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意外と知らないマヨネーズの「ふつう」とは デザートにも使う店のこだわり

池田恵里フードジャーナリスト
家庭用マヨネーズがコロナ禍により微増。内食化から(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

家庭用マヨネーズ、コロナ禍で順調

日本でもすっかり定着したマヨネーズ。

コロナ禍でのマヨネーズの売り上げは業務用で減少したものの、家庭用は内食の需要もあり、好調となった。

全国マヨネーズ・ドレッシング類協会によると、2020年のマヨネーズの生産量は21万7379トンで、対前年比3.5%減となった。これは新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、外出自粛や時短営業などの影響で飲食店やホテルなどの業務用の需要が大きく減少したことが要因だ。

 業務用が落ち込んだ一方で、家庭用は家庭での調理機会の増加で好調に推移。KSP-POSデータによると、マヨネーズの期間通算(2020年3月~21年2月)の1000人あたりの客数に対して売れる量を表す金額、つまり金額PIは4420円で対前年同期比7.5%増。緊急事態宣言が発出された20年4月は4822円で同17.5%増、解除後も堅調に推移している。

(全国マヨネーズ・ドレッシング類協会参照)

市販のマヨネーズは賞味期間が約1年

市販のマヨネーズを見渡すと、おおよそ1年の賞味期間が多い。

幼い頃、母が作ってくれたマヨネーズは、市販のものとは全く違っていた。

油がほどよくコクがあり、塩角、酢角もなく、それがみずみずしい野菜と非常に合った。

しかしマヨネーズを忙しいさなか、一から作るのは難しい。

コロナ禍で料理をする人が多くなり、こだわりも重視

そして今、コロナ禍で内食移行と言われている。つまり「家庭の料理」が増えたのだ。

コロナ禍で行われたいくつかの調査を見てみると、フーディストが実施した家庭の料理の変化に関するアンケート(回答者1035名)では、調理すると回答した人が41%増えた。また、食費が1万円増えたと回答した人が26%も見受けられた。そして設備メーカーのノーリツが実施した「外出自粛期間中の料理実態」に関する調査では、9割近くの主婦の調理時間が30分から1時間増加したと言われている(小学生から高校生の子供を持つ主婦723名(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県在住の20代から50 代女性)が対象)。

では実際、どのような料理を作るようになったか。

1位 時短で作れる料理(全体の51%)

2位 パン、スイーツ(全体の46%)

3位 いつもより手間のかかる料理(全体の40%)

時短、簡単である一方で相反する「こだわり」も求めている。

そこで今回、マヨネーズの新たなる商品、その名も『ふつうのマヨネーズ』を紹介したい。

『ふつうのマヨネーズ』、一般のものとは違った視点で

代々木上原にある「sio」オーナーシェフ鳥羽周作さん(以下鳥羽シェフ)が監修を手掛けたマヨネーズ、それが『ふつうのマヨネーズ』である。7月1日に発売された。

7月7日、14日に『ふつうのマヨネーズのふつうじゃないコース』を提供する2日間限定の店舗をオープンした。

鳥羽シェフの『ふつうのマヨネーズのふつうじゃないコース』を頂きながら、お話を伺うことに。

鳥羽シェフにお話を伺った。元サッカーの選手で32歳から料理界に、今「SIO」のオーナーシェフである。(筆者撮影)
鳥羽シェフにお話を伺った。元サッカーの選手で32歳から料理界に、今「SIO」のオーナーシェフである。(筆者撮影)

『ふつうのマヨネーズ』

鳥羽「『ふつうのマヨネーズ』によってお客様の食に対する選択肢を少し広げられないか。ものさしの幅を少し広げられたらと思いました。このマヨネーズは、メインを台無しにしない、デザートでも応用できます」

鳥羽シェフ「透明感があって、毎日食べたいと思える。これが僕らが考える『ふつうのマヨネーズ』という提案です」

『ふつうのマヨネーズ』

鳥羽シェフ「『ふつうのマヨネーズ』は酸味、塩味がやさしくなるようにつくりました。「sio」という店名の通り、僕らの料理は塩加減を大切にしていています。素材の味以上に塩味がしないことが大切です。素材をいかしつつ、サポート役となるマヨネーズを作りました。あくまでベースとなる素材の味を損なわないように仕上げています。『ふつうのマヨネーズ』の賞味期間は120日間で一般的なマヨネーズに比べて短いですが、美味しくてすぐになくなると思います(笑)」

『ふつうのマヨネーズ』のレシピを発表された。家庭でもこのマヨネーズをベースにいろいろと食べ方を楽しんでほしいという想いもあるそうだ。

『ふつうのマヨネーズのふつうじゃないコース』

コース(筆者の撮影)
コース(筆者の撮影)

まずマヨネーズのみ頂く。

まろやかな味付けで少し甘味のあるマヨネーズ。

母が作ってくれた味に近い。

お野菜とマヨネーズ(筆者撮影)
お野菜とマヨネーズ(筆者撮影)

それぞれの野菜の素材をいかし、マヨネーズが寄り添う味に仕上がっている。

野菜って美味しいとしみじみ思う。それを引き立てているのがマヨネーズ。

エビとマヨネーズ(筆者撮影)
エビとマヨネーズ(筆者撮影)

カリッと加熱した海老と香草がマヨネーズだけで十二分に味わえる。マヨネーズもさることながら、海老の火加減が絶妙だ。

生姜焼きとマヨネーズ(筆者撮影)
生姜焼きとマヨネーズ(筆者撮影)

これほど風味のある生姜焼きは今まで食べたことがない。豚は燻製の香りがし、マヨネーズとの絶妙なコンビネーション。ごはんは一粒一粒たっている。

最後の締めは、アイスクリーム。

アイスクリームの下にふつうのマヨネーズ(筆者撮影)
アイスクリームの下にふつうのマヨネーズ(筆者撮影)

こんなにマヨネーズとアイスクリームが合うとはびっくり。

「なんて美味しいのだろう」とつぶやく。

さて『ふつうのマヨネーズ』は1個120gで3個入り1箱で3800円(税込み)。

これまでにない価格設定。

1個120gが3個入っている(写真提供sio)
1個120gが3個入っている(写真提供sio)

プレミアムなために、容器、ロゴなども今までにないすっきりとしたデザイン。

贈答にも使えるマヨネーズであり、他のデザインとでは一線を画す。

BtoC分野のEC(電子商取引)では、パッケージデザインに注力している。パッケージは最初に目がつくような「チラシ的役割」として、印象が残るような「ブランド的役割」でもある。食品カテゴリーでは、シズル感が大切でいかに美味しいかということがポイントなる。しかしマヨネーズは、あまりシズル感を打ち出さないカテゴリーである。ラベルの面積も限られているため、多くの内容を表すと騒がしくなる。そして「おしゃれ」「かわいい」「やさしい」「懐かしい」と言った情緒的なデザインが主流になりつつあるとも言われている。

では『ふつうのマヨネーズ』はどうか。

卓上に置くと文字、色目から料理を損なわない。

そして、より食卓になじむデザインとなっている。

これからの外食について

マヨネーズもさることながら、鳥羽シェフの話のなかで今後のコロナ禍での外食の在り方について興味深い話を聞いた。

「日常の場面によって使うマヨネーズの選択肢が増えたらいいなと思っています。(お寿司に例えると)回転寿司とカウンターのみのお寿司の両方を知っているからこそ両方を楽しめるのと同じように、調味料に関しても、いろいろな味を知ってもらうことで生活者の方の食に対するリテラシーを上げられるかもしれないと思っています。世の中の食リテラシーを上げるためには、経営者、従業員、そして生活者の方のリテラシーの3方、すべてを上げる必要があります。このものさしの基準を一気にあげるのは難しいすが、『ふつうのマヨネーズ』を知ってもらうことで少しでもお互いの距離感が近づけられたら嬉しいです」

「美味しさ」の定義は難しい。産地にこだわることも大切ではあるが、違ったものさしを考え、それを商品化することも大切なのだ。

とあるスーパーでは産地にこだわらず、そのスーパー独自の基準を作り、ジャガイモを選択した。結果、売り上げをアップし、その上、リピートし続けている。

素晴らしいことだと思う。

今回、鳥羽シェフのマヨネーズを頂き、改めて基準値をいろいろな視野で考えることは大切ではないかと思った。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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