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「養命酒」の循環型社会にむけての取り組み

池田恵里フードジャーナリスト
駒ヶ根工場 ここで養命酒は製造 敷地は東京ドーム20倍

限りある資源を丁寧に使う、養命酒の取組み

日本の廃棄量1800万トン、日本における相対的貧困率16%、6人に1人は該当

予てから、食品メーカーの残渣の取り組み、循環型社会の事業について執筆したかったテーマの一つ。日本では、いまだに食の廃棄量は1800万トン。なかでも賞味期間内のもの、つまり食べられるものまでも捨てられており、その量は500万トンから800万トンと言われている。額に換算すると11兆円となる。資源にも限りがあり、食糧問題は深刻である。世界の飢餓でなくなる人々は一日4万から5万人と言われている。日本はというと、飢餓とはいかないまでも、相対的貧困率(所得の中央値の半分を下回っている人の割合で、つまりその国の所得格差を表している数字)は上昇している。年収250万を中央値として考えると、125万以下の年収の人が16%、つまり6人に1人の割合でこの相対的貧困に属する状況なのである。これについては、資産が含まれていないため、参考としてみる必要がある。とはいえ、ひとり親は世界的に見て、突出、なかでも母子家庭における貧困率は57%、単身者、若者の貧困率上昇も問題となっている。

これを見て、一見、日本は豊かそうであっても、極めて身近に貧困問題が存在し、格差もあるていることがわかる。その一方で食に携わると、ロスの問題は必ずつきもので、悲しいかな、ある程度ロスをも考慮して提案しないと、機会ロスも出るというジレンマはあり、考えさせられたのである。

ようやく日本でもFOODBANKが定着しつつあり、今後、食に対して、真摯に考えている企業について少しでも紹介できればと思っている。

幸運にも今回、養命酒の取組みである製造で使用された生薬残渣、そして循環器型社会をめざし、まさに今年から行おうとされている取組みを駒ケ根にある養命酒の工場で、大森勉工場長からお話を伺った。

養命酒の取組み、生薬残渣を飼料に

生薬残渣の活用は、約5年ほど前から取り掛かり、それ以前は、年間に排出される約400トンの生薬残渣のすべてを焼却していた。しかしそれをいかに利用できるかを模索し、飼料として、豊丘村にある養豚場で約2トン利用している。堆肥原料としては、製薬残渣を直接堆肥に混合し、土壌改良として使用されている。生薬残渣は繊維質であるため、土壌の環境を良くし、微生物にとって最適な土とのこと。

現状は一通であるが、今後は・・・
現状は一通であるが、今後は・・・

そこで今後、より地球にやさしい循環型社会事業に向けて、舵をとりつつある。

更なる展開、2015年から手がけている循環型事業

そのまえに「循環型社会」とは、

環境への負荷を減らすため、自然界から採取する資源をできるだけ少なくし、それを有効に使うことによって、廃棄されるものを最小限に抑える社会。生産や消費を抑え、ごみを減らし、製品の再使用を推進、さらに再生できるものは資源として再生利用するという3R(Reduce、Reuse、Recycle)を推進することで、地球と環境の自然な循環を尊重するやさしい社会を構築するため、00年に成立した循環型社会形成促進基本法をもとに、ゴミ処理量低減や資源生産性の向上など数値目標を提出、国としても積極的に推進している

出典:コトバンク

養命酒においての循環型社会とは、信州十四豚の生産過程で豚舎から出る豚糞と直接生薬残渣をあわせて堆肥化し、それを土に戻し、生薬を育てる。そしてその生薬を養命酒の原料として使用していく。

今年2015年から、工場の近隣の土地を利用し、駒ケ根の気温、天候にあった生薬14種のなかの6種を開始している。

循環型社会のさらなる構築
循環型社会のさらなる構築

残渣は繊維質であるため、土壌を良くし微生物にとって最適な土となる。そしてこれに豚の堆肥が加わることで、土の栄養と言われる、窒素・リン酸・カリで活力のある土となり、強い生薬が生まれ、それが養命酒の原料となる。

生薬残渣400トンをすべて土に戻し、生薬を育てるためには大規模な土地の確保、人の問題などが必要でハードルは高いと言われる。

決して短期スパンでは出来ない事業であり、大変ではあるが、最終、実現すれば大いなる地域貢献にもなる。

今の時代、社会に即した企業の在り方を考えずして、存続は難しい。CSR活動を通し、従業員一人一人の考えがまとまり、それぞれの企業理念が受け継がれると思う。

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さて駒ケ根工場は、観光地としても定着しており、東京ドーム20倍の敷地内は、自然の木々が生えている。きれいな水を守るため、敷地を確保したという。工場内を散策すると、澄んだ空気に包まれ、川のせせらぎも聞け、都会では味わえない気持ちの良さを感じる場所である。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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