アメリカのチップ制度廃止。背景に見える最低賃金アップ。日本の外食・中食賃金の今後 

アメリカではこれまでチップ文化であった。(写真:アフロ)

チップ廃止の動き

アメリカの2016年の食トレンドとして、チップの廃止がNO2にランクインされ、昨年同様、注目を浴びるであろう。

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これまでチップ制の廃止は、主に高級な個人店であった。まずニューヨーク・マンハッタンの寿司店「Sushi Yasuda(スシ ヤスダ)」でチップのないサービスをアメリカで行なったことで注目され、その後、いくつかのレストランではチップの廃止を実施されている。しかし今回、ユニオンスクエア・ホスピタリテイ・グループは13店舗手掛け、シェイク・シャックの創業者でもあるマイヤー氏がチップ廃止を実施したことは業界の影響力も大きく、続いて大手チェーンでナスダック上場しているジョーズ・クラブ・シャックまでもチップ廃止を実験的に進めていることで、ますます議論が活発になっている。

ユニオンスクエア・ホスピタリテイ・グループ

ニューヨークで人気レストランを展開するダニー・マイヤー氏が「ユニオン・スクエア・カフェ」や「グラマシー・タバーン」、「ザ・モダーン」など13のレストランをもつユニオン・スクエア・ホスピタリテイ・グループはチップをメニューの価格に載せる形で2015年11月末から実施されている。

出典:THE WALL STREET JOURNAL

ジョーズ・クラブ・シャック

チップ廃止の動き:ニューヨークを中心に展開する高級レストラングループUnion Square Hospitality Groupはチップを価格に含める計画を発表した。全米でレストランのチェーン展開しているジョーズ・クラブ・シャックは試験的に“チップお断り”のポリシーを開始。

出典:美容経済新聞

チップ廃止の理由

マイヤー氏の廃止理由として、メニューにチップ分を上乗せすることで、サーバーとキッチンスタッフのチームワークを強め、これが「ホスピタリティ」になるという考えからである。これまでサーバーにはチップ制があっても、キッチンスタッフにはなく、しかも賃金が低いことから、サーバーとの軋轢が生じやすく、訴訟にまで至ったケースもあった。

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これまでのチップ制度

まずアメリカのチップ制について、ご存じか、と思いますが・・・

アメリカではチップを受け取った本人に全て渡ることはなく、多くは店側でチップをまとめ、その一部をサーバー全体に分配され、人件費と賄っている。

これまでアメリカでは最低賃金が定められていて、その額7ドル25セント。

チップ制度の場合、2ドル13セントがベースとなり、最低賃金からベース分を除くと、差額分5ドル12セントをチップで稼がなければならない。

顧客側からみてチップはサービスとしての心付け?

顧客サイドから見ても、チップ制は問題があると指摘される。顧客にとって15%にするか、20%にするかを決める際、果たしてサービス対価として払っているかどうか。ややもすると、周りの状況から、面倒になって20%を払ってしまう顧客も多い。

なかには、ユーモアもまじえながら、サーバー自ら「20%おすすめ」と言い、20%で計算されたトータル価格にペンでなぞる場面もあった。因みに、言われるがまま私は20%にいたしました。

ということで、チップ制はこれまでも幾度か問題点が指摘されていた。

しかし大手企業をもチップ制を検討段階に入ったのは、ほかに理由がある。

チップ制廃止の背景には最低賃金のアップ

その背景に2014年、最低賃金の引き上げ条例の可決が大きいとされる。

これまで、最低賃金が7ドル25セントから、州によって段階的ではあるが、15ドル(120円で換算すると1800円)となる。これまでの倍となり、勿論、キッチンの従業員も賃金アップとなる。まずサーバーについては、賃金ベースの約2倍 15ドルを補うために差額分2ドル13セントから一気に10ドル24セントアップし、チップで賄えるかと言う問題がでてくる。そしてあくまで顧客のジャッジに委ねるのは極めてリスキーなのだ。

最低賃金で雇われているケースが多いキッチンスタッフは州によって違いはあるにせよ、今後、約2倍の支払いとなるため、当然のことながら、メニュー価格も必然と上がる。

従来のチップ制、そしてメニュ価格がアップすると、顧客の支払いは当然のことながらスライド式にアップ。

そこでチップを廃止し、メニュー単価を上げることにより、顧客にとってもわかりやすく、店側にとっても良いのだ。

因みにユニオンスクエア・ホスピタリテイグループが手掛けるザ・モダーン、ジョーズ・クラブ・シャックの平均単価7000円(120円計算で約60ドル弱)。決して低価格設定でないところからメニュー価格をアップすることで、人件費の問題はクリアできると言われる。

とはいえ、これまでキッチンを最低賃金にすることで、ぎりぎりやってきた外食・中食企業は、今後、ますます厳しくなるであろう。

日本も賃金アップの波がアメリカから

さてそこで日本に目を向けてみると、最低賃金は、全国、違いがあるにせよ、じわじわとアップしている。

地域別最低賃金の全国一覧

アメリカで既に起こっている大幅低賃金アップは日本にも起こると言われている。

確かに今後、単純に考えても日本の人手不足から賃金が下がることはない。

当然、日本でもメニュー単価が低く、極めて低賃金で従業員、パート、アルバイトで成り立っていた業態は従来の経営手法だと廃れ、食は大きく二極化進むであろう。

人手不足 既に死活問題  今後について 

そのなかの一つの流れとして申し上げると、予測できるのが、イートインなどのウエイター、ウエイトレスがいらない業態が活発化するのではないか。

日本のスーパーを視察すると、ようやくその流れになって来ており、既にサミット、阪急オアシス、いなげや、などイートインを強化している店舗は増加している。CGCジャパンでは8割はイート・インを強化したいという結果が出ている。

従業員の賃金がアップすることを踏まえ、人口減から顧客は朝・昼・晩とイートインで利用してもらい、より外食の要素を入れつつ、人件費を考慮する。これによりスーパーの利用頻度を増やし、売り上げを上げるのだ。

コンビニでも手掛けられ、ますます熾烈な競争となるだろう。

ということで、これまでとは違った食の提案が既に起こっており、これに軽減税率が加われば、より拍車がかかると思う。

軽減税率の是非は別にして・・・