ムダを利益に変える!工事現場の3D革命が進行中

UNIGEN岐阜工場の中には配管や設備がぎっしり(資料:新菱冷熱工業)

岐阜県揖斐郡池田町に今年完成したUNIGEN岐阜工場は、インフルエンザワクチンの原液を製造する1万4000m2の大規模な工場です。

工場の内部や天井裏には配管や空気を送るダクト、電気配線などがぎっしり。これまでの建設業の常識では、この規模の工事では「3割の手戻り」、つまり工事のやり直しが予想されていました。

しかも、この工事では、工期がわずか10カ月しかなかったため、ほとんどの工事関係者は「こりゃ、予定通りに完成させるのは無理だな」と思っていました。ところが大方の予想に反して、この工事はほとんど手戻りなく、予定通りの工期で完成したのです。

その秘密は、工事を担当した千代田テクノエースや新菱冷熱工業の技術者が建物の構造や配管、ダクトなどをコンピューター上で「ビム(BIM)」という3次元モデルとして再現し、コンピューターの中で「バーチャルな工事」を事前に行っていたからです。

当然、初めのうちは配管が通るはずのところに鉄骨があって通れなかったり、ダクトのど真ん中を配管が貫通していたりと、あちこちで問題がありました。工事関係者はこうした「バーチャルな手戻り」を見つけては直す、という作業を20回以上も繰り返しました。

また、完成後のメンテナンスも考えて、人間がちゃんと通れるかどうかかもバーチャルな工場内を「ウォークスルー」して確かました。

バーチャルな工場内を歩き回るテスト(資料:新菱冷熱工業)
バーチャルな工場内を歩き回るテスト(資料:新菱冷熱工業)

そして、「もう、問題はなくなった」と確信した時点で、3Dモデルの最終版と同じように現場で工事をしたところ、現実でも手戻りがほとんどなかったのです。

製造業で「シックスシグマ」レベル(10億分の2)の不良品率を管理する技術者の方などは、「えー、3割もやり直し?ちょっとひどすぎない」と思われるかもしれません。

しかし、建設業の仕事は一品生産なので、新しい建物を建てるごとに「プロトタイプ」を造っているようなものです。しかも、建設プロジェクトに参加するメンバーは設計会社のほか、元請けのゼネコン、下請け、孫請け、ひ孫請け・・・の専門工事会社、そしてメーカーなど、その都度、顔ぶれが変わるのです。

建設業の利益率は、ほんの数パーセント程度。下手したら赤字になることも珍しくありません。3Dモデルによるバーチャルな工事を事前に行うことで、3割の手戻りが利益に変わると、経営的にも大きいですね。

建物の発注者にとっても、これまでは完成してからでないとどんな建物ができるのか分かりませんでしたが、3Dモデルによって家電やクルマと同様に「バーチャルな完成品を見てから買う」ということができるようになってきました。

こうした3D革命により、建設業は製造業に近づいていると言ってもよいでしょう。

手戻りなく、予定通りに完成したUNIGEN岐阜工場(写真:新菱冷熱工業)
手戻りなく、予定通りに完成したUNIGEN岐阜工場(写真:新菱冷熱工業)