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人助けランキング、日本は大差で世界最下位 アメリカは首位陥落、中国は順位上昇 トップは?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ロサンゼルスではコロナ禍の昨年、慈善団体がドジャース球場でフード入りの袋を配布。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 コロナ禍、世界中では、多くの人々が様々な助けを必要とした。人々は助けを必要としている人々を助けたのだろうか?

 チャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」は、世界金融危機後の2009年から「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」、「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という3つの項目について、世界の国々で行われたインタビューをベースに国の寛容度を採点し、報告書を出しているが、今年は、コロナ禍での世界の国々の人助けを分析したWorld Giving Index(世界人助け指数)2021 A global pandemic special report という報告書を発表している。

 報告書では、2020年、アメリカの市場調査会社ギャラップが、114カ国12万1000人超の人々に電話インタビューを行って調査したデータをベースにして分析が行われている。

欧米先進国の順位が落ちたワケ

 その分析の結果、上記の3項目をもとにして出された総合順位のトップはインドネシアだった。インドネシアでは、2020年、10人中8人超が寄付を行い、ボランティアした人々は世界平均の3倍を超えた。

 これまでトップ5入りを続け、2019年度に同機関が出した10年間の総合ランキングではトップだったアメリカは19位に順位を落とした。

 アメリカ以外にも、それまではトップ10に入っていたイギリス、カナダ、アイルランド、オランダなどの先進国も順位を落としている。その背景には、コロナ禍、欧米の多くの国々でロックダウンや様々な制限が行われたため、チャリティー・イベントが実施できず、小売店も営業制限され、寄付を集められる機会が失われたことがあると指摘されている。

 また、スコアが、いずれの項目でも最も大きく低下したのは、混乱が起きていた香港だった。

世界人助け指数の上位国。表は左から、レッドが総合ランキング、グリーンが人助けランキング、パープルが寄付ランキング、ボルドーがボランティアランキング。出典:World Giving Index 2021
世界人助け指数の上位国。表は左から、レッドが総合ランキング、グリーンが人助けランキング、パープルが寄付ランキング、ボルドーがボランティアランキング。出典:World Giving Index 2021

日本は大差で最下位

 総合順位で最下位は日本である。しかも、そのスコアは調査された国々と比すると非常に低い。スコアを見ると、1位から113位まではほぼ1ポイントずつ低下、113位のポルトガルのスコアは20だが、114位の日本に至っては12とポルトガルのスコアとは8ポイントも水をあけられている。僅差ではなく、大差で最下位なのである。また、2018年度に行われた調査のスコア22からは10ポイントも低下している。

 日本はなぜ最下位なのか。それについて、報告書は以下のような指摘をしている。

「日本は歴史的に先進国としてはめずらしいほど市民団体が少ない。チャリティーの規則は複雑で、国の対策に対する期待が高く、組織化された非営利団体の登場は比較的新しい現象だ」

世界人助け指数の下位国。表は左から、レッドが総合ランキング、グリーンが人助けランキング、パープルが寄付ランキング、ボルドーがボランティアランキング。出典:World Giving Index 2021
世界人助け指数の下位国。表は左から、レッドが総合ランキング、グリーンが人助けランキング、パープルが寄付ランキング、ボルドーがボランティアランキング。出典:World Giving Index 2021

 調査項目の1つ「見知らぬ人を助けたか」という点においても、日本は114位と最下位。しかも、113位のベルギーとは13ポイントも差があり、これも大差で最下位である。

 ちなみに、この項目のトップ10のうち6カ国はアフリカの国々だ。アフリカの国々が人助けする傾向が強いのは「ウブントゥ」という哲学があるからではないかと報告書は述べている。「ウブントゥ」とは思いやりや互恵性、尊厳、人道、友愛を大切にした生き方を表す言葉。アフリカではコミュニティー作りのために「ウブントゥ」が重視されているというが、コロナ危機の中、「ウブントゥ」の下で助け合いが行われたと推測される。一方、ボトム10を見ると、その多くはヨーロッパの国々だ。

 「寄付をしたか」という項目でも、日本はスコアが低い。報告書では「人々が寄付する可能性が最も低い国には、非常に富裕な国(日本)と非常に貧困な国(マリ)が含まれている。異なる宗教や文化的信条のため、人々が寄付する可能性が低いのかもしれない。しかし、ボトム10の国々の多くは、実際、低所得〜中所得の国だ」と、日本が世界では非常に富裕な国であるにもかかわらず、寄付があまり行われていないことが浮き彫りにされている。

順位が上昇している中国

 また、報告書は、近年、中国が順位をあげていることにも言及している。2019年に同機関が出した10年間の総合ランキングでは最下位だったが、今回、中国の総合順位は95位。中国はこれまで、3つのすべての調査項目で低スコアだったが、今回はいずれの項目もボトム10に入っていない。「ボランティアをしたか」という項目では、中国は2009年〜2019年の10年にわたり最下位だったが、今回の調査では73位に上昇した。「寄付をしたか」という項目でも大きくスコアがあがっており、その一因として、2016年に、中国で初のチャリティー法が導入されたことが指摘されている。

 全体的には、コロナ禍、世界では積極的に人助けが行われたようだ。調査した人々の55%以上が2020年に見知らぬ人を助けたと報告。これは、CAFの調査史上もっとも高い割合で、世界で30億人以上の人々が見知らぬ人を助けたことに匹敵するという。

 また、2020年は、この5年間では最多の31%の人々がお金を寄付したという。

 コロナ禍、世界的に進んだ人助け。アフリカの新興国では人助けをした人々が多かった一方、欧米の先進国ではロックダウンや厳格な制限が敷かれたことからこれまでのようには人助けが行われなかった。そして、日本はというと、人助けの機会を損なうロックダウンや厳格な制限が行われなかったにもかかわらず、総合順位も人助けランキングも大差で最下位だった。この結果を、日本の人々はどのように受けとめるのだろうか。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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