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米黒人暴行死「白人の元警官はフロイドさんをとてもよく知っていた。彼らは対立していた」2人の元同僚

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
米議会で証言したフロイドさんの弟フィロニスさんは、テレビでは個人的問題にも言及。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 世界が注目するフロイドさん暴行死事件。

 フロイドさんと元警官のショービン容疑者は、同じナイトクラブ(そのナイトクラブは、事件後に起きた暴動で焼け落ちてしまった)で警備員を務めていたという点で接点があったことは、5月31日の投稿「ミネアポリス暴動、全米に拡大 キング牧師の息子が訴える「アメリカの闇」と父の思い」ですでに書いた。

 ショービン容疑者は、約17年間、警官としての仕事がない時、ナイトクラブの前にパトカーを止めて警備を行い、フロイドさんは2019年に店内で警備員を務めていたのだ。

 元ナイトクラブオーナーのマヤ・サンタマリアさんは、事件直後に受けたインタビューで「2人が見知っていたかはわからない」と話し、「ショービン容疑者がフロイドさんのことを認識していたら、もう少し情けをかけたのではないか」とも話していたが、ここにきて、2人が知り合いで、しかも、とてもよく知っていたという発言が出てきた。

2人は対立していた

 米CBSテレビの“Justice for All”という特別番組(米国時間6月9日に放送)に登場した、フロイドさんの弟のフィロニスさんが、ショービン容疑者は、膝でフロイドさんの首を押さえつけていた時、フロイドさんが誰だかはっきりとわかっていたと思うと指摘。また、同氏は「個人的なことがあったと思う。そうみているのは自分だけではない」と事件の背景には個人的な事情があったことも示唆している。

 ナイトクラブで働いていた、フロイドさんとショービン容疑者の元同僚のデビッド・ピニー氏も、2人は互いに知っていただけではなく、衝突したこともあると話している。

「彼らは対立していた。ショービン容疑者はクラブで、客にとても攻撃的になり、それが問題になっていたからだ。彼はフロイドのことを知っていた」

 さらに、「どれくらい(ショービン容疑者はフロイドさんのことを)知っていたのか?」とのインタビュワーの質問に、ピニー氏は「とてもよく知っていたと思う」と答えている。

黒人を恐れていた

 ショービン容疑者がナイトクラブで攻撃的な態度を見せ、客から苦情も来ていたことから、元オーナーのサンタマリアさんは、動画の光景を見て、ショービン容疑者の行為が行き過ぎと感じた以外は、驚きを感じなかったという。

「正直言うと、初めて、ショービンが膝を彼の首に押しつけているのを見た時は驚きませんでした。ショービンが似たようなことをするのを見たことがあるからです。驚いたのは、ジョージがはっきりと、OK、OKといっても、ショービンがすぐにその行為をやめなかったことです」

 また、サンタマリアさんは「ショービン容疑者は黒人との間に問題を抱えていたのか?」という質問に対し、「彼は黒人を恐れ、怖がっていたと思う」と答えている。

 黒人を恐れていたからなのか、ショービン容疑者は、ナイトクラブで、黒人音楽の演奏が行われる「アフリカン・アメリカン・ナイト」という特別イベントの時は、いつもとは違う様子を見せていたとサンタマリアさんは話している。

「彼の表情や態度、姿勢は、そのイベントの時には変わったのです」

 前の投稿でも書いたが、そのイベントで喧嘩が起きた時、ショービン容疑者は客にペパースプレーを吹きかけ、警察に通報し、6台のパトカーがクラブに駆けつけたこともあった。そんショービン容疑者の対応を行き過ぎだと感じたサンタマリアさんは、その時、彼を叱責したという。

 フロイドさんの弟やナイトクラブの元同僚が話すように、ショービン容疑者がフロイドさんのことをよく知っていたとしたなら、事件の背後には何か個人的な理由もあったのだろうか?

 しかし、そこに個人的な理由があったにせよ、なかったにせよ、フロイドさんが暴行死した背景には、サンタマリアさんが指摘した「ショービン容疑者が抱えていた、黒人に対する恐れ」という人種差別的な感情があったことは否めない。

 フロイドさんの家族の代表を務めているベン・クランプ弁護士は、2人が互いに知っていたという理由から、ショービン容疑者に対する容疑を、現在の第2級殺人罪から第1級殺人罪にするよう求めている。裁判の行方が注目されるところだ。

(注)この記事を投稿した翌日、CBSニュースが、元同僚のピニー氏が「2人は知り合いで、衝突していた」という発言を撤回したことを報じました。

(参考記事)

George Floyd and Derek Chauvin "bumped heads" while working at nightclub, former coworker says

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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