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来場所の番付編成はどう変わる? 正代の大関昇進で「新三役確実」の力士は?

飯塚さきスポーツライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

場所を盛り上げてくれた両大関

正代の初優勝に沸いた大相撲秋場所。土俵を盛り上げた力士たちへの労いを、最後に書いていこうと思う。

まずは、最後まで優勝争いの可能性を残し、その地位の責任を全うした大関・貴景勝。筆者は「優勝候補の本命」として名前を挙げさせてもらい、結果としてそうはならなかったのだが、先場所ケガで途中休場したとは思えないほどの相撲を見せてくれたと思っている。もちろん、彼はケガがあっても「大丈夫」と言うし、本来の力が100%出ていたわけではなかったかもしれないが、それでも12勝3敗の成績は立派である。心から「お疲れ様でした」と言いたい。

もう一人の大関・朝乃山は、序盤の痛い3連敗とラストの2連敗があったが、特に後半戦で見せた姿は本当に強かった。左からの豪快な上手投げは、まるで横綱が乗り移っているかのようであり、多くの人を魅了した。来場所からも引き続き期待がかかることはもちろん、また心新たに、そしていままで以上の闘志を燃やして臨んでほしい。

力をつけてきた幕内力士たち

千秋楽で正代に真っ向から食らいついていった翔猿の活躍を筆頭に、今場所は平幕力士の活躍が目立った。

11勝を挙げたのは、「大波三兄弟」の末っ子としても知られる荒汐部屋の若隆景。体重129kgと、決して大きいとはいえない体ながら、連日技の光る相撲で魅せてくれた。これで、先場所の再入幕から2場所連続の二桁勝利だ。

さらに、今場所特に力をつけてきたのは、前頭筆頭の隆の勝。十日目の照ノ富士戦では、絶対に相手の得意の右を取らせない強烈なおっつけを見せ、元大関から堂々の白星を挙げた。勝った取組は、どれも低い姿勢でどっしりとしたいい相撲。若隆景と隆の勝には、ぜひ三賞をあげてほしかったなあというのが心残りではある。

さらに、先場所は初日から13連敗という苦しい場所だった阿武咲は、今場所で一転、まさに彼らしい気迫あふれる相撲で、初日から5連勝。最終的には10勝5敗の好成績で場所を終えた。先場所はなかなか歯車がかみ合わなかっただけで、今場所で見られた阿武咲が本来の姿であると思う。来場所も、このままの調子で上位陣にも果敢にぶつかっていってほしい。

ほかにも、大関経験者の高安と、佐渡ヶ嶽部屋のホープ・琴勝峰が共に10勝、さらに肩のケガで途中2日間休場した霧馬山も、再出場後の3日間をすべて白星で終え、9勝を挙げた。さまざまな力士が、多様な活躍を見せてくれた場所だった。

来場所の番付編成が楽しみ!

来場所の番付予想も興味深い。大関に昇進する正代のほかに、筆頭で10勝を挙げた隆の勝は、初の三役昇進が確実となっている。同じく筆頭で8勝の照ノ富士も、実に3年ぶりとなる三役に返り咲くだろう。もし彼が小結になったら、前回は小結を飛び越えて関脇になっているため、自身では「初の小結」という興味深い事態が起こるが、はたして。

さらに、6枚目で10勝の高安、8枚目で11勝の若隆景、9枚目で10勝の阿武咲、14枚目で11勝の翔猿は、どこまで上がるのか。正代の大関昇進に伴い、またガラッと変わるであろう来場所の番付に思いを馳せながら、今場所の振り返りはこのあたりまでにしておこうと思う。

今場所も筆者の拙文にお付き合いいただきありがとうございました。来場所を楽しみに、また11月にここでお会いしましょう。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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