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無観客場所で十両優勝。虎視眈々と高みを目指す「黄金世代」の琴勝峰はどんな力士?

飯塚さきスポーツライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

22日に幕を閉じた大相撲春場所。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、異例の無観客開催となった本場所で、十両の土俵を制したのは、20歳の新星・琴勝峰だった。優勝が懸かった14日目に黒星を喫したときこそ「意識してしまった」そうだが、それでも千秋楽には見事白星を挙げ、12勝3敗の成績で優勝。自身初の各段優勝となった。

一躍脚光を浴びた琴勝峰。いったいどんな力士なのか? ご両親からのお話も交えて紹介しよう。新型コロナウイルスの影響で暗い影が差す世の中に、少しでも明るい話題を提供できたら幸いである。

隆の勝、琴ノ若らと同郷で共に稽古

琴勝峰、本名・手計富士紀(てばかり・としき)。今でこそ少しシャイな性格だが、母のカツ江さんによると、幼少期は人見知りもなく、明るくて元気な男の子だった。とにかくよく食べてよく寝る子。幼稚園に入ると、クラスで一番背が高く、同年代の子たちと比べると頭一つ飛び出ていたという。

千葉県柏市出身の琴勝峰は、同じく佐渡ヶ嶽部屋で親方の長男に当たる2代目琴ノ若や、千賀ノ浦部屋の隆の勝と同郷。幼稚園の年中から、彼らの所属していた柏市相撲スポーツ少年団に入り、先輩たちの背中を見ながら共に汗を流した。小さい頃から体格に恵まれていたため、小学2年生からは負け知らずだった。

そんな手計少年が伸び悩むのは、周囲との体格差が埋まってくる中学生の頃。3年生のときに都道府県大会で優勝するものの、その後はなかなかいい成績が残せず、「勝つ相撲ではなく、負けないための消極的な相撲になってしまいました」と、父・学さんは振り返る。本人も悩んでいたが、最終的には「やっぱり相撲が強くなりたい」と、名門の埼玉栄高校への進学を選択。そこで、元横綱・大鵬の孫として注目される納谷らと同期になり、着実に力をつけた。

名門・埼玉栄高校から角界へ

高校での3年間について、母・カツ江さんは「埼玉栄は、とにかく基礎を徹底する指導でした。勝つことよりもケガしないことを第一にして、大事に育てていただいたので、親としてはとてもよかったと思っています」と話す。

そして、高校3年生の10月の国体が終わった直後、それまで熱心に声をかけてもらっていた佐渡ヶ嶽部屋に入門。在学中に初土俵を踏むことになった。当初、両親とは「プロで5年間頑張って芽が出なかったら大学へ行こう」と約束していたが、入門して2年であっという間に関取に昇進。同じく「黄金世代」と称される、元横綱・朝青龍の甥の豊昇龍との同時昇進で注目を集めた。両親が「喜ばしいが実感もない」とうれしい悲鳴を上げていた矢先、十両2場所目となる先の3月場所で、見事優勝まで飾ったのである。

身長190センチ、体重160キロの恵まれた体格を生かした、豪快な取り口が特徴の琴勝峰。来場所、ついに念願の新入幕なるか。20歳の寡黙な新星は、多くは語らないながらも、虎視眈々とさらなる高みを目指しているはずである。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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