「ロピア」旋風が吹き荒れる関西

2020年9月、関西に忽然と現れ、破竹の勢いで5店舗出店を果たしたロピア

ロピアと言えば、一般に「EDLP」(Every Day,Low Price)という認識が強く、神奈川県を中心に展開するスーパーとして知られている。売り上げは2020年度グループ全体で2068億円(2021年2期)で61店舗展開している(ロピアホームページ参照)。

「ロピア」年115%以上の成長が11年にわたり続く

新興スーパー「ロピア」は、2009年に出店した綾瀬店で売り上げ40億という数字をはじき出し、一気に注目されるスーパーとして踊り出たのだ。その後も快進撃が続き、業界内でその名を知らしめた。

出店スピードは年間約6店舗である。

現金支払いで、食品のみを扱っており、トイレットペーパーも一切おかないという徹底して食品に絞込んだスーパーとしても知られている。もちろんチラシも折り込みなしである。そのように考えると現金支払い、チラシなしという点ではコスモス薬品に類似している点が多いのかもしれない。

ロピアのモットーは

「同じ商品ならより安く」「同じ価格ならより良いものを」

ロピアが関東から関西への出店でネックとなるのが物流と言われてきた。既存の強豪スーパーが物流会社に声をかけて阻ませるであろうと予想していたからだ。

しかし、物流は福岡のヤマエ久野に依頼したことでクリアし、出店するまでに関西における人事も綿密な計画がなされたようだ。結果、ロピアという新興スーパーの出店は、関西の主要スーパーにとって大きな衝撃となったのだ。

まずロピアの出店方法は、従来のスーパーと異なる。

一般的なスーパーは出店に際し、不動産を購入することから始まる。そのため、初期投資が約5億必要と言われている。しかし、ロピアはホームセンター島忠などの誘致であるため、初期投資は限りなく少なく済む。具体的な店名は控えるが、関東のとある店舗は、ほぼただ同然の出店とも言われている。

逆に言えば、それほどの集客力があると見越しての誘致とも言える。

ロピアは上場していないこと、そしてあまりに売上を明らかにしない企業であるため、はっきりした数字はわからない。しかし食品商品の売買のみから得られる利益力、つまりMD力の高さから出店を可能にしていることは誘致からうかがえる。そして、よく比較されるEDLPのオーケーストアのMD力は6.4%であるので、それに近い数字なのかもしれない。

強豪スーパーの至近距離に出店

さて、大きなインパクトとなったロピアの関西エリア出店(2020年9月段階)は、既に5店舗を構え、いずれも強豪スーパーが至近距離にある。万代・平和堂・関西スーパー・ライフ・コストコといったところだ。

これらのスーパーはロピアの出店をどうとらえているのか。

例えば、ロピア関西出店1号店の寝屋川店は、大阪府における人口が10位、人口密度では第6位と分厚い人口が集まっている寝屋川市にある。近隣にある平和堂は、全店中10位以内の売り上げを誇っているが、早めの改装を手掛け、ロピアへ迎え撃つための対応をした。

平和堂の商品は、出来上がりを見てもロピアとは方針が違うことがわかる。

価格は、従来通りで弁当価格は498円の設定で一般価格となっている。

平和堂ハンバーグ弁当498円(筆者撮影)
平和堂ハンバーグ弁当498円(筆者撮影)

これは弁当は平和堂の「ペストーネ」というセントラルキッチンで製造されたハンバーグ弁当。ハンバーグにはチーズが入っており、業界内では知られている菓子製造の餡を入れる際に使う機械をハンバーグに利用し、チーズを入れている。他のスーパーとの大きな違いは、そのバランスが秀逸であること。ソースもよく家庭で見受けられる単純な調味料を合わせて出来るものではない。照り、つやがあり、この弁当を498円で家庭で作れるかと考えると難しい。

今、内食移行と言われ、多くの人々は、スーパーの惣菜は「家庭の延長線上」であり、誰もが作れると錯覚を起こしているだろう。しかし、既にスーパーの惣菜商品は、工場のラインを見ると一目瞭然で、一つの商品に適した原材料、その産地までたどり、家庭では到底できないことまで深堀りしている。

話はそれるが、昨年、男の方からだったか「『ポテトサラダ』は家庭で作れるのになぜ惣菜を買うのか」と議論があった。工場のラインを知っていれば、回答は明瞭であり、家庭では工場の工程に則って作ることは到底、無理なのである。少しだけ、ふれるが、ポテトサラダ用のジャガイモを指定し、マヨネーズもポテトサラダ専用のものを使用し、皮と身の境の最も栄養分が高い部分を保持するために蒸気スプレーで皮を取っているスーパーもある。つまりスーパー惣菜は、惣菜のプロが日々、開発を手掛けており、それは家庭の延長線上のようでいてそうではない。

さて話を戻すと、平和堂の商品は、店舗内で製造したほうが美味しいもの、工場で製造したほうが良いもののすみわけがなされ、しかも工場製造は実に緻密に作り上げている。

ロピアは圧倒的な価格戦略で勝負

一方、ロピアの商品設定はまったく方針が違う。

圧倒的な価格戦略なのである。販売供給元に利恵産業もあるが、出来うる限り商品アイテムを絞込み、一つの商品を大量に店舗内で製造している。例えば、天ぷらは一般のスーパーでは売り上げ上位にランクインする商品であるが、ロピアではごく一部の店舗で見かけたことがある以外は販売されていない。価格については、弁当価格の主流は380円となっており、一般のスーパーの弁当価格の二本柱、つまり398円、そして498円のうちの値段が低い398円(税抜き)よりさらに微妙なところで設定し、かいくぐる形で勝負をかけている。

それ以外にも、スーパー他社が作らないと思えるものを1パック大きな容量で大量販売するのだ。たとえば「もつ煮」は500gで480円と1g1円以下の価格で訴求している。これも家庭ではできない価格であり、これだけの量を煮込むとなれば時間も相当必要になってくる。しかも本来、ロピアの肉の仕入れは定評があり、惣菜はいずれもロピアならではのボリューム訴求をしている。これはコストコの大容量の内容と類似しているようでそうではない。

コストコとの差別化 大容量の違い

以前にも取り上げたコストコ。ロピア尼崎店の至近距離にある。

外資スーパー唯一の生き残ったコストコ、貫いた独自路線と生存戦略とは?

1パックごと大容量でフライをのぞき、店舗内で調理していることで知られている。

ロピア同様、商品アイテムを絞込み、圧倒的なボリュームで大量製造する点では非常に類似している。

しかし外資であるため、商品構成はほぼ洋惣菜が主流となっている。

写真のものは中華であるが、たれとプリフライを別にし、パックされている。

これ以外に西京焼きのキットも販売されており、ロピアを意識しているのかもしれない。

コストコ「エビのチリソース炒めキット 1998円(税込み)筆者撮影
コストコ「エビのチリソース炒めキット 1998円(税込み)筆者撮影

ロピア「もつ煮」500gの容量で480円。1g1円以下(筆者撮影)
ロピア「もつ煮」500gの容量で480円。1g1円以下(筆者撮影)

これまで日本におけるEDLPのスーパーのイメージはドイツのアルデイのような売り場が多く見受けられ、無味乾燥といった印象が強い。

ALDI(筆者撮影)
ALDI(筆者撮影)

しかし、ロピアは店ごとに売り場作りを任せ、店内は宣伝文句などを墨文字で訴求する吊り下げ、POPや壁面の装飾などで、アミューズメント性も高く、ねぶた祭りの山車を思わせ、売り場に賑わいがある。売り場に強いエネルギーがあるのだ。

さながら「スチューレオナルド」の日本版のようだ。

ニューヨーク郊外 スチューレオナルド(筆者撮影)
ニューヨーク郊外 スチューレオナルド(筆者撮影)

初めてロピアを見た衝撃は大きく、しばらくは店ごとの売り場作りに多くの顧客は感嘆するだろう。

今後は、このような一瞬のインパクトを維持しつつ、商品の見直し、磨きこみが必要になってくるのではないだろうか。顧客というものは、最初は小躍りするものの、売り場に「飽きる」のだ。そのことを踏まえ、最終的に、緻密な商品の磨きこみが必要となってくると思う。

現状、ロピアの出店後、他の関西のスーパーの商品は、日に日にブラッシュアップし、売り上げもいったん下がったが戻ってきていると言われている。

大きな流れとしては、過去20年間の平均年収が上がっていない。むしろ2007年の平均年収437万よりコロナ禍で昨年2020年の平均年収は436万である。

ちなみにリーマンショックが起こった2008年の平均年収は430万。

リーマンショックは秋以降であったため、翌年の平均年収は406万まで下がったのだ。

年代別による日本の平均年収推移(筆者作成)
年代別による日本の平均年収推移(筆者作成)

過去の平均年収の推移をみると、昨年、2020年12月は国の融資が切れ、倒産件数が増えている。ここからが小売りにとって正念場となる。

今後、スーパー全体の流れは、EDLPの方向に行く。これは当初、価格の二極化という見解もあった。しかしより長期的に見ると、惣菜食品の構成を変える、容量を変えるなどの工夫が必要となってくる。今、どのスーパーも客数が伸び悩んでいる中、それをカバーする為にやみくもに客単価をアップすることは、平均年収から見ても難しい。商品構成の変化させることで、自然に単価アップ、もしくはそれに関連した商品を売り場に陳列させていくかが肝要となってくる。

いずれにせよ、新興スーパーの出現により、既存のスーパーの商品の新陳代謝は活発化し、顧客にとっても良い方向に進むのではないだろうか。競争こそが商品のグレードアップにつながることを痛感した。