核兵器専門家が試算! 原発が北朝鮮の核攻撃を受けたら、どれほどの放射性物質が拡散するのか?

(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、米韓は市場最大規模の合同空軍演習を開始し、朝鮮半島での緊張は高まるばかりだ。

 昨年『帝国の参謀』(日経BP社刊)を上梓した元ペンタゴン勤務の軍事アナリスト、アンドリュー・クレピネヴィッチ氏は、筆者のインタビューで「日本が北朝鮮の最大のターゲットになる可能性は高い。北朝鮮が核ミサイル数個を含む四十発のミサイルを同時に発射する作戦(“ヘイスタック攻撃”と呼ばれている)で日本を攻撃してきた場合、どのミサイルに核弾頭が搭載されているか把握できないため、全てのミサイルを迎撃しなければならなくなるが、それは非常に難しい」と話した。

 同時に発射された多数のミサイルで日本が狙われたらどうなるのか? また、それが原発に命中したらどうなるのか? NPO“憂慮する科学者同盟”のシニア・サイエンティスト、エドウィン・ライマン氏に話を聞いた。ライマン氏は、核兵器政策、核物質、核テロリズムを専門に研究しており、『実録 FUKUSHIMA アメリカも震撼させた核災害』(岩波書店刊)という著書も共同執筆している。

核兵器は少数でも、原発を攻撃すればインパクトは甚大

ーー北朝鮮が核兵器で原発を攻撃するという戦略は考えられますか?

北朝鮮にある核兵器の数はまだ少数(ある非機密情報の推定では12~20個)です。しかし、少数でも、原発を攻撃すれば、それにより生じるインパクトは非常に大きい。そのため彼らは、核兵器で原発を攻撃するという戦略は、実践的にも経済的にも効力があると考えているかもしれません。

ーー北朝鮮の核兵器が原発に落とされたら、どういう事態が生じるでしょうか?

そもそも、核兵器は、より多くの放射性物質を降下させる目的で開発された兵器です。核兵器は、それが与えるインパクトも距離的により拡大するように作られてきました。そのため、核兵器が原発に落とされたら、放射性物質はより広域に拡散し、汚染もより長く続くことになるでしょう。

核兵器の場合、まず、破壊的ダメージは爆発で生じる圧力により引き起こされます。さらに、熱で火災も起きます。爆発や熱によって死傷者が出るのはもちろん、放射性物質を大量に浴びたことで亡くなる人も出て来るでしょう。

原子炉と比べた場合、核兵器には、核分裂を起こす核物質がわずかな量しか含まれていないため、それにより生まれる核分裂生成物も比較的少量です。例えば、150キロの核爆弾の場合、10キロのプルトニウムとウラニウムが核分裂を起こします。一方、原子炉の中では、1日1~3キロもの核分裂が起きています。つまり、原子炉内の方が、はるかに多くの核分裂が起きているのです。1日でこの量ですから、1年間では非常に多くの核分裂が起き、それにより多くの核分裂生成物が原子炉の炉心の中に蓄積されているのです。

そのため、原子炉にミサイルが落とされると、内部に蓄積されていた非常に多くの核分裂生成物が100%気化し、半減期の長い放射性物質が、福島第一事故の時以上に降り注ぐことになります。

使用済み燃料も破壊される

ーー具体的には、どれほどの放射性物質が拡散されると予測されますか?

原子炉だけ取ると、福島第一原発事故の10倍の量の放射性物質が拡散することが推測されます。福島第一原発事故の際、原子炉から気化して拡散した放射性物質は10%以下だったのですが、ミサイルで破壊された場合、100%気化することになるからです。

また、各原発には、使用済み燃料プールもあり、そこにある放射性物質も100%気化することになります。使用済み燃料プールからは、福島第一原発事故の12~15倍の放射性物質が拡散されると推測されます。

ーーそれでは、避難地域は広域になりますね。

福島第一原発の場合は、40キロ圏内の人々が避難しましたが、私の試算では、原子炉から100%放射性部物質が放出されて、福島第一原発事故の10倍の規模の拡散となった場合、150キロ圏内の人々が避難しなければならなくなります。また、放射性物質自体は200~300キロ圏に拡散すると予想されます。

中でも、原子炉の中にある半減期の長い放射性物質の拡散が問題になります。福島第一原発事故から6年たった現在でも、帰宅困難な人々がたくさんいますが、原発が核攻撃された場合、居住禁止区域はさらに広域になるでしょう。また、セシウム137という半減期の長い放射性物質が長く残存し、土地も長期間使用できなくなると思います。

ーー他にも懸念されていることはありますか?

使用済み燃料が保管されている場所が狙われることを懸念しています。大量のプルトニウムがあるからです。特に、「六ヶ所村」には3000トンもの使用済み燃料が保管されています。これは通常の原子炉にある使用済み燃料の10倍の量です。東京からあまり遠くない「東海村」にも数トンのプルトニウムが保管されているし、高速増殖炉「もんじゅ」にも大量のプルトニウムが保管されています。プルトニウム保管施設に核兵器が落とされると、原子炉以上に大変な事態となるのです。

プルトニウム保管施設が攻撃されたら

 プルトニウムが大量に保管されている施設が攻撃を受けたらどうなるのか。アメリカでは、テキサス州にあるパンテックス工場に、解体された核兵器から除去されたプルトニウムが保管されている。この工場が核攻撃を受けることを懸念していた人物が、自身も核兵器の設計に関わったセオドア・テイラー博士だ。テイラー博士は、1997年に、NPO“センター・フォー・ディフェンス・インフォーメーション”のインタビューを受けた際、以下のように話していた。

ナレーター:原子炉は簡単にはターゲットにはならないでしょうが、爆撃された場合、壊滅的な状況になるでしょうね。

テイラー博士:原子炉が、通常の爆弾、特に徹甲弾で爆撃されると、非常に大型の水爆が落とされた場合と同じ規模で放射性物質が風下に拡散するでしょう。大陸規模ほどの拡散にはなりませんが、州規模には拡散されます。

ナレーター:テイラー博士が懸念しておられるのは、米国エネルギー省が核弾頭を解体しているテキサス州アマリロにあるパンテックス工場ですね。解体された兵器から除去された核物質が保管されていますから。

テイラー博士:そこでは、中型の核兵器で爆撃された際に生じる弾孔内に収まるような範囲に、何十トンものプルトニウムが保管されようとしているのです。そこが爆撃を受けると、プルトニウムはすべて気化してしまうでしょう。それにより、アメリカの東半分とまでは行かなくても、少なくとも2~3州の住民は避難を求められることになると思います。爆撃される可能性は低いものの、爆撃された場合、その被害は甚大なものになるのです。

 パンテックス工場があるテキサス州は日本の国土の約2倍の面積がある。この工場が攻撃を受けた場合、2~3州がプルトニウムに汚染されるということは、日本のプルトニウム保管施設が核攻撃を受けた場合、汚染はどこまで広がるのか。日本政府はこのような事態に備えた被害想定をしているのだろうか?