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コロナ禍のカラオケボックスを救う「二郎系ラーメン」の新たな可能性

井手隊長ラーメンライター/ミュージシャン
「カラオケパセラ 秋葉原昭和通り館」で提供している「パ郎」

新型コロナウイルスの影響で、全国のカラオケボックスが窮地に立っている。飛沫感染を防ぐためにマスク着用が当たり前とされるなか、カラオケの従来のスタイルが疑問視される状況になり、全国では1割程度の店舗が閉店。東京都が8月3日から出していた時短営業要請が9月15日に解除されたものの、今後の復調の動きはなかなか見えない状態だ。

コロナ禍においてカラオケボックスはどう運営していけばいいのか。

株式会社ニュートン(東京都新宿区)が運営する「カラオケパセラ」では、“カラオケを使わない”ルームの使い方を模索している。コンサートの生配信をルームで見る鑑賞会や、ビジネスパーソンに向けてコワーキングスペース代わりに貸すなどしているが、それでも売上はまだまだ厳しい状況が続いており、各店の店長が工夫を凝らしながら様々な企画をトライしている。

秋葉原でしか食べられない「ラーメン二郎」インスパイアメニュー「パ郎」

カラオケパセラ 秋葉原昭和通り館
カラオケパセラ 秋葉原昭和通り館

そんな中、とりわけ特異な取り組みをしているのが「カラオケパセラ 秋葉原昭和通り館」だ。

ここでは、この店でしか食べられない「ラーメン二郎」インスパイアメニュー「パ郎」を提供しているのだ。

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「ラーメン二郎」は港区三田に本店を構えるラーメン店で、濃厚な豚骨醤油スープに極太の麺、その上に盛られる野菜の山に大きな豚肉が特徴の激盛りラーメンの代名詞的な存在である。近年では「ラーメン二郎」に影響を受けた「二郎インスパイア系」が各地にオープンし、ブーム化している。「カラオケパセラ 秋葉原昭和通り館」ではそれをカラオケボックスで提供しているのだ。

「パ郎」
「パ郎」

「カラオケはしないけどラーメンだけ食べに来られる人が多かったですね。女性だと、部屋を借りてゆっくりラーメンを食べて行かれる方もいます」(店長の小林礼雄さん)

コロナの影響でなかなかラーメン店には行けないという声も多い中、ここでは個室でゆっくりラーメンが食べられると話題に。「ラーメン二郎」には怖くてなかなか行けないという人や、人目が気になるという人にもピッタリだ。1階には部屋を借りなくてもラーメンを食べられるスペースも用意されている。

10年前から提供している老舗的メニュー

実はこの「パ郎」、コロナで売上の打撃を受けてから準備したメニューではない。10年前の2010年から存在するメニューなのだ。

「パセラ」では、各店の店長がそれぞれ自分の“色”を出したメニューをラインナップできるという珍しいシステムがある。当時お茶の水店にいた小林店長は、通常出している醤油ラーメンや塩ラーメンだけでなく、大好きな「二郎系」のラーメンをお店で提供したいと提案した。

料理長を「ラーメン二郎 神保町店」に連れて行って二郎体験をさせ、その他のインスパイア店も含め各店の味を研究させた。有名製麺所である菅野製麺所に麺をおろしてもらうなど、メニュー開発は本格化。2010年に「パ郎」はお茶の水店で誕生した。

店長の小林礼雄さん
店長の小林礼雄さん

その後、御徒町店、赤坂店と小林店長の異動に合わせて「パ郎」は店を転々としてきたが、現在は秋葉原昭和通り館に落ち着く。

二郎フリークの小林店長のこだわりで、「パ郎」はことあるごとに味がブラッシュアップされ、クオリティを高めてきた。そのこだわりを聞いてみた。

「化学調味料を徐々に抑えめにして、醤油を引き立たせる感じに仕上げています。

はじめはスープが麺に上手く乗らず、結構苦労しましたが、なかなか美味しい一杯になってきています」(小林店長)

スープに調味料、チャーシューを入れて冷凍保存
スープに調味料、チャーシューを入れて冷凍保存

豚白湯のスープに醤油と化学調味料を合わせ、チャーシューを入れて真空パックして冷凍しておく。麺はパスタ用の茹で麺機を使ってうまく茹でる。モヤシは一杯につき1袋。キャベツもしっかり使うのが小林店長のポリシーだ。上に刻みタマネギを乗せるのは「ぽっぽっ屋」インスパイアだとか。現在の料理長は二郎系のラーメン店出身だという。

麺はパスタの茹で麺機で茹でる
麺はパスタの茹で麺機で茹でる

『二郎』の入門編として使ってもらえるように、万人受けする味にまとめるのに苦労しました。今後は『雷』や『ちばから』のような豚骨が乳化したクリーミー系にもチャレンジしてみたいですね」(小林店長)

フライドポテトの7〜8倍の売上

麺は菅野製麺所の特製麺
麺は菅野製麺所の特製麺

各地にカジュアルに入れる二郎インスパイア系のお店が増えたことで、かつての近づきがたい「二郎」のイメージが薄れ、だんだんとメジャーな存在になってきているのが「パ郎」にとっては追い風だという。

現在の「パ郎」の売上杯数は、コロナ前の今年1月の水準まで戻ってきているという。今回のコロナで激減したカラオケの売上も「パ郎」が一部をしっかりカバーしている。2010年のメニュー化から10年。冷静に考えればラーメン業界では老舗の部類に入るのかもしれない。

カラオケのルームに入らなくても食べられるスペースもある
カラオケのルームに入らなくても食べられるスペースもある

「通常のパセラではフライドポテトが売上1位ですが、うちのお店は『パ郎』がその7~8倍の売上となっているんです。最高で1ヶ月600食出たこともあります。

二郎好きには夢である鍋二郎を体験できる『鍋パ郎』やお持ち帰り限定の『焼きパ郎』も好評です」(小林店長)

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これからのカラオケボックスはカラオケ以外の利用法を提案していかないと厳しい。その中で「カラオケパセラ 秋葉原昭和通り館」の「パ郎」の取り組みはひとつ大きなヒントを示している。

最後に小林店長に好きな「ラーメン二郎」のお店を聞いてみた。

「1位が新代田店、2位が府中店ですね。グネグネとした極太の麺を使っているお店が好きなんです」(小林店長)

※写真はすべて筆者による撮影

ラーメンライター/ミュージシャン

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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