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“最後の20ドル”で困っている女性を助け、40万ドルを超える寄付金を得たホームレス男性は今 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
アメリカでは、ホームレスの若年化が問題となっている。(写真:アフロ)

 “最後の20ドル”で、ガス欠で困っていたケイト・マックルーアーさんを助け、世界中から寄付金が殺到して話題となったホームレスのジョニー・ボビットさん、覚えていますか? (詳しくは、“最後の20ドル”で女性を助けたホームレス男性 彼の自立支援のために集まった寄付金は30万ドル目前!をお読み下さい)

 現在、どうされているのか気になり、調べてみたら、インスタグラムを始めておられました。写真のビッグスマイルが、今のジョニーさんを物語っているようです。

ジョニー・ボビットさんのインスタグラム

ドリーム・カーや家を購入

 ケイトさんが作ったジョニーさんの自立支援のための寄付サイトには、27日間で、14万人を超える人々から、40万ドル(約4400万円)以上の寄付金が集まりました。

 そして、ジョニーさんは今、最近まで高速道路の高架下で暮らしていたのが信じられないような生活を送っています。携帯電話やコンピューターはもちろん、ジョニーさんにとって“ドリーム・カー”だった1999年型フォード・レンジャー、それに、家まで購入しました。もう、ホームレスではなくなったのです。心の余裕もできたのでしょう、子犬も飼い始めたようです。

 12月19日のインスタグラムには、自宅で写したと思われる、チキンの着ぐるみを身につけたジョニーさんの写真も投稿されています。

チキンの着ぐるみを着て楽しそうなジョニーさん

 CNNによると、ジョニーさんはコンピューターを購入後、真っ先に、寄付サイトで支援してくれた人々に感謝の言葉を伝えたそうです。

「これまで、僕に親切と愛を与えてくれて、とても感謝しています。この経験から得た気持ちは言葉にできません」

と。

 また、philly.comのインタビューでは、

「3週間前まで、私はフィラデルフィアのストリートでホームレスをしていました。希望は全然なく、未来がどうなるかもわかりませんでした。ストリートでホームレスをしていたことは決して後悔していません。正直、ホームレス経験だけが、実際に、私の人生を変えたのです。これからは、すべてが変わっていくでしょう」

と語っています。

 ジョニーさんがホームレスになったのは、ドラッグ中毒になったのが原因でした。そのため、彼は大切なものをすべて失いました。救急隊員という仕事や家、ボート、そして、最愛の婚約者まで。ドラッグをやめることはできたものの、仕事があると言われて行ってみたフィラデルフィアでは仕事がなく、再び、ドラッグに溺れて、ホームレスとなったのです。

 今年7月、ヘロインを購入した軽罪で有罪となり、1年間の保護観察期間中の身であるジョニーさんは、まずはヘロイン絶ちの治療をし、先々は、大学に戻って勉強したいということです。

新たな旅が始まった

 ケイトさんはボーイフレンドのマークさんとともに、今も、ジョニーさんの生活を助けています。寄付金の管理も任されているようです。ジョニーさんのために、二つの信託ファンドを設け、一つは、ジョニーさんの引退生活用のファンドにしています。ジョニーさんの夢は、引退後、田舎のキャビンで暮らし、ささやかな土地を買うこと。

 しかし、ケイトさんはジョニーさんを永遠に助け続けるつもりはありません。そこは、タフ・ラブ、「今度ガードレールのところであなたを見かけたら、知らないふりをするわよ」と“厳しい愛”で見守ろうとしています。ジョニーさんに一人でも強く生きて行けるよう変わってほしいと願っているからです。そして、“セカンド・チャンス”が与えられたジョニーさんは変わることができると信じています。

 ケイトさんの期待に応えるよう、自立を目指して変わろうとしているジョニーさんですが、変わらないものもあります。今も、同じホームレス時代のジーンズを身につけ、無駄使いはしていません。ホームレス時代に、同じホームレスの友人たちと、ケイトさんからもらったものをシェアしていたように、寄付金で、ホームレスの友人や、身障者となった退役軍人のための寄付サイトを立ち上げた小学生の支援もしています。

 ジョニーさんからケイトさんへ、ケイトさんからジョニーさんへ、そしてジョニーさんから助けを必要としている人々へ、親切の “Pay It Forward”は広がっています。

 ジョニーさんのインスタグラムのニックネームは、jonneys_journey. 新たな旅を始めたジョニーさんを、これからも見守って行きましょう。

 ジョニーさんに、そして、皆様に、素晴らしい新年が訪れますように!

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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