の冷凍自販機も見受けられた。

無人店舗の冷凍自販機(筆者撮影)
無人店舗の冷凍自販機(筆者撮影)

外食ではコロナ以前より冷凍を手掛けていた「大阪王将」。

これが功を奏し、売り上げも順調である。

大阪王将の冷凍食品(筆者撮影)
大阪王将の冷凍食品(筆者撮影)

今回のスーパーマーケットトレードショーを見て、食が大きく変化していることがひしひしと感じられた。毎年、可能な限り見てきたが、これまでとは異なった光景が見受けられたからだ。展示された商品は、環境を考慮しつつ、同時に現場における問題も解決し、提案にとどまらず商品化している。環境に対し、真摯に向き合うことはおのずとコストの問題も発生するだろう。しかしトレードショーを通し、各社がそれらの問題をクリアしつつ、急速に商品化に向けて実現しているからだ。そしてこの数年の食の動きが手に取るようにわかるトレードショーであった。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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