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25万人の子どもが選んだ最強の本は!? 『ざんねん』ヨシタケ『銭天堂』『おしり』『ぼくら』『鬼滅』…

飯田一史ライター
YouTube動画『小学生がえらぶ!”こどもの本”総選挙』ベスト10結果発表より

「小学生がえらぶ! “こどもの本”総選挙」は全国の小学生に「今まで読んだなかで1番すきな本」に投票してもらう企画。

第2回の投票総数は25万3399票。前回は12万票だったのでおよそ倍の投票があったことになるが、はたして結果はどうなっただろうか?

発表されたベスト10を見ていきたい。

第10位 原作:吾峠呼世晴、著:矢島綾『鬼滅の刃 しあわせの花』(集英社ジャンプJブックス)。

『鬼滅の刃』人気が小学生まで及んでいることがよくわかる結果に。小学生男子はなかなか小説を読まないが、マンガのノベライズが活字への入り口になっている。短編集仕様のため、朝読の5分10分での読書にも向いている。

参考:『鬼滅の刃』ノベライズ100万部突破で注目 JUMP j BOOKS編集長が語る、公式スピンオフにかける熱意

マンガのノベライズが300万部!? 集英社ジャンプジェイブックスが破格のレーベルである理由

第9位 宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川つばさ文庫)。

35年前に書かれたロングセラーが、前回の第8位にランクイン続いて今年もベスト10入り。

結果発表回の動画では「僕もやってみたい」とプレゼンターの小学生が語っていたが、ぜひ小学生の子どもだけでバリケードをつくって秘密基地ごっこを楽しんでほしいと思う。

参考:累計2000万部突破!宗田理『ぼくらの七日間戦争』シリーズが30年以上子どもに読み継がれる理由とは?

第8位 トロル『おしりたんてい ラッキーキャットはだれのてに!』(ポプラ社)

前回も第5位『おしりたんてい かいとうVSたんてい』、第6位『おしりたんてい いせきからのSOS』にランクインした人気シリーズの新作がランクイン。現在TVアニメも放映中。著者のトロルはオリコンの作家別年間売上ランキングでは2年続けて1位になっている。

参考:『おしりたんてい』は“幼児でも楽しめるミステリー” 担当編集者が語る、大ヒットキャラの誕生秘話

『おしりたんてい』に小学生たちがこんなに夢中になる理由

==第7位 今泉忠明監修『おもしろい! 進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典』(高橋書店)

第6位 今泉忠明監修『続々ざんねんないきもの事典』(高橋書店)

第5位 今泉忠明監修『続ざんねんないきもの事典』(高橋書店)==

前年は『ざんねんないきもの事典』が1位、『続ざんねんないきもの事典』が第4位。言わずとしれたシリーズだが、圧倒的な人気。

第4位 廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(偕成社)

第1回では9位にランクイン。藤子不二雄A作品を思わせるなかなかこわい内容で、小学生が読者だからといって手加減していないのだが、そのスリリングさと、ひみつ道具のような効果を持つ「ふしぎ駄菓子」の魅力によって、非常に熱い支持を集めている。

第65回学校読書調査「これまでに読んだ本の中でいちばん好きな本」(「学校図書館」2019年11月号掲載)小学女子部門でも第2位にランクインしている。

参考:「銭天堂」シリーズ90万部、非日常空間・駄菓子屋の魅力

==第3位 ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)

第2位 ヨシタケシンスケ『あるかしら書店』(ポプラ社)==

第1回もそれぞれ第3位と第2位と、まったく同じ結果に(昨年は9位に『りゆうがあります』もランクインしていたが)。

ヨシタケ作品は子どもにも大人にも根強い人気を誇り、毎年複数冊新刊が発表されているが、『りんごかもしれない』と『あるかしら書店』が小学生には特別に支持されている。一方的に読むだけでなく、自分でも想像の翼を広げられる楽しさが人気の理由だと思われる。

参考:ヨシタケシンスケの絵本が小学生にも大人にも「驚異的にウケる」秘密

第1位 今泉忠明監修『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)

なんと2連覇を達成。シリーズ全作がベスト10にランクイン。

あまりに強すぎて、次回も開催する場合にはこのシリーズをまとめてひとつの扱いにするか殿堂入りさせないと、またほとんど同じ結果になってしまうのではないかと思えてしまうくらいだ。

「児童書ではロングセラーが強い」とよく言うが、第1回と第2回のベスト10の並びを見ると、『鬼滅の刃』を除くと入れ替わりがない。

もちろんここ10年以内に生まれた作品も少なくないのだが、いったん人気が軌道に乗った作品は落ちにくいようだ。

2年連続でランクインした児童書は、新しい「定番」として2020年代を生きる子どもたちに読み継がれていくに違いない。

ライター

出版社にてカルチャー誌や小説の編集者を経験した後、独立。マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャー、出版産業、子どもの本、マンガ等について取材&調査してわかりやすく解説・分析。単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』『ウェブ小説の衝撃』など。構成を担当した本に石黒浩『アンドロイドは人間になれるか』、藤田和日郎『読者ハ読ムナ』、福原慶匡『アニメプロデューサーになろう!』、中野信子『サイコパス』他。青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒、グロービス経営大学院経営学修士(MBA)。息子4歳、猫2匹 ichiiida@gmail.com

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