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「新型コロナは明らかに武漢研究所から流出。エネルギー省とFBIは科学的アプローチをした」前CDC所長

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
米エネルギー省とFBIが新型コロナの研究所流出の可能性を指摘し、流出説が再燃。(写真:ロイター/アフロ)

 主にリベラル系のメディアから陰謀論と見られていた新型コロナの研究所流出説が再燃している。

 2月26日、米エネルギー省が新型コロナは研究所から流出したと「低程度の確実性」で結論づけたとウォール・ストリートジャーナル紙が報じ、2月28日には、FBI長官のクリストファー・レイ氏も新型コロナの起源は中国の研究所である可能性が高いとする見解を示した。また、FBIは、2021年、研究所流出説には「中程度の確実性」があるとしていたことも報じられている

 もっとも、4つの情報機関は中間宿主の動物を介してヒトに感染した自然由来説を支持している。6つの機関で一致しているのは、新型コロナが生物兵器として製造されたものではないという見解だけだ。

 研究所流出説については、これまで、米共和党議員の中から支持する声があがっていたが、今回も、共和党側はその説を声高に訴え始めた。共和党上院議員のロジャー・マーシャル氏は「我々は新型コロナの本当の起源を顕在化させる推進力を与えられた。私自身医師であり、生化学を専攻したが、新型コロナが自然由来というのはありえない。新型コロナはあまりに完璧過ぎるのだ」と新型コロナの感染力の強さと免疫逃避能力を指摘しつつ、研究所流出説を訴えている。

明らかに武漢研究所から流出

 新型コロナの起源を調査している米下院特別分科委員会は、3月8日に開かれる公聴会で、2年前から研究所流出説を訴えている、米CDC(米疾病対策センター)の前所長でウイルス学者でもあるロバート・レッドフィールド氏をフィーチャーする予定だ。同氏は、エネルギー省とFBIが研究所流出の見方を示したことを受け、彼らは強力な科学者集団を有しており、科学的にアプローチしたと保守系のFOXニュースで強調している。

「FBIとエネルギー省が新型コロナが研究所由来という結論に辿り着いたことは注目に値すると思う。また、重要なのは、彼らが巨大で、強力な科学者集団を有していることだ。彼らはアグレッシブに、科学的に、(新型コロナの起源に)アプローチしたのだと思う。他の情報機関の中には、深く研究していないところも実際あるかもしれない。リバモア(米エネルギー省が所有するローレンス・リバモア国立研究所のことで、生物兵器や細菌戦のエキスパートもいるという)、エネルギー省には深い科学的知見があり、彼らは科学的に考察したのだと思う。

 FBIにも明らかに深い科学的知見がある。彼らは科学的に考察した。エネルギー省の報告書の情報はまだ機密扱いだが、2年前から言ってきたように、私は新型コロナは明らかに武漢研究所から流出したものだと考えている。最終的に人々はそのことに気づくだろう」

非常に特異なウイルス

 レッドフィールド氏はまた、新型コロナが、SARSやMERSのように中間宿主の動物を介してヒトに広がったという考えは間違いだとこう言及している。

「新型コロナがSARSやMERSのように自然由来という主張はミスリーディングだ。なぜなら、SARSやMERSはコウモリから中間宿主の動物を介してヒトに広がり、新型コロナは(中間宿主を介さず)ヒトに感染し急速に拡大した。SARSやMERSの初期の感染件数は1000件以下で、18年経った今も1万件以下だ。一方、新型コロナは最初から大きな感染力でヒトへの感染が急速に拡大した。私の見方では、新型コロナは研究所内で仕込まれたものだ。2014年に研究所が出したレポートは、コウモリのコロナウイルスを鍵となる人の受容体に結合させるのに成功したとしている。新型コロナはSARSやMARSとは全然違う、非常に特異なウイルスなのだ」

 つまり、レッドフィールド氏は、新型コロナは中間宿主の動物を介しておらず、研究所内でヒトに感染しやすいように施されたコロナウイルス(新型コロナのこと)が流出したために、ヒトの間で感染が急拡大したと考えているのである。SARSやMARSのような致死的なコロナウイルスの場合、通常、感染はゆっくりと広がり、新型コロナのような急速なヒトへの感染拡大は起きないというのだ。

新型コロナの起源で分断されるアメリカ

 アメリカは、新型コロナの起源についても、政治的に分断されている状況がある。極論すれば、科学を信じる民主党と科学を信じない共和党という分断だ。トランプ共和党政権下でCDC長官を務めたレッドフィールド氏が、今回、新型コロナの研究所流出の可能性が2つの政府機関によって指摘されたことについて、巨大な科学者集団と深い科学的知見を有すエネルギー省とFBIが科学的なアプローチをしたと何度も“科学”を強調したのは、科学を信じていないと批判されることがままある共和党の汚名を返上したい思いもあるのではないか。

 いずれにしても、新型コロナの起源については、結論が出ていないし、今後、結論に到達できるのかも疑問だ。中国政府から調査協力が得られない限り、結論を出すのは難しいとも言われている。結論を出すのが難しい以上、新型コロナの起源をめぐる政治的分断はこれからも続いていくことになりそうだ。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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