2019年世界の10大ニュース トランプ弾劾裁判、罷免支持が55%に急増

下院による弾劾訴追後、トランプ氏の罷免を支持する人々が増加。(写真:ロイター/アフロ)

 2019年も残すところあと数日。今年、世界で注目された10大ニュースは何か?

 マーケットウォッチによると、AP通信が、世界中の新聞やテレビ局、APの編集者やマネージャーで構成されるパネルによる投票で選出した10大ニュースは以下の通りとなった。

1. トランプ氏弾劾訴追

2. 米移民政策

3. ロシア疑惑

4. 銃乱射事件

5. オピオイド問題

6. 世界気候変動

7. ブレクジット

8. 米中貿易戦争

9. ボーイング737MAX問題

10. 香港大規模デモ

 他には、ニュージーランドのモスクで発生した銃乱射事件、民主党大統領候補選出キャンペーン、パリのノートルダム寺院の火災なども高い得票を得た。

トップはトランプ氏弾劾訴追

 ご覧のように、トランプ大統領関連のニュースが多数ランクインしており、トップはトランプ弾劾訴追だ。

 米下院は12月18日、トランプ大統領を「ウクライナ疑惑」をめぐる「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追する決議案を可決、かくして、トランプ氏はアメリカ史上弾劾された3人目の大統領となった。

 世界からバッシングされたトランプ氏の非情な移民政策は第2位にランクイン。メキシコ国境を超えてきた多くの不法移民たちは過酷なキャンプ生活を強いられ、子供たちの中には拘束された後死亡した者もいる。メキシコとの国境を流れるリオグランデ川で不法入国しようとして溺死したエルサルバドル人父娘の悲惨な写真は世界で論議を呼んだ。

 2年間に及ぶ調査が行われたロシア疑惑は第3位に。トランプ選挙陣営とロシアの間で共謀が行われたかについては、刑事訴追に値する十分な証拠こそ見つからなかったが、疑惑の調査にあたったモラー元特別検察官が公聴会で「トランプ氏が司法妨害で潔白であることは証明されていない」と証言したため、ロシア疑惑には今も不透明感が残っている。

 第4位は銃乱射事件。学校やショッピングモール、フェスティバル会場など、アメリカ各地で銃乱射事件が多発。銃暴力アーカイヴによると、今年、12月28日までにアメリカで起きた銃乱射事件(同機関は、4人以上が撃たれて死傷する事件を銃乱射事件と定義)は414件と過去最多を記録。1日1件以上の銃乱射事件が発生したこととなり、米国では銃規制が進んでいないことを証明した。22人が亡くなったテキサス州エルパソで起きた銃乱射事件はメキシコ人を狙ったヘイト・クライムでもあった。トランプ氏の日頃の人種差別的発言が銃撃犯に影響を与えたという指摘もある。

 トランプ氏が「でっち上げだ」と言って懐疑的な姿勢を示してきた気候変動は第6位にランクイン。2019年、世界は観測史上2番目に暑い年となる模様だが、それにもかかわらず、トランプ政権は11月、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を国連に正式に通告。今年は、タイム誌で「今年の人」に選ばれた環境活動家グレタ・トゥンベリさんの怒りの発言「あなたたちが裏切るのなら絶対に許さない」が注目され、グレタさんに対してトランプ氏が「とてもバカげている」などと言って揶揄したことも非難された。

 米中貿易戦争は8位。米中は関税をめぐり報復を重ね、9月には「第4弾」の制裁・報復関税が同時に発動された。しかし、12月13日、米中は第一段階の合意に達し、予定されていた制裁関税の発動も見送られた。それでも、貿易戦争開始時のトランプ氏の要求はまだ満たされていないため、2020年もさらなる協議が続行することになる。

トランプ氏罷免支持が増加

 2019年世界のトップニュースになった「米下院によるトランプ氏弾劾訴追」。2020年早々には、トランプ氏を罷免すべきか審議する弾劾裁判が始まる。しかし、今、トランプ氏にとっては嬉しくないニュースがある。トランプ氏の罷免を支持する人々の割合が記録的に高くなっていることが、最新のマイクロソフトリサーチの調査でわかったのだ。

 調査した1500名中、55%の人々が上院による罷免を支持した。下院による弾劾訴追前の12月17日に、罷免を支持した人々の割合は48%だったことを考えると、急増と言ってもいいかもしれない。反対に、トランプ氏の罷免に反対する人の割合は、弾劾訴追前は47%だったが、弾劾訴追を境に急落、クリスマスには40%にまで落ちた。

下院による弾劾訴追後、トランプ氏の罷免を支持する人々の割合が急増し、反対する人々の割合は急減。出典:Microsoft News Poll
下院による弾劾訴追後、トランプ氏の罷免を支持する人々の割合が急増し、反対する人々の割合は急減。出典:Microsoft News Poll

 この急変について、マイクロソフトリサーチのデビッド・ロスチャイルド氏はこう分析している。

「日々の調査結果を追うと、人々が反対から支持へと急にシフトすることはめったにない。この結果(罷免支持の急増)は、明らかに、共和党が行なった完全な議会妨害が有権者には受け入れられていないことを示している」

 政治ニュースサイト・ポリティコが調査会社モーニング・コンサルトと行った世論調査でも、下院による弾劾訴追後、罷免を支持する人々の割合が過半数を超えて51%となり、反対する人々は43%となった。

 ちなみに、弾劾訴追前に米紙USATodayが行なった世論調査によると、51%が罷免に反対し、45%が支持していた。

 この2つの調査結果は、アメリカの有権者の心が罷免支持へと動いていることを示唆していると言っていいだろう。

 トランプ氏の大きな支持基盤であるキリスト教保守派の心も罷免支持へと動いているようだ。キリスト教福音派の雑誌「クリスチャニティー・トゥデイ」はトランプ氏の罷免を求める社説を発表して波紋を呼んだ。

 また、同じポリティコとモーニング・コンサルトの調査では、回答者の54%が、上院は弾劾裁判の際には証人をもっと招致すべきだと考えていることがわかった。下院の弾劾公聴会の際、ホワイトハウスが重要証人の出廷を阻止したからだ。

 上院の民主党トップのシューマー院内総務は、マルバニー大統領首席補佐官代行、ボルトン元大統領補佐官ら4人の証人招致を求めている。いずれも、下院の弾劾公聴会の際には証言を拒否した「ウクライナ疑惑」の鍵を握る人物だ。

 上院の共和党トップのマコネル院内総務も、当初は、証人招致を排除する姿勢を見せていたが、後に、証人招致には反対しないと述べた。

 2020年注目のトランプ氏弾劾裁判。共和党の強固なトランプ氏擁護体制を崩してトランプ氏を罷免することは難しいかもしれないが、トランプ氏に不都合な新証言が出てくれば、罷免支持へと心を動かしている有権者に影響を与え、予備選挙を前に、トランプ氏の支持率が下落する可能性もあるのではないか。