アメリカには、留学生や駐在員、研究者、投資家など非移民ビザを取得して入国する人々が多数いる。非移民ビザを取得するためには、まず、ビザの申請を行わなくてはならないが、このほど、ビザ申請者に、過去5年間に使ったソーシャル・メディアのアカウント名、メール・アドレス、電話番号の提出が求められることになった。

 2018年3月、米国国務省はこの新ルールの提案をしていたが、実施されることになったのだ。アメリカのビザを申請しようとしている方には事前の準備を勧める。

嘘をついたら入国に影響

 米国時間5月31日、米国国務省関係者は、この新ルールについて、政治専門紙thehill.comに、

「昨今、世界では、ソーシャル・メディアがテロ感情やテロ活動を生み出す主要な集会の場となっている。これはテロリストや市民の安全に脅威を与える者、危険人物が入国するのを防ぐ重要なツールになる」

と話した。

 新ルールに伴い、米国国務省は、ソーシャル・メディアのアカウント名など追加情報をビザ申請者に要求するため、移民ビザ及び非移民ビザ申請フォームを改訂。ビザ申請者は、“ソーシャル・メディア・アイデンティファイアーズ”の欄に、フェイスブックやツイッター、リンクトインなどSNSのアカウント名を入れることが求められる。

 政治専門紙thehill.comによると、ビザ申請者がソーシャル・メディアを使っていない場合はそう答えることはできるが、嘘をついた場合、入国上、重大な結果を招くという。

 AP通信によると、ソーシャル・メディアのアカウント名やメール・アドレス、電話番号歴などは、これまでは、テロ組織が支配する地域に旅行をした人々のように、追加調査の必要ありと考えられたビザ申請者だけに求められていた。毎年、約65000人のビザ申請者がこれに該当した。

 しかし、新ルールにより、移民ビザ及び非移民ビザを申請するすべての人々(アメリカのビザを申請している外国人は毎年1500万人)にこれらの情報が要求されることになった。

言論の自由がくじかれる

 アメリカ自由人権協会は、昨年3月に新ルールの提案が行われた際、以下のように懸念していた。

「ビザ申請者のソーシャル・メディアの大量な情報を集めようとする行為は、効果がなく、問題がある政策だ。言論や集会の自由をくじくことで、移民やアメリカ市民の権利を侵害することになる。人々は特に、ネット発言が政府の役人に誤解されるものであるかどうか考えなければならなくなるだろう。また、トランプ政権がテロリスト活動という曖昧で広義過ぎる言葉をどう定義するのか懸念している。なぜなら、それはもともと政治的な言葉で、悪事を行っていない移民を差別するのに使われる可能性があるからだ。ソーシャル・メディアの身元調査により、イスラム諸国からの移民や旅行者が不当にビザ発行拒否のターゲットにされるリスクもある」

 アメリカ自由人権協会が指摘するように、テロリストや危険人物という言葉は確かに漠然としているし、幅広い意味を持つ。例えば、ロシアや中国、北朝鮮、イランなどアメリカの敵対国に好意的な意見を投稿したりシェアしたりしたら、危険人物とみなされる可能性があるのだろうか? また、トランプ氏が「フェイク・ニュース」と呼んで敵対視しているニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのニュースばかりシェアしていたら、どう判断されるのだろうか?

 新ルールの下、アメリカ政府に身元調査されることを恐れて、人々はソーシャル・メディアに自由に意見を投稿したりシェアしたりしなくなるのではないか? ビザを取得してアメリカに滞在しようと考える人も少なくなるかもしれない。

 そもそも、ソーシャル・メディアの情報をどんな基準でどのように判断するのか? また、どの程度、その情報がビザ発行の可否に影響を与えるのか? プライバシーの侵害にはならないのか?

 様々な疑問がわく。

 トランプ氏は、メキシコ政府が中南米からの不法移民の入国を食い止めなければ、6月10日から、メキシコからの輸入品に5%課税すると“脅した”ばかりである。不法移民の入国防止のために、課税という移民政策とは無関係な手段に訴えたことで、共和党内からも批判の声が上がっている。

 アメリカの安全を守るという名の下、厳格化していくトランプ氏の移民政策。アメリカはどんどん閉ざされた国になっていくのだろうか?

参考記事:

Trump administration to ask most US visa applicants for social media information

US now seeking social media details from all visa applicants