今年の夏、何故、コンビニうどんが注目されるのか?スーパーでは?弁当専門店では?

うどんは商品開発強化、というよりすでに各社、しのぎを削っている。(写真:アフロ)

中華麺、蕎麦から、今、うどん元年

コンビニ、スーパーの売り場を見ると、このところ「うどん」が大量に並んでおり、以前とは明らかに売り場が変化している。

今年、セブンーイレブンはうどんを大幅刷新したことを発表。「うどん元年」と銘打つ。

これまでもコンビニの商品力には定評があり、なかでも冷やし中華、蕎麦は他の業態より抜きんでていた。

冷やし中華は今も売り上げではNo.1に君臨し、若者に絶大なる支持を受けている。

蕎麦は30年以上前から販売され、2015年、蕎麦ブームが起こるずいぶん前から開発を着手し商品力は高い。

2004年とある雑誌社で40食以上食べた時の写真。

2004年に食べた一部
2004年に食べた一部

その時のグラム数など記録が残っており、当時のコンビニの麺と今の麺とを比較すると、今、ずいぶんグレードアップしていることがわかった。

例えば蕎麦の麺の断面。2004年、当時、コンビニの麺の断面をみると、なかには麺が丸い形状になっているものもあった。

本来、蕎麦は作る過程として「一鉢二延し三包丁」と言われている。

つまり

1 本鉢で蕎麦を水を入れ「回し」、水分を内部に押し込み、含ませるようする。これを「くくり」という。

2 生地を延す。

3 最後に包丁で切る。

3の包丁で切る前に蕎麦生地をたたみ、「切りべら二十三本」という並蕎麦の定法がある。つまり折りたたんだ蕎麦を23本になるように切っていくのが基本なのだ。畳んだ蕎麦生地の幅は1寸(3.03センチ幅)でそれから蕎麦包丁で23本切るという意味。

すると1本の切り幅は約1・3ミリとなり、断面はおのずと長方形になる。

これが蕎麦のポイントなのである。

ということで、次第に各社、麺の断面が長方形になるように忠実に再現しているのを見るにつれ、コンビニの蕎麦の進化の素晴らしさに唸ったものだ。

その後も定点観測しているが、各社、独自に作り上げ商品は他の業態より進んでいた。

鮮明に記憶に残っているのが2008年に食べた、セブンーイレブンのかき揚げ蕎麦450円。

口にいれると、かき揚げがサクッサクッ!と顎から耳の鼓膜にまでその音が伝わるようで、胡麻油の香りもほのかに漂い、その商品力の高さは目を見張るものがあった。

2008年 セブンーイレブン「桜海老のサクサクかき揚げ蕎麦450円
2008年 セブンーイレブン「桜海老のサクサクかき揚げ蕎麦450円

蕎麦から今度はうどんに、シニア女性がターゲット

なぜ今、ここにきて「うどん」なのであろうか?

コンビニの蕎麦は他の業態と比較しても数段、商品力は高く、もう天井までいってしまったというのが率直な感想である。

そこで次なる麺がうどんなのかもしれない。

もちろん冒頭で述べたコンビニが望んでいる女性シニアに人気があることも大きい。

麺は日本人の98%好むとされ、家庭で食べる麺では、蕎麦の倍の比率でうどんを食するのである。そして女性では年齢がいくにしたがって増えている(マイボイスコム)。これは男性顧客が主流であったコンビニにとって、今のサラリーマンのお財布事情を考えると、女性のシニア層に人気のうどんは魅力的なのだ。

日常の食事としてイメージ、その歴史は江戸時代から・・・

この他に、商品による価格へのイメージも大切である。

うどんというのは本来、庶民が食するものとして日本人にすっかり根付いている。

あるスーパーの経営者

「景気が回復したと言われていますが、いやいやまだまだお客様の財布の紐がかたいのです。売り場を見ればわかります。そんななか、庶民的なうどんを支持されるのは自然の流れなんです」

たしかにうどん=大衆食というイメージはある。

うどんは蕎麦より歴史は古く、安土桃山時代にはすでにうどんの絵が屏風に描かれており、関東といえば蕎麦文化が主流とされているが、徳川幕府開府の際、江戸の町作りのために沢山の人手を要し、職人を動員した。その際、安くて手軽に食べられるうどんが施された。街道沿いのお茶屋で食べる麺は、素麺、そしてうどんだったという。

歴史的にも古くからうどはが庶民の味であり、DNAにまで日本人にすっかり浸透しているのだ。

現状 価格について

さてうどん価格はというと、コンビニ3社はまちまちである。

理由として、うどんの上にはトッピングを載せてあるため、具材内容に違いがあり、それに伴い価格が違うのだ。そしてコンビニでは「ざるうどん」では販売されていない。「おろし」「たぬき」といった形に仕上げているため、トッピングの部分を入れ、あくまで400円前後となっている。

ということで庶民的というイメージがありつつも、実際、蕎麦との価格差はあまりない。

では他の業態の動きはどうであろう?

スーパー、ようやく本腰に

スーパーでは長らく、低価格化のみで進めていた。

「麺は売れないんですわ、そんなもんですわ」とバイヤーさん。

安すぎるから売れないのでは?と思ったが、喧嘩を売るようでぐっと口をつぐんだものだ。

しかしここにきて、各社、麺の売り場に変化の兆しが見受けられる。

2011年スーパーでは、まだ麺の陳列場所をみると、売り場は100円台後半(本体価格)という安価な商品が多く陳列されていた。

2014年頃から変化の兆しが見受けられ、スーパーの麺の定番価格はうどん298円(本体価格)で関東、関西いずれも散見し以前より100円ほどアップ。とはいえ、コンビニより約100円低価格。

2018年、今年は、アイテム数もじわじわ増え、各社、価格もコンビニ価格にほぼ同一のところまで出てきている。つまり低価格路線からの脱皮を図り、商品開発に力が入れはじめている企業もあるのだ。

とはいえ、コンビニの差を埋めるのはとても難しい。

そのためもあって、コンビニでは出来ない「寿司とうどん」といったドッキング弁当が関西・関東いずれにも見受けられる。

鮮魚部門の売り上げは、どのスーパーでも芳しくないためもあって、人気のうどんと寿司をあわせることで部門別の利益アップに懸命なのだ。

これはコンビニでは寿司の販売しているところが少ないことから差別化にもなる。

この他にこれは数年前から、かつ丼とうどんのセット弁当もあらゆるスーパーで見受けられる。

すっかり諦めた弁当専門店

さて弁当専門店は・・・というと、麺カテゴリーの絞り込み、もしくはメニューに載っていないところもあった。

これまで弁当専門店では、夏になれば、麺は定番商品として並んでいた。

当然、毎年、味の微調整をしリニューアルをかけていたものだ。

それが今回、大手弁当店で販売していないところが見受けられた。勿論、人手不足からオペレーションを考えて並べていないのであろう。

店舗内調理での「出来立て」が美味しさにつながると思い込んでいる人も多い。しかし、このほど人手不足だと店舗内調理はむしろ「ばらつく」ことに直結する。

現状、低価格化で中食参入ドラッグストア

ドラッグストアはどうだろう?

最近のドラッグストアは売り上げの50%を食品で占めているところもあり、コンビニのみならずスーパーにとって脅威の存在である。とはいえ、今のところ独自の商品ではなく、あくまでロープライスで突っ走っている。

ドラッグストアが食品分野に参入、中食においても大きな変革期に突入か?

今後はさらなる商品内容を充実させることが重要だということはドラッグストアも理解しているが、うどんはなかなか奥が深く顧客に納得してもらえるには相当の年月をかけて、多方面から万全の状態にしないと売り上げに結びつかない。

ということで、中食において、麺はコンビニの一人勝ちといっても過言ではない。そこに果敢に挑んでいるのがスーパーという形になっている。

商品開発のすごみ

しかしコンビニとの差を縮めることは難しい。長年、培ってきた商品力はすでに大きく開けられてしまっており、うどんは非常に奥が深く難しいからだ。

コシ、モチモチ感がうどん人気

まず女性が好きなモチモチ感を出すには、でんぷん質のアミロースよりもアミノペクチンが多いほうがモチモチする。そのような小麦粉を選ぶことも大切になってくる。そして夏と冬だとうどんを作る際、水分量ももちろんグルテンを引き締めるための塩の量も違ってくる。

これは口伝で「土三寒六常五杯」で伝えられている。

つまりうどんは庶民として気軽に食されているが、温度、加水量、熟成時間といった変動要素が影響し、その上、塩がそれらの要素に対して、微妙にコントロール機能を果たすとされる。

そしてうどんの製法は、室町時代から脈々と同じ方法で現在に至っている。

最近のうどん用の小麦粉の歩留まりは50%となっており、多くの場合、風味のある部分まで削られてしまっているのだ。昔は70%となっており、昔の味は風味があっておいしかったのである。

モチモチ感もさることながらうどんの美味しさの一つ、風味をいかに残すかも肝要なのだ。

コシについては、ゆで上げ直前は中心部分の水分が約40から50%、外側部分は約80%となっており、それがコシを生む。

しかし茹で上がった後、すぐに劣化が始まるのだ。おおよそ伸びきってしまう時間が15分から20分。

この他、小麦粉の甘みをいかに出すこと、生地の熟成もおいしもさに大きく影響する。

つまり高いハードルがいくつもあるのだ。

蕎麦は技術、うどんは理論と言われる所以でもある。

うどんの商品開発は付け焼刃では、価格、おいしさ、ぶれない提供の実現はきわめて難しい。これほどまでに中食参入が多くなり、急激に中食における環境が変化していくなか、むしろ地道で長期的な商品開発力が要となるのではないだろうか。

参考文献 そば・うどん百味百選(社)日本製麺団体連合会 うどん・そば(柴田書店) 日本料理とは何か 奥村彪生 (農文協)