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緊急事態宣言「安倍氏は楽観的」「日本は例外主義」米紙 米・外出禁止令違反に罰金2万5千ドルや禁固刑も

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
安倍氏の「緊急事態宣言」にアメリカのメディアの見方は厳しい。(写真:ロイター/アフロ)

 安倍氏が、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制すべく「緊急事態宣言」を発令した。

 宣言に対し、多くの海外メディアが「発令は遅過ぎる」「厳格な措置ではない」などの批判を展開しているが、アメリカの2大紙の見方も辛辣だ。

楽観的な安倍氏

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「日本が新型コロナで緊急事態宣言、時すでに遅し?」という皮肉なタイトルで、

「安倍氏は、緊急事態宣言発表に際し、楽観的な見方をした。安倍氏は、国民に人との接触を激減させるよう要請することで、2週間後には感染者の増加を減少に転じさせることができると話した」

と安倍氏の楽観的な見方を揶揄した。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は「日本は緊急事態宣言を発令したが、ロックダウン(都市封鎖)はせず。経済から目を離さず」というタイトルで、安倍氏が経済を重視するためにロックダウンしなかった点を問題視している。

「安倍氏は“日本政府は海外のようにロックダウンはしない。経済活動はできるだけ維持する”と言った。発表に、多くの国民が憤慨している。発令しても手遅れだ」

 また、両紙とも、安倍氏の「緊急事態宣言」を順守するかどうかは国民の自発性に委ねらており、国民が順守しなかったとしても罰することができない点も指摘している。

「日本は、在宅やリモートワークを無視した人を罰することはできない」(NYタイムズ)

「安倍氏はバーやナイトクラブ、カラオケなどに行かないよう要請したが、違反に対する罰則は設けられていない」(ワシントン・ポスト)

 「緊急事態宣言」といっても名ばかりで、結局のところ、罰則が科せない要請は手緩いと捉えられているのだ。

最大2万5千ドルの罰金や禁固刑

 ちなみにアメリカでは、多くの州が、外出禁止令違反を軽犯罪とみなし、罰金か禁固刑、あるいはその両方の罰則を設けている。

 カリフォルニア州の場合も、外出禁止令に違反した場合は軽犯罪とみなされ、罰金か禁固刑、あるいはその両方が科される。

 先日は、違反して海に入ったサーファーに1000ドルの罰金が科されたことがロサンゼルスでニュースになった。筆者が住むサンタモニカ市では警察官が「公園は閉鎖されており、中に入ったら軽犯罪になります」とパトカーから住民にアナウンスし、警告を行なっている。

 アラスカ州の場合、違反した企業には最大1000ドルの罰金、違反した個人には最長1年の禁固刑と最大2万5000ドルの罰金が科される。

 首都ワシントンがあるコロンビア特別区では、最大5000ドルの罰金、最長30日の禁固刑、あるいはその両方が科される。

 新型コロナの危険性を考え、罰則を厳格化している州もある。

 例えば、ミシガン州は当初、最大500ドルの罰金と90日の禁固刑という罰則を設けていたが、4月2日からは、罰金を最大1000ドルに引きあげた。

 ニュージャージー州も、当初、罰金は最大1000ドルとしていたが、その後、罰金を最大1万ドルに引きあげており、18ヶ月の禁固刑も設けている。同州の知事は、違反にたいしてはゼロ・トレランス政策(厳罰主義)を取ると明言し、違反者を「愚か者」とまで呼んでいる。

間違った安全意識と例外主義

 ところで、なぜ、安倍首相は“遅過ぎる緊急事態宣言”をしたのか?

 米紙ワシントン・ポストがその背後にある数々の問題をあぶり出している。

 1つには、自民党と経済界の結びつきが強いという問題があると指摘。

「自由民主党は経済界との結びつきが非常に強く、安倍氏自身は“アベノミクス”という名で知られる日本の低迷している経済を復活させようと夢中になっている」

 同紙は“間違った安全意識”という問題にも言及している。

「日本には、広範なウイルス検査を行わず、クラスターを発見して隔離することで、早期に新型コロナの封じ込めに成功したという“間違った安全意識”がある」

 さらには、”例外主義”という日本の問題にまで斬り込んでいる。

「マスク着用の普及、高い衛生水準、人との接触を避けることによって封じ込めをしており、他国で行われているようなロックダウンを避けることができている、とする例外主義の観念がある」

透明性の欠如とご都合主義

 同紙はまた、以下の上智大学の中野晃一教授の発言を通して、透明性に欠く日本の新型コロナ対策を問題視。

「検査不足は透明性の欠如という問題を生み出し、同時に、新型コロナ政策は支離滅裂で方向性に欠けている。政府は企業セクターを救うことに、よりいっそうフォーカスしている」

 政府のご都合主義という問題については、英国キングス・カレッジ・ロンドン教授の渋谷健司氏の発言を通して指摘している。

「政府専門家会議は多様な人材に欠けており、早期に警鐘を鳴らしたであろう、忖度せずに物申す学者たちを排除した。それどころか、政府専門家会議は、政府と企業セクターのアジェンダに都合のいい一連の政策に、歩調を合わせてきた」

 世界の批判を浴びる“手緩い緊急事態宣言”は、果たして、感染拡大封じ込めにどこまで奏功するのか。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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