Yahoo!ニュース

トランプ暴露本、またも発売! 元大統領特別補佐官は見た トランプ氏が“取り憑かれているもの”

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
2017年4月、宇宙飛行士ペギー・ウィットソン氏とビデオ通話するトランプ氏。(写真:ロイター/アフロ)

 またまた、トランプ氏の暴露本が発売される。いったいこれで、第何弾目の暴露本となるだろう。トランプ氏は政府閉鎖の最長記録を更新し続けているが、大統領について書かれた暴露本の数でも着実に記録を更新し続けている。

 今回の暴露本は『チーム・オブ・バイパーズ トランプのホワイトハウスでの異常な500日』というタイトルで、筆者のクリフ・シムズ氏は、2018年5月まで、ホワイトハウスのコミュニケーション部門に所属、トランプ氏を身近で見てきた元大統領特別補佐官だ。バイパーとは毒蛇という意味であるが、腹黒い人という意味もある。シムズ氏は“トランプ政権は腹黒い人々の集まりである”と言いたいのだろう。

暴露本を書いたトランプ大統領の元特別補佐官、クリフ・シムズ氏と、1月29日に発売される暴露本
暴露本を書いたトランプ大統領の元特別補佐官、クリフ・シムズ氏と、1月29日に発売される暴露本"Team of Vipers"。写真:yellowhammers.com

 早速、アメリカのメディアは、この暴露本の中身を紹介し始めているが、それを見る限り、トランプ氏には、いくつか“取り憑かれているもの”があるように思われる。

1. ケーブルニュース

 トランプ氏がケーブルニュースを頻繁にチェックしているのは有名な話だが、ただ、見るだけには留まらないほどケーブルニュースに取り憑かれているようだ。

 トランプ氏は、遊説のためホワイトハウスでテレビを見ることができない時など、シムズ氏らスタッフにケーブルニュースが自分についてどう報じているかニュース・テロップ(テレビスクリーンの下に記される字幕。コメンテイターの発言要旨などが流される)のスクリーン・ショットをプリントアウトするよう命じていた。ニュース報道を見逃さないためだが、同時に、トランプ氏は人々の視聴法にも注目していたようだ。

「人はテレビをミュートにして見るものだよね。重要なのは、時に美しく、時に汚い言葉なんだよ」

とシムズ氏に話したという。

 トランプ氏はまた、テレビ番組の舞台セットやキャスターのファッション、照明などのビジュアルにも取り憑かれており、トランプ氏に好意的な報道をしているフォックスニュースのグラフィックスを批判。逆に、トランプ氏を常々批判しているCNNやMSNBCのグラフィックスを以下のように褒めていた。

「フォックスのグラフィックスは最悪だ。CNNやMSNBCはずっといい。正直、こんなこと言いたくないが、MSNBCのグラフィックは一番いいよ」

2. 有人火星探査

 自己PRはトランプ氏が実業家としてならしていた頃から取り憑かれていたことだ。火星に人を送り込むことができたら、アメリカだけではなく世界にも威信を示すことができるとトランプ氏は考えているのだろう。

 2017年4月、宇宙滞在累積日数で最長記録を打ち立てた宇宙飛行士のペギー・ウィットソン氏とビデオ通話した際、こう話した。

「私の第1期中か、第2期中には有人火星探査したい」

 つまり、トランプ氏は2020年か2024年までに、有人火星探査をすることを望んでいるのだ。2030年代までは有人火星探査をすることは難しいと言われているので、この発言は当時、トランプ氏のジョークだと受け止められた。しかし、シムズ氏によると、トランプ氏は真剣にそう思っていたようだ。

 ウィットソン氏との通話に先立ち、トランプ氏は、当時、NASAで長官代理を務めていたロバート・ライトフット・ジュニア氏にこうきいたという。

「私の第1期目が終わるまでに、有人火星探査ができないか」

 ライトフット氏はその難しさを説明したが、トランプ氏はあきらめきれなかったのだろう、以下のような提案をしたという。

「でも、有人火星探査をするのに必要なお金はいくらでも出すとしたならどうだい? NASAの予算を青天井にして、君たちが今している仕事はやめて、完全に有人火星探査計画に集中したらできるかな?」

 しかし、ライトフット氏は「そんな条件を与えられたとしても、達成するのは難しい」と言って、トランプ氏の提案をあえなく否定した。

3. 忠誠心

 忠誠心も、トランプ氏が取り憑かれているもののようだ。フェイクニュースを批判するトランプ氏としては、誰が自分に忠誠心を持たずに情報をリークしているのか、誰が自分の“敵”なのか知りたいところだろう。

 シムズ氏は、ある日、トランプ氏に呼び出されて「メディアに情報をリークしているスタッフの名前を教えてくれ。彼らを政権から追放したい」と言われたという。トランプ氏はシムズ氏と話しながら、ホワイトハウスのカードに、シャーピーペンで15名のスタッフの名前を書き出した。そのうち10名は信頼できない“敵”で、5名は信頼できる安全なスタッフだった。トランプ氏は“敵リスト”が書かれたそのカードを常に持ち歩いていたという。

 同著では、トランプ氏が第62代下院議長のポール・ライアン氏に忠誠心を問ったことも明かされている。シャーロッツビル事件(米バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者と反対派が衝突した事件)の際、白人至上主義者だけではなく、反対派にも非があるという問題発言をしたトランプ氏に、ライアン氏は「もっといい対応ができたのではないか」と言い挑んだ。トランプ氏はそんなライアン氏に「なぜ君は大統領に忠誠を尽くせないんだ?」と言ったという。

 こうして書き出して見ると、トランプ氏は、彼自身が人々のことを考える以上に、人々が自分のことをどう見ているのかという自意識過剰な思いに取り憑かれているように思われる。歴代大統領たちが成し遂げられなかったことをして、人々から凄い人物だと思われたい! トランプ氏の中に、そんな巨大なエゴを感じてしまう。

 トランプ氏が今、「国境の壁」の建設に執着しているのも、米国民の安全を守りたいという思いからではなく、巨大なエゴをさらに満たしたいという思いからではないのか?

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事