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「3歳で日本を去ったが日本人プレーヤーだと思ってるんだね」大坂なおみを侮辱するインタビューに非難沸騰

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
「よく運んでこれたね」と言われたトロフィーを軽々と手にしている大坂なおみ。(写真:Shutterstock/アフロ)

 大坂なおみが、昨年の全米オープンに続いて全豪オープンも制覇した。海外メディアもその偉業を絶賛する中で、目についた報道がある。試合直後、オーストラリアのチャンネル9のスポーツキャスターが大坂にしたインタビューが非難されているという報道で、以下のような見出しで報じられている。

デイリー・メール: ドン引きする、失礼だ、ひどい:全豪オープンファンは、チャンピオン大坂なおみに無様なインタビューをしたトニー・ジョーンズ氏を非難。

スポーティング・ニュース:トニー・ジョーンズ氏が大坂なおみにインタビューした際、ドン引きするようなコメントをしたため、ツイッターが炎上。

私はいつも笑顔よ

大坂なおみに“ドン引きするようなインタビュー”をするトニー・ジョーンズ氏。写真:www.dailymail.co.uk
大坂なおみに“ドン引きするようなインタビュー”をするトニー・ジョーンズ氏。写真:www.dailymail.co.uk

 非難を浴びたスポーツキャスター、トニー・ジョーンズ氏は、大坂に対して、どんなコメントをしたのか?

 例えば、大坂はトロフィーを上の写真のセットがあるところまで持ってきたが、ジョーンズ氏はそれについてこうコメントをしている。

「とてもとても大きなトロフィーだね。よく、ここ(上の写真のセットがあるところ)まで運んでこれたね」

 少しレスポンスに戸惑ってみえる大坂に、ジョーンズ氏は続けた。

「笑顔だね」

 さらには、賞金の使い方についても質問。

「自分にはどんなご褒美をあげるの? 410万豪ドルというナイスな賞金をもらったね。それを是非経済に還元してほしいね」

 また、アイデンティティーに関わるコメントもした。

「祖父母は日本にいて、君は3歳の時に日本を去ったけど、今も自分を日本人プレーヤーだと思ってるんだね。君と君の妹はテニスをしたがったが、祖父母が最終的にテニスをすることに賛成するまで時間がかかったね」

 

 これらのコメントに対して、ツイッターでは、ジョーンズ氏への非難が噴出。

「5分のインタビューの間に、世界ナンバー1で、グランドスラムを2連覇した大坂なおみに、1.ショッピングのこと、2.笑顔のこと、3.トロフィーをよく運んできたこと、4.日本人だと思っていることについて質問。まるでチャンネル9は十分に侮辱していなかったといわんばかりだ」

「410万豪ドルで何を買うかだって? 彼女がお金をどう使おうが知った事ではないだろ?」

「トニー・ジョーンズはどうやってトロフィーを運んできたんだと聞いたけど、そんなこと何でもないことよ。彼女はあなたをベンチプレスしてそれを証明できるわ」

 一方で、ジョーンズ氏への非難は行き過ぎだと、かばう声もあがった。

「大坂は笑うのを忘れていたと認めていた。インタビューの前に、チャンネル9のパネルもそのことを話していたんだ」

「“よく運んでこれたね”というのは、彼女がか弱いと言っているではなく、トロフィーが重たいことを言っているんだ」

 議論が起きる中、「大坂はジョーンズのインタビューをよく耐え抜いた」という声もあがった。答えにくい質問をこれまでも受けてきた大坂は、インタビューにおいても、そのメンタルが鍛えられてきたのだろう。そのことは、ジョーンズ氏のコメントに対する大坂のレスポンスから感じられた。前記したように「よくトロフィーを運んでこれたね」とか「笑顔だね」とジョーンズ氏に言われて大坂は少し戸惑っているように見えたものの、「私はいつも笑顔よ」と笑って跳ね返してみせたからだ。そんなレスポンスに、どんな質問にでも明るく答えようとする彼女のポジティブさを見た気がした。

ウィンブルドンの芝生は“少し怖い”

 ガーディアン紙が「ナオミ・オオサカ、ウィンブルドンの芝生は“少し怖い”と発言」と題した記事で伝えている大坂のコメントも興味深い。大坂は、頭から離れないような打ち負かされた試合から多くを学んできたようだ。

「心の中では、去年、このトーナメントで勝ちたかったの。今も、ブレーク・ポイントの時、シモナ・ハレプに対してフォアハンドで打ってアウトになった悪夢に襲われている。シモナに破れた後、彼女はファイナルに進んだ。全仏オープンではキーズと対戦し、彼女はセミファイナルに進んだ。試合では勝つチャンスはあるといつも感じているから、そのことがいつも私の頭から離れないの。全米オープンの前の別のグランドスラムで勝つと思ったかということなら、ウィンブルドンでは勝つチャンスはあると思った。でも、カーバーに打ち負かされた。学ぶ体験をしてきたみたい」

 来たる全仏オープンとウィンブルドンを前に、メンタル的に克服しなくてはならない点にも、大坂は言及している。

「オールコートプレーヤーになれるかもしれないと常に感じてきたの。初出場したグランドスラムはすべて3回戦まで進んだ。一つがっかりしたグランドスラムは、初戦で負けた全仏オープンね。メンタル的には、クレーコートは苦手。クレーコートは苦手だといつも思っていて、実際そんな意識があることを全然受け入れていないから、そこは改善しなければならないわ。同じことはグラス(芝生)コートでも言えるの。プレーヤーが滑ったり転んだりするのを見ているから、グラスコートは少し怖いわ。そこも改善しなければ」

 そして、世界ランク一位を維持していく難しさも感じているようだ。

「世界ランク一位というのは、ちょっと変な気持ち。だって、これまではずっと人を、ランクを追いかけてきたから。ナンバー1でいることがとても難しいことはわかっている。なぜって、人は常に勝つことを期待しているし、プレーヤーは打ち負かしたいと思っているので、試合はいつだってとても激しいものになるからよ」

 世界の期待を一身に集める大坂。4大大会全制覇を目指して、頑張れ!

参考記事:Naomi Osaka says Wimbledon’s grass is ‘a little bit frightening’

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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