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メラニア夫人が「どうでもいい」ジャケットを着た本当の理由 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
物議を醸したメラニア夫人の「どうでもいい」ジャケット。(写真:ロイター/アフロ)

 「私はどうでもいいわ。あなたは?」

 そんなメッセージがプリントされたジャケットを着て、不法移民の子供たちが保護されている施設を訪れ、大バッシングされたメラニア夫人。夫人の広報担当者は「隠されたメッセージはない」といって、その場を取り繕ったものの、やはり、あのジャケットには“隠されたメッセージ”があったようだ。

 確かにそうだろう。高価な服を数多く持っているメラニア夫人である。ガーデニングの時でさえ1300ドルもするシャツを着るという彼女が、あえて、39ドルというZARAのジャケットを選んだのには理由があるに違いない。

”Be Best”に反する夫の政策

 その理由について、メラニア夫人に近い関係者が、エンターテインメントニュースサイト“ハリウッド・ライフ”にこう話している。

「メラニア夫人は側近たちのアドバイスに反して、あのジャケットを身につけたんです。あのジャケットは、愛人問題が取り沙汰されたり、“Be Best”という彼女が推進しているキャンペーンとは相反するような政策をとったり、たくさんの恥ずかしい行動を取ったりする夫に対する“小さな反抗”だったんです」

 ”Be Best”とは、メラニア夫人がイニシアティブを取って推進している児童福祉キャンペーンで、ネットいじめから子供たちを守るためにネットのポジティブな使い方を教えたり、アメリカで問題となっているオピオイド系鎮痛剤の乱用を防止したりする活動を主眼としている。メラニア夫人は、いろいろな角度から子供たちを守ろうとしているのだ。5月に始めたばかりの“Be Best”に力を入れているメラニア夫人としては、不法移民の子供たちが親から引き離されて守られていない状況に怒りを感じたのだろう。また、トランプ氏の愛人だったと言われているポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏の件で、夫に対するフラストレーションも溜まっていたに違いない。

 関係者はまた、トランプ氏が思いついた“言い訳”についても言及している。

「トランプ氏はメラニア夫人があのジャケットを着たと知り、怒ったそうです。しかし、彼女としてはトランプ氏を怒らせ、彼に“最大の恥”をかかせるために着た。恥をかかされたと感じたトランプ氏は面目を保つため、彼女があのジャケットを着た理由について、“フェイク・ニュースを流すメディアに向けたメッセージだ”という言い訳を思いついたわけです」

夫への小さな反抗?

 思えば、メラニア夫人は、これまでも、”空気を読めないファッション”で批判を受けてきた。

 例えば、昨年5月、イタリアのシシリ島を訪問した際に着ていた、51000ドル相当のドルチェ&ガッバーナの華やかなジャケットも非難された。51000ドルというと、アメリカの世帯あたりの平均年収であり、訪問したシシリ島の人々の年収はそれよりもずっと低いからだ。

 昨年8月、ハリケーン・ハービーの被害を受けたテキサス州の被災地を訪問した際に、ピンヒールのハイヒールを身につけていたことも批判された。しかし、夫人はそんな批判に懲りることなく、昨年10月、ハリケーン・マリアの被害を受けたプエルトリコを訪問した際もハイヒールを身につけ、再び、バッシングを受けた。

 他にも、昨年9月、子供の飢餓問題も言及された国連のイベントに、3000ドル相当のピンクのドレスを身につけて出席したことも問題視された。

 ふさわしくないファッションで、何度も非難されてきたメラニア夫人だが、今回の関係者の発言を考えると、メラニア夫人はファッションでトランプ氏に恥をかかせることで、夫に小さな反抗をしているのかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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