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またも悲劇の白鵬連敗が持つ「二重の意味」 十三日目の新旧大関対決まったなし

飯塚さきスポーツライター
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

横綱・白鵬が連敗!

連勝が途切れたことで気を引き締めてくるだろうと思われた横綱に、またも悲劇が訪れた。前日に続く連敗だ。大関・朝乃山を破るなど、調子を上げている関脇・御嶽海に、土俵際での逆転負けを喫した。

立ち合いで、右を張って上手を取った白鵬。そのまま一気に寄って出ていくが、土俵際で御嶽海が右に動いて突き落とした。横綱に焦りが見えたわけではないが、どうしても決めたい気持ちが先行したのかもしれない。相撲内容はほぼ白鵬の流れだったにもかかわらず、結果をつかみきることはできなかった。

それだけでなく、倒れたときに俵に足をぶつけたのか、しばらく土俵下でその足を気にする様子を見せた。土俵に上がらないまま、ゆっくりと土俵下の正面を回り、ようやく東側から土俵に上がって一礼し、花道に帰っていった。まさに、二重の意味で“痛い”黒星。最後の3日間の取組にも、大きな懸念が残る。

圧力と瞬発力の御嶽海

御嶽海は、これで横綱・大関両者を破る結果となった。今場所はかなり調子がいいといえるだろう。大きな体がまた少し大きくなったように見え、動きに支障が出ないかと懸念したが、心配には及ばなかったようだ。

今場所は、序盤から7連勝(7日目の不戦勝を含む)。五日目の遠藤戦では、立ち合いから一気の攻めで押し出し。相手に何もさせない、電車道のお手本のようだった。こうした得意の突き押しで圧倒する相撲がある一方で、二日目の隆の勝戦のように、臨機応変にはたきを織り交ぜることもあり、持ち前の瞬発力に磨きをかけてきたようだ。

十日目には、大関・朝乃山に豪快な上手投げで勝利した。取組後のインタビューでは「とにかく勝ち越せてよかった」と心境を吐露するも、最後には「(横綱戦も)楽しみにしていてください」と、自信に満ちた表情で答える姿が印象的だった。

そして、今日迎えたその横綱戦で、まさに有言実行を果たすことになったのだ。インタビューで「目標の二桁勝ちたいと思います」と、またしてもしっかりと明言した御嶽海。二度目の有言実行は、十分に現実味を帯びている。

朝乃山・照ノ富士が直接対決!

十二日目を終え、1敗でトップに立つのは朝乃山と照ノ富士の二人に絞られた。また、勝ち越しとカド番脱出を決めた大関・貴景勝が、この日から休場。これにより、明日(十三日目)朝乃山と照ノ富士の直接対決の割が組まれたのである。ここで勝ったほうが優勝を手にする可能性は大いにあるため、全相撲ファンが注目する一番となるだろう。

新大関のプレッシャーをはねのける朝乃山か、どん底から努力で這い上がってきた照ノ富士か。どちらが勝っても、明日はテレビの前で絶叫必至だ。近隣住民の皆さんには、事前に謝っておいたほうがいいだろう。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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