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トランプ氏が浮気したポルノ女優、関係を持った証拠も所持? ムラー氏“口止め料支払い問題”の捜査開始か

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
ストーミーさんが出演した番組は約2200万人が視聴。(写真:Splash/アフロ)

 トランプ大統領と性的関係を持ったとされるポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんが、CBSの「60min.」というインタビュー番組で、ジャーナリスト・アンダーソン・クーパー氏のインタビューに応じた。

 番組の視聴者数は2008年に行われたバラク&ミシェル・オバマ夫妻インタビューの視聴者数を凌いで過去10年間で最高を記録、約2200万人が視聴した。その数は、2016年に行われたトランプ氏インタビューを約200万人も上回った。全米がストーミーさんの話に注目したのだ。

権力の濫用による隠蔽行為

 今回のTVインタビューで明るみに出たのは、ストーミーさんが、2011年に、インタッチ・マガジンのインタビュー(2011年時のインタビューの内容については、トランプ氏と“不倫”した元ポルノ女優の赤裸々告白 仕事を餌に“セクハラ”するのが“トランプ流”?をご参考下さい)を受けた後、何者かに脅されていたということだ。インタッチ・マガジンは、ストーミーさんにインタビュー後、トランプ氏からコメントをもらおうと問い合わせたが、トランプ氏の顧問弁護士のマイケル・コーエン氏が訴えると脅してきたため、インタビュー内容の掲載に至らなかった(掲載されたのは、コーエン氏がストーミーさんに13万ドルの口止め料を支払ったという問題が発覚した今年1月だ)。

 ストーミーさんが脅しにあったのは、インタッチ・マガジンのインタビューから数週間後のことだった。場所はラスベガスの駐車場。フィットネスのクラスに行こうと車を降りたストーミーさんに、見知らぬ男が近づいてきて「トランプから手を引け。記事にすることも忘れろ」と言ったという。男はまた、ストーミーさんが連れていた娘を見て「可愛いお嬢ちゃんだねえ。お母さんに何か起きたらかわいそうだ」と脅して去っていったという。ストーミーさんは恐怖から、この件を警察に届け出ることはなかった。

 2016年の大統領選挙投票日の直前、ストーミーさんは、トランプ氏との性的関係を口外しないという秘密保持契約をコーエン氏から持ちかけられ、コーエン氏から13万ドルの“口止め料”を受け取った。コーエン氏はトランプ氏のために自分のポケットマネーでこのお金をストーミーさんに支払ったという。しかし、契約書にはトランプ氏の署名がなかったことから、ストーミーさんは、3月6日、契約書の無効化を求める訴訟を起こし、さらにはトランプ氏との関係に関する守秘義務を無効化すれば、口止め料を返還すると申し出た。

 これに対し、トランプ氏とコーエン氏の弁護団は、トランプ氏との性的関係について公言することを禁じた秘密保持契約に違反したとして、ストーミーさんを提訴、少なくとも2000万ドル(約21億円)という信じられないほど高額な賠償金を求めている。公言一つにつき100万ドルという賠償金で、ストーミーさんは少なくとも20回は秘密保持契約に違反したと主張しているのだ。

 アメリカのメディアはストーミーさんの件を“セックス・スキャンダル”と捉えているところが多いが、重要なのは、コーエン氏とトランプ氏が“権力の濫用”により事を隠蔽しようとした可能性があるということだろう。インタビューでは、ストーミーさんの弁護士アベナティ氏も登場し、以下のように訴えた。

これは隠蔽です。コーエン氏と大統領は、ストーミーさんを怖がらせ、黙らせ、脅して、自分たちの支配下に置いたのです。権力者たちが悪党のような振る舞いをしたのです。アメリカ民主主義にふさわしくない行為です

 確かに、口止め料の支払いはもちろん、ストーミーさんに対する脅しと常軌を逸するような高額な賠償金の要求を考えると、コーエン氏とトランプ氏が金や地位という権力を濫用して、ストーミーさんという一個人を虐めているようにしか見えない。

関係を持った証拠あり?

 クーパー氏はインタビューで、ストーミーさんに証拠についても問うた。

 ストーミーさんは、秘密保持契約を結んだ際、写真やテキストメッセージなどトランプ氏と関係を持った証拠となるものを全て提出するよう要求されたからだ。クーパー氏がその証拠を提出したかどうかきくと、ストーミーさんは「今は答えられない」と回答した。

 ちなみに、ストーミーさんの弁護士のアベナティ氏は、ツイッターで、

「一枚の写真が一千語に相当するなら、これは何語に相当する???』

という意味深なツィートとともに、関係を持った証拠となるものが入っていると推測されるCDを公開している。

 

CDにはトランプ氏と関係を持った証拠が入っているのか?
CDにはトランプ氏と関係を持った証拠が入っているのか?

連邦選挙資金法違反を糸口にロシア疑惑に迫る

 ストーミーさんはまた、このTVインタビューで、トランプ氏のお尻を彼が表紙に出ている雑誌で叩いたこと、トランプ氏がメラニア夫人とは別室で寝ていること、また、自分は#MeTooを訴えている女性たちのようなセクハラの被害者ではなくトランプ氏とは合意の上セックスしたことなども明かしている。

 しかし、政治的に注目したいのは、インタビューの終わりに登場したアメリカ連邦選挙委員会元委員長のトレヴァー・ポッター氏の発言だ。コーエン氏の口止め料の支払いついて、ポッター氏は、

「コーエン氏は、トランプ氏の選挙陣営に合法的な上限額を126,500ドルも超える献金をしたという理由で連邦選挙資金法違反になる可能性があります。彼がトランプ氏というクライアントに利するよう口止め料を払ったとしたら、彼は組織的に不法な献金をしたことになる」

と言って、コーエン氏が連邦選挙資金法違反をした可能性を示唆したのだ。

 また、ポッター氏によると、ロシア疑惑の捜査をしているムラー特別検察官が、口止め料支払いの件まで捜査の手を伸ばす可能性もあるという。

 実際、コーエン氏は、ロシア疑惑にも関わっていると疑われており、ニューヨークタイムズ紙によると、FBIは彼を捜査しているという。コーエン氏はトランプ氏のロシアでの商取引に関わっていたからだ。ワシントンポスト紙によると、ムラー氏はコーエン氏絡みの書類提出を要求し、関係者にも事情聴取したという。また、CNNによると、ムラー氏はモスクワでのトランプタワーの建設計画に関わっていた関係者に事情聴取したが、建設計画の交渉のリーダーはコーエン氏だったという。コーエン氏はまた、元イギリス人スパイのクリストファー・スティール氏が書いた“ロシア疑惑文書”の中でも言及されている。

 ムラー氏が口止め料支払いの件を捜査し、そこを糸口に、核心であるロシア疑惑に関する情報を得ようとする可能性は十分にあるわけだ。ポッター氏も、クーパー氏の「検察側としては、誰か(この場合、コーエン氏)にテコ入れして、その人物から実際に関心を持っている情報(ロシア疑惑情報)を得たいところですよね?」という質問に「そうです」と断言していた。

 まずはコーエン氏を連邦選挙資金法違反で起訴し、ロシア疑惑についての情報と引き換えに連邦選挙資金法違反での起訴を取り消すという司法取引が起きるシナリオもあり得るかもしれない。

 ムラー氏は、すでに、女性たちに支払ったとされる口止め料に関する事情聴取も行なったという情報も一部では流れている。ムラー氏は、それを突破口に、ロシア疑惑情報を引き出すことができるのか。捜査の行方が注目される。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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