米「母の日」、行政命令に反抗して再開したレストランに客殺到! 新型コロナ

不法に再開した店に、大勢の客が押し寄せた。写真:abcchicago.com

 こんな「母の日」では、お母さんが泣くのではないか?

 5月10日の「母の日」、ツイッターで拡散された動画を見てそう思った。

 それは、客で大混雑しているコロラド州キャッスル・ロックにあるレストラン「C&C Breakfast and Korean Kitchen」の様子を映し出した動画だ。席もフロアも客でいっぱい。店頭にも列ができている。社会的距離の確保などどこ吹く風。ビッグなパーティーでも行われているのかと思わせる光景だ。しかも、マスクをつけている客が見当たらない。この動画は、現時点で、540万回以上再生され、アメリカで波紋を呼んでいる。

 コロラド州では新型コロナウイルス感染抑制措置としてレストラン内での飲食を禁ずる行政命令が出されているが、このレストランは、「母の日」、この行政命令に反抗すべく、店内での飲食サービスを再開。500人もの客が自由を求めて同店に押し寄せた。

 動画を投稿したレポーターのニック・パケット氏のツイートによると、同店オーナーは「通常の“母の日”の2倍の客入りだ」と話していたという。

マスクも社会的距離も懸念せず

 同店が店内営業を再開した理由は同店のツイートから見てとれる。

「我々は、アメリカ、小企業、憲法を支持し、コロラド州の知事の行き過ぎに反対している」

 今、アメリカのあちこちで、経済活動の自由を訴える声があがり、強行に営業を再開する動きも出ている中、同店も知事の行政命令に違反して客を店内で食事させて見せたのだ。

 レストランの入り口には「注意:我々の自由は、恐怖が始まるところでは終わらない。他の人と6フィート以内で近づくのが怖いなら、店には入らないで」という掲示までされていたという。

 オーナーのエイプリル・アレラノさんは、予想以上の客入りに大喜びし、地元メディアで以下のように話している。

「客がマスクをつけていないことや社会的距離をとっていなことは全然懸念していません。客は公衆衛生に危険を与えてはいないわ。サービス業の私たちは長年予防策をとってきた。手洗いし、消毒もしている。恐怖が多くのことが動かしているけれど、私は怖くはないわ」

 客のリンダ・シャティリーさんは店のオープンを支持し、こう話している。

「外に出ることは怖くない。マスクもつけないわ。健康だし、みなが言うほど深刻な問題ではないと思うわ」

 当然のことながら、同店には、保健当局からすぐに閉鎖命令が出された。

アメリカの弱点につけこんだ新型コロナ

 ツイッターには、同店や同店の客に対する批判や皮肉のコメントが多数寄せられている。

「彼らに医療サービスが与えられるべきではない。責任ある行動をとって、同じ市民を気遣っている人々のためのリソースが、彼らに当てられるべきではないわ」

「新型コロナは、自己中心主義、無知、強欲、連帯感の欠如というアメリカの弱点につけ込んでいるように見えるね」

「愚かな人々が、お母さんに新型コロナウイルスという贈り物を与えてしまうかもね」

「コロラド州では100万人中3500人が感染している。韓国では100万人中220人しか感染していない。その韓国では、先週末、ある男がクラブで50人以上に感染させた。この店の客の1人が感染していたらどうするんだ?」

「14日後に、この街がどうなっているかチェックしてみよう」

「コロラド州に十分な人工呼吸器があるといいね」

選択の自由?

 その一方で、このレストランの再開を支持し、“選択の自由”を訴えるコメントもある。

「いいね! 誰も家から出るよう強制されて出ているわけではない。怖がっている人たちは永遠に家に閉じこもることもできる。人にはチョイスを与えよう」

 選択の自由。

 アメリカが尊重してきた権利だ。しかし、新型コロナ危機という公衆衛生危機の下でこの権利を主張することは、感染し、最悪の場合、命を失うというリスクを伴う。そんなリスクを犯しても、自由という権利を主張し、この場合、レストランでマスクもせずに人と近距離で食事する自由を謳歌したいというのなら、それはエゴ以外の何ものでもない。自分の命だけではなく、人に感染させて人の命まで奪うリスクも伴うからだ。そんなリスクを伴う自由などあっていいはずがない。

 実際、選択の自由に対して、皮肉なコメントもあがっている。

「彼らに感染させられる人々の方には、選択の自由はないでしょ」

 今、世界で感染者数も死者数も増加し続ける中、各国は規制緩和と経済再開へ向けて舵を取り始めている。その結果、韓国ではクラブで集団感染が発生し、ロックダウンの一部緩和を進めたドイツでは、緩和開始からわずか数日で感染者数が増加していることが明らかになった。背後には、経済活動の自由を含め、2ヶ月間に渡って抑えられていた自由を取り戻したいという個人のエゴという問題が横たわっているような気がしてならない。

Do Your Part!

 アメリカでは、新型コロナ危機の下、“Do Your Part”、という言葉がよく叫ばれている。新型コロナとの闘いにおいて「あなたの役割を果たしなさい」という意味だ。

 今、多くの人々がそれぞれの役割を果たすべく、新型コロナと闘っている。

 患者はサバイブしようと新型コロナと闘っている。そんな患者を救う役割を果たすべく、医療従事者は感染するリスクの下で新型コロナと闘っている。ワクチンや治療薬を開発する役割を果たすべく、世界中の科学者は昼夜研究し、新型コロナと闘っている。

 そんな中、私たちはどんな役割を果たすことで、新型コロナと闘ったらいいのか?

 その答えを、問題のコロラド州のレストランの光景が反面教師となって教えてくれているように思う。それは、自由が目の前に差し出され始めても、自らのエゴから、それに安易に飛びつくことなく、できる限りStay Homeし、社会的距離を取り続けるという役割を果たすこと。感染症の専門家が指摘しているように、私たちがこの役割を果たすのを止めれば、感染者数や死者数の曲線が急勾配になることは目に見えているのだから。