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ジム・ロジャーズ「外国人を入れるくらいなら“日本消滅”の方がましと考える日本人」 友好度アジア最下位

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
「外国人を恐れないでほしい」というロジャーズ氏。写真:TAKAO HARA

 世界的投資家ジム・ロジャーズ氏。

 ジョージ・ソロス氏、ウォーレン・バフェット氏と並んで「世界三大投資家」の1人として知られる「投資の神様」だ。ソロス氏とはクォンタム・ファンドを共同設立、10年で4200%という驚異的なリターンを叩き出したレジェンドでもある。

 世界的投資家ジム・ロジャーズ氏とは何者なのか? シンガポールで見た素顔世界的投資家ジム・ロジャーズの“国家論”(1) なぜ日本はリッチな国ではなくなったのか?世界的投資家ジム・ロジャーズの“国家論”(2) なぜ「中国は悪」とみなされるのか?に続き、取材翻訳させていただいた『ジム・ロジャーズ 世界的投資家の思考法』(講談社より発売中)では紹介しきれなかったことや筆者が話を伺う中で感じたことを紹介したい。

日本人の外国人嫌い

 ロジャーズ氏がかねて、口を酸っぱくして訴えてきたのは、日本の人口減少問題。日本は子供を増やさない限り、今後、生活水準が落ちていくのは必至と明言している。人口減少を食い止めるには積極的に移民を受け入れることが重要だが、「日本の閉鎖性」や日本人の“外国人嫌い”な傾向が足枷になるという。

「日本は閉鎖的な国で、日本人は外国人が嫌いだ。特に、韓国人や中国人を嫌っている。韓国人は、祖父母や親や自分自身が日本名に改名しても、また日本に何十年住んでいても、日本社会から受け入れられない状況がある」

ゴーン事件で強まった“外国人嫌い”

 日本人の“外国人嫌い”は、カルロス・ゴーン事件でいっそう強まったとロジャーズ氏は指摘する。

「日本人はすでに“外国人嫌い”だが、そんな中、ゴーン氏は日本から逃亡した。そのため、日本人の多くは『外国人だからな』と思っているのではないだろうか。

 日本政府がゴーン氏は間違いを犯したと言っているのだから、彼は間違っているのだと多くの日本人は考えていることと思う。ゴーン事件は、日本人の“外国人嫌い”や反外国人的傾向をいっそう強める結果になった。

 ゴーン氏が有罪か無罪かはわからないが、新聞によると、日本の有罪率は99%だという。それはいいことではない。99%、市民が負けて政府が勝つという状況はフェアーなことではない。99%有罪というのはおかしいと思う」

“移民受け入れ”より“日本消滅”を望む

 日本人の“外国人嫌い”を明言するロジャーズ氏だけに、安倍首相が5年間で最大約35万人の外国人労働者を受け入れると言った時は驚いた。しかし、その数では不十分だという。

「外国人受け入れは素晴らしいことだが、人口減少が起きている現状を考えると、年約7万人の外国人を受け入れたところで日本は救われない。受け入れないよりはましだが、そんな数では意味がない」

 そして、日本人の考え方を指摘しつつ、こう警告する。

「日本人に『外国人を受け入れるか、それとも、外国人を受け入れるくらいなら日本が消滅した方がましか?』と聞いたら、彼らは『日本が消滅した方がまし』と答えるだろう。韓国人や中国人、フィリピン人で日本がいっぱいになるよりは、日本が消滅した方がましと考えている日本人が多いのではないか。それが日本人の考え方のように思う。しかし、30年後、50年後、70年後、子供も増やさず、外国人も受け入れなかったら、日本は消滅する。

 日本のこれからの生き方を決めるのは日本だ。日本人は私のような外国人の言うことなどに耳を貸したくないだろうが、現実を直視してチェンジしてほしい」

調査結果が示す「日本の閉鎖性」

 日本に変わってほしいと願うロジャーズ氏だが、なかなか変わるのは難しいようだ。ある調査結果がそれを示唆している。

 総合人材サービス会社「ランスタッド」が世界34カ国や地域で行なった、2019年第3四半期のワークモニター調査における「外国人労働者の受け入れ」に関する労働意識調査では、「様々なバックグラウンドを持つ同僚と働きたい」という項目に同意した日本人労働者はグローバル平均の79.4%のわずか半数である44%で、調査対象国中、最下位だった。ちなみに、2016年第1四半期のワークモニター調査でも、日本は同様の項目では40.7%が同意したに留まり、最下位だった。

 同社は「日本では2018年に外国人労働者数が約146万人で過去最高を更新したが、他文化、外国人に対して閉鎖的な職場の雰囲気は、3年前からほとんど変化がないことが明らかになった」と分析している。

 また、外国人に対する「日本の閉鎖性」を示す調査結果もある。

 HSBCホールディングスは毎年、海外駐在員など自国以外の国に居住して働いている人々に、居住国を「生活」や「仕事」、「教育」の点から評価してもらっているが、2019年に発表された調査結果によると、「文化的で、オープンで、友好的なコミュニティー」という点で、日本は調査した33カ国中26位、調査したアジア諸国の中では、22位の中国よりも低い最下位の評価となった。調査報告書のウェブサイトは、そんな日本に対して「全く異なる生活や文化に対して心を開こう」と訴えている。

 ちなみに、同じ「文化的で、オープンで、友好的なコミュニティー」という点で、1位はトルコ。アジア諸国の中では、インドネシアが4位と最も高評価されており、他には、タイ6位、マレーシア7位、ベトナム9位がトップ10にランクインしている。

 日本に居住して働いている外国人だけでなく、彼らの子供たちもまた「日本の閉鎖性」を感じている。就学環境における「友達づくり」という点で日本は33カ国中32位、日本に居住する外国人の子供たちは学校で友達をつくる難しさに直面しているのだ。

外国人を恐れるな

 ロジャーズ氏は外国人が大好きだ。それが、同氏が世界一周を2度もした理由でもある。自分の子供たちも、外国人や他国を恐れることなく、世界を回って、世界を知ってほしいと願う。

 そんなロジャーズ氏から日本の人々に伝えたい一言。

「外国人を恐れないでほしい」

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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