何を言ってるのかわからねーと思うが…『黒子のバスケ』ノベライズのコミカライズが100万部売れてる件

集英社JUMPj BOOKS編集長・浅田貴典氏(撮影:「新文化」編集部・冨田薫)

集英社JUMP j BOOKS(ジャンプジェイブックス)編集長・浅田貴典氏、副編・島田久央氏インタビュー第3弾。週刊少年ジャンプ編集部にて『ONE PIECE』『BLEACH』などを立ち上げた編集者・浅田氏が2014年春にj BOOKS編集長になったあとの改革について訊いた。

全3回。部署創立から現在までの大まかな流れを語った第1回はこちら。編集間&販売間の連携の妙が明かされた第2回はこちら

■週刊ジャンプでの連載終了後も小説が刊行され続ける『NARUTO』

――浅田さんが編集長になられて、部署として2015年度が過去最高売上になったそうですが、その背景が知りたいので、編集長就任後に何か変えたこと、始めたことがあれば教えてください。

浅田貴典:j BOOKSとして実は初めてジャンプフェスタに出典しまして、『NARUTO』や『僕のヒーローアカデミア』のイラストコンテストをpixivさんで開催して、そこで発表したりですとか……認知の機会を増やすことは大小問わず色々やっています。

タイトルで言うと、一番はやっぱり『NARUTO』の連載終了後に秘伝シリーズを立ち上げたことでしょうか。実は僕がまだ週刊ジャンプの副編だったときから作家の小太刀右京さんなどにお願いして『NARUTO』の世界観設定を整理していただいたんです。それまでは「連載が終わったタイトルは動かない」という判断だったんですけれども、『NARUTO』の終わり方を見ると、あれだけ魅力的なキャラクターが多い作品ですから、いろんな人気キャラの後日譚が絶対に求められるはずだと思いまして。連載が終わったあとすぐから連弾でいけると踏んで、岸本先生に提案したんです。

――それがアニメになるというのもすごい話ですが……そのことはまた後で少しうかがいます。

浅田:あとは僕が来てからというと、タイトルの拡張ですね。それまでの「週刊少年ジャンプ」、「ジャンプSQ.」「ヤングジャンプ」以外にも手を広げました。「ココハナ」連載の『きょうは会社休みます。』の小説版ですとか、他社タイトルではゲーム『ブレイブフロンティア』、アニメの『SHIROBAKO』などがあります。

ちなみに『きょうは会社休みます。』のノベライズには「ジャンプノベル」とか「j BOOKS」というのが一言も入っていません。奥付にすらないので、われわれが手がけていると気づかない方も多いと思います。まあ、そこはどうでもいいんです。ファンにとって良きものであれば

■ジャンプ編集部と物理的な距離を近くしたことから生まれる新企画

――そのスタンスはやはり徹底しているんですね。あの……浅田さんが編集長になられてから、刊行点数自体が増えたのではないかと思うんですが。

浅田:……はい。すいません。すごく反省しています。僕が来る前の年度は刊行点数が22冊だったんですが、僕が就任したあと、あれもできるこれもできると増やしていたら48冊まで増えまして。おそるべきことにスタッフは増えていないんですが……。ふと我に返って「これはまずい。ブラックすぎる」と本当に反省してグッとブレーキをかけたんですが、小説は企画してからかたちになるまで時間がかかることもあって、急には止まれませんでした。

なので2016年は33冊です。本当にすみません! ただ「これは人が足りない」と強く認識しまして、人材募集します。ご興味ある方、振るって応募ください!

――編集部の方は、浅田さんや島田さんのようにマンガの編集を経験してから来た方が多いんですか?

島田久央:そういう人間もいますし、新卒でj BOOKSに配属、という人間もいます。

浅田:ただみんな、メシを食いながら何を話すかといえばだいたいマンガのこと、というくらいマンガ好きですね。もちろん小説もめちゃめちゃ読んでいますし。

あ、2年半前に僕がj BOOKSの編集長になったあとでしたことと言うと、それまではジャンプ編集部とは物理的に距離が離れていたんですけども「すぐ横に引っ越しさせてくれ」とお願いして、隣に引っ越しをしました。連携が大切だと思ったので。

島田:距離を近くしたのはよかったですね。「こういうのってどうですか?」ってどちらからともかく気軽に言える関係なので。そのあとでしたっけ?『殺たん』は。

浅田:そう、『暗殺教室』の学習参考書『殺たん』『殺すう』をシリーズとして動かしはじめました(※第1弾は2014年8月4日発売。16年12月現在で累計48万部)。あれはもともと週刊少年ジャンプの担当編集者から出てきたアイデアをキャッチアップしたものなんです。

ジャンプ編集部・齊藤優:作家の松井(優征)先生も出したいと思っていたみたいで。そしてたまたま担当が開成、東大の超エリートで参考書マニアだったという……(笑)。

浅田:むかし開成が甲子園でベスト8になったことがあって、『「弱くても勝てます」』という本になっているんですが、そのときの開成高校野球部出身です。受験勉強は高3の秋から始めたそうなんですが、ストレートで受かったと。

島田:いやあ、本の校正をしているときも地頭がよくて、びっくりしましたね。

浅田:だけど『殺たん』は学習参考書だから、「間違いがあっちゃいけない」というプレッシャーは他の本の比じゃなかった。校正が大変すぎて、終わった瞬間に気を失ってました。気づいたら2時間経っていたんですよ。

――(笑)。

浅田:校了が終わったあと気絶したのは『殺たん』が初めてでしたね(笑)。

■マンガのノベライズをコミカライズしたりアニメにしたり……ってどういうこと???

浅田:ほかに幅を広げたという意味では、『黒子のバスケ』や『食戟のソーマ』『僕のヒーローアカデミア』などのノベライズのコミカライズを始めたことですね。「ジャンプ+」などで連載しているんですけれども。

――マンガ原作の作品を小説にして書いた外伝的なエピソードを、今度はマンガにする、と。えーと、知らない人からすれば「何だそれは?」という話だと思いますが……。

浅田:小説のコミカライズをコンスタントにしていくこと自体は、ウェブ小説を書籍化しているアルファポリスさんがやっているようなことをやっているだけで、特別なことをしているつもりはありません。

コミカライズだけでなくてドラマCDにしたものもありますし、小説『NARUTO』秘伝シリーズはアニメにもなります。来年の2月までにかけて「サスケ真伝」「シカマル秘伝」「木ノ葉秘伝」が放映されます。

ただ、小説のコミカライズがこんなに売れるとは思わなかったですね。『黒子のバスケ Replace PLUS』は1巻25万部くらい、累計で100万部を超えていますから。

齊藤:『黒子』に関して僕もわからなかったのは「アニメの劇場版の小説版を出す」と聞いて「え? でも劇場版は総集編だから、それなら原作のマンガを読むんじゃないの?」と思ったんです。ノベライズをやる意味が正直わからなくて。……でも重版がかかってるんですよね。

島田:来春の新作劇場映画公開まで、『黒子』がずっと出続けていること自体が、ファンにとってはいいことなんです。

浅田:『黒子』の劇場版もそうですけど、最近は公開館数少なめ、公開期間短めという劇場アニメが多いですから。それに加えて、お小遣いの問題もありますし、映画を観たりDVDを買える子たちばかりではない。手ごろな追体験ができるものが必要なんですよ。

マンガを軸にするにしても、小説、アニメ、ドラマCDのお客さんはそれぞれ違います。

ただ、小説は入れられる情報量がものすごく多いので、ここから展開するのは効率がいいのでは、と思っています。それに、マンガは表情から心情を読み解かせるメディアですが、小説は心を描写するのにいいメディアで、そこを活かせばマンガとは違った味付けで楽しめるものになるな、というのがマンガから小説に移ってきてみての実感です。

■オリジナルについても、仕掛けていく

――ノベライズだけでなくオリジナルタイトルも刊行されていますが、エブリスタさんと組んで新人賞を実施したり、公式サイトやアプリ「ジャンプ+」で小説を無料公開したりしていますよね。

浅田:ストリエさんやpixivノベルさんとも組んだりしながら、とにかく認知を図っています。オリジナルタイトルを刊行するレーベルとしての知名度は十分ではありませんが、逆に言えば客筋が決まっていませんので、作家さんと編集が「ここに刺さる」と踏んだタイトルはやっていくというのが方針です。

うちから刊行した維羽裕介先生の『スクールポーカーウォーズ』が『女王のポーカー』と改題して11/29に新潮文庫nexに文庫落ちしました。それから、ジャンプホラー賞を受賞した坊木椎哉先生は日本ホラー小説大賞も受賞していまして、『この世で最後のデートをきみと』をKADOKAWAさんの『きみといたい、朽ち果てるまで』と11/26に同時刊行したり、オリジナルもいろいろと動かしていきたいと思っています。

――今後の動きについて最後に教えてください。

浅田:詳細は追って発表していきますが、来年2017年は『ONE PIECE』が連載20周年、『ジョジョの奇妙な冒険』が30周年、再来年2018年が「週刊少年ジャンプ」50周年、j BOOKS25周年ですので、周年企画を予定しています。

先ほど申しましたが、小説はすべてのメディアミックスの源流になる力があるメディアだと感じていますので、オリジナルも含め、積極的にコミカライズ、映像化なども成立させていきたいと思っています。本をベースにどれだけ広げられるかを考えていきたいなと。

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(本稿は出版業界紙「新文化」と共同で取材を行ったものです)

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