大絶賛の嵐! 恵比寿「手打 親鶏中華そば 綾川」から学ぶマーケティング力
東京・恵比寿に昨年の12月23日オープンした新店「手打 親鶏中華そば 綾川」。
開店から1週間で大行列を作ったという話題店だ。
日本最大級のラーメン専門クチコミサイト「ラーメンデータベース」では88.29ポイントを獲得し(2月20現在)、早くも恵比寿エリア4位につけている。
オープン以来、ラーメン業界関係者が口々に大絶賛している店だ。
まだ今年は始まったばかりだが、年末の賞レースに必ず顔を出してくるだろうと言われている。
筆者も遅ればせながら行って食べてみたが、やはり驚きの連続だった。そのラーメンの完成度のみならず、マーケティング力に優れ、非常に独創性のあるお店なのだ。
ご当地ラーメンではないが香川の「親鶏」を“ご当地風”にフィーチャー
まずはこの店のコンセプトにはストーリーがある。
「讃岐うどん発祥の地であり親鶏の名産地である香川県綾川町出身のチームが、東京のラーメン職人と出会い生まれた、唯一無二の中華そば」
香川県のご当地ラーメンではないものの、香川名物の“骨付き鶏”で知られる「親鶏」をフィーチャーすることで、“ご当地風”なラーメンとして見せている。
スープやチャーシューに若鶏を使う店は多いが、親鶏を使うところは珍しい。ただ、それだと「唯一無二」ではない。これを「親鶏中華そば」「綾川」という“ご当地風”な名前で売り出すところに「綾川」の戦略が見える。
国産親鶏と鶏油をふんだんに使った黄金のスープは、旨味が強く、見た目以上にパンチがあり、また食べたくなる味わいだ。
ミシュランガイドが近年注目する手打ちの手切り麺
「綾川」の麺は「青竹手打ち麺」だ。
早朝から青竹を使って手打ちをし、一昼夜熟成させた後、手切りすることで、極太の縮れ麺が出来上がる。製麺機では出せない手打ちならではのモチモチとした食感やのど越しが実に美味しい。
手打ちは古くから続くご当地ラーメンでよく見られる麺の製法だが、近年再び注目が集まってきている。
特に「手打式超多加水麺 ののくら」(亀有)、「純手打ち 麺と未来」(下北沢)がミシュランガイド東京に掲載されたことで、そのトレンドに拍車がかかっている。
「綾川」はそのトレンドを掴みながら、古くから続く手打ち麺を取り入れることでより“ご当地感”を演出することに成功しているのだ。
ネオノスタルジックな雰囲気もトレンドにバッチリ
ラーメンは毎年常に新しいものが生まれ、トレンドが変遷してきているが、昨年から今年にかけてはどことなく懐かしさを感じさせるクラシックなスタイルのラーメンにトレンドが原点回帰している。
昔ながらの醤油ラーメンを今風にアレンジして提供するお店が増え、「ネオノスタルジック」「ネオクラシカル」などと呼ばれるようになった。
「綾川」のラーメンはまさにネオノスタルジック。
新店ながら、古くから続くラーメンのような顔をしていて、それがしっかりと美味い。
ここに「親鶏」「ご当地風」「手打ち」など数々のくすぐるワードが合わさり、「唯一無二」になっているのだ。
今のトレンドをうまく捉えながら、独自の演出でオンリーワンを作りだす。これは確かに今までにはない凄い店だ。
実はこの「綾川」は個人店ではなく、ラーメン以外の飲食店も運営する企業が経営している。これからの資本系のラーメン店も、単なるチェーン店には終わらない新しいラーメン戦争が始まっている。