5階建てビルなら79日で建設?! 巨大3Dプリンターのカタログで性能を調べてみた

建物を丸ごと建設する巨大3Dプリンター「D-SHAPE」の活用イメージ

12月20日に「世界初! 3Dプリンターで製作した実物の橋がスペインで完成」という記事を掲載したところ、多くのアクセスをいただきました。

スペインの歩道橋と開発者のエンリコ・ディニ氏(写真:Enrico Dini)
スペインの歩道橋と開発者のエンリコ・ディニ氏(写真:Enrico Dini)

筆者はこの記事に登場した「D-SHAPE」という巨大3Dプリンターの最新カタログを独自に入手したところ、この3Dプリンターのサイズや性能、現場での使い方が明らかになりました。

巨大3Dプリンター「D-SHAPE」のカタログ
巨大3Dプリンター「D-SHAPE」のカタログ
「D-SHAPE」の外観
「D-SHAPE」の外観

カタログによると、この巨大3Dプリンターは建築物を床、壁、天井まで丸ごと造形できるという点では、世界唯一とのことです。

英国のモノライト社(MONOLITE UK LIMITED)が中心となって販売しており、UAEや米国、イタリアには代理店があります。

造形に使う材料は、直径0.1mm~4mm(最大で20mmも可)の粘土や砂、砂れき、ポルトランドセメントなどの土石材料のほか、目的に応じて植物繊維やグラスファイバーなども混ぜて使えます。

造形には砂やセメント、グラスファイバーなど様々な材料が使えるそうだ
造形には砂やセメント、グラスファイバーなど様々な材料が使えるそうだ

造形の手順は、3次元CADで造形する建物などの3Dモデル作り、CAMソフトで高さ方向に5mm程度の厚さでスライスします。

そのデータをパソコンからD-SHAPEに送ると、スライスした厚さに1層目の材料を敷きならします。

そして、建物の壁や床などになる部分に「インクバインダー」と呼ばれる固化材をノズル(サイズによって10本から1000本まで)からまいて固める、ということを何層も繰り返して行います。

敷きならされた材料の上に固化材をまくノズル
敷きならされた材料の上に固化材をまくノズル
造形された建物の部材
造形された建物の部材
3Dプリンターで建物部材のブロックを作り、組み立てることもできる
3Dプリンターで建物部材のブロックを作り、組み立てることもできる
家具などを建物と一体化して丸ごと作ったイメージ
家具などを建物と一体化して丸ごと作ったイメージ

3Dプリンターの大きさはユーザーのニーズに応じて様々なパリエーションを提供でき、造形できるサイズは3m×3mから24m×24mまで、高さも1階から5階建てまで対応できるそうです。

工事現場や工場での造形作業中は、3Dプリンターが正常に動作しているかや造形の様子を監視する作業員を配置します。1シフト当たりの人数は10m角の造形を行う場合で3人、24m角の場合は8人が必要とのことです。この当たりは今後、自動化の余地がありそうですね。

建物の造形にかかる日数は9m四方の平屋建ての場合は5日、24m四方で5階建ての場合は79日となっています。

ユーザーのニーズに応じて、縦、横、高さは様々なサイズを提供できる
ユーザーのニーズに応じて、縦、横、高さは様々なサイズを提供できる

3Dプリンターで造った建物や構造物は、無筋なのでどうしても強度が不足すると思う方もいるでしょう。

その点も考慮されていて、床部分を造形する時は、途中で一時、ストップして鉄筋や金網を敷き、その上から造形を続けるという方法で鉄筋入りの床を作ることができます。

また、壁や柱には縦穴状の空洞を作っておくと、造形終了後に縦方向の鉄筋を後付けして、補強することも可能です。

気になるお値段ですが、D-SHAPE開発者のエンリコ・ディニ氏によると、サイズによって24万ユーロ(約2900万円)から240万ユーロ(約2億9000万円)とのこと。

日本では、国土交通省が3Dモデルデータを使って現場の生産性を高める「i-Construction」という政策を2016年度から強力に進めており、コンクリート工事もその主要なターゲットになっています。

このような3Dプリンターを使うと、手間ひまかけて設置と撤去を行っている仮設の型枠が必要なくなるので、コンクリート工事の生産性向上に一役買うかもしれませんね。