食品廃棄物で飛行機が飛ぶ日 SDGs世界レポート(65)

飛行機雲(写真:PantherMedia/イメージマート)

東日本大震災から10年がたった。10年たってわかったのは、被災者はいまも喪失感にさいなまれているということと、10年後のこの世の中が想像していたのとはだいぶ違っていたということだ。福島第一原子力発電所は「アンダーコントロール」になんてなっていないし、帰宅困難区域はなくなっていない。そして処理済みの汚染水は、地元漁業者の反対を押し切って海に放出されることになった。

2011年、東日本大震災の後の計画停電で銀座は幽寂 経済的打撃は深刻
2011年、東日本大震災の後の計画停電で銀座は幽寂 経済的打撃は深刻写真:アフロ

筆者は、東日本大震災とそれにつづく福島第一原子力発電所の爆発事故で、日本の社会は根本的に変わると考えていた。あの当時、東日本では、電力の供給不足から地域と時間を限定して計画停電をしていた。筆者は、「節電・節約・共助」が持続可能な日本の「新しい生活様式」になると、また、原子力発電所を制御できなかった反省から、電力も太陽光や風力などの再生可能エネルギーへ、そして経済の復興もグリーンなものへと転換していくだろうと考えていた。

しかし、みなさんもご存知のとおり、日本はそうならなかった。被災地と被災者を置き去りに、日本社会は以前からのレールをそのまま進んでしまった感がある。少なくとも「節電・節約・共助」は日本の「新しい生活様式」にはならなかったし(災害時のボランティアは、言葉としても活動としても根づいたと思うが)、グリーンリカバリーも起こらなかった。

それどころか、昨年(2020年)の3月11日には、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と発表し、「3.11」はまたひとつ重たいものを背負わされることになった。米国のジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、WHOのパンデミック宣言から1年間で、世界では1億1,857万人がコロナに感染し、そのうちの263万人がコロナが原因で亡くなっている。

日本がパンデミックの第4波に入ったと言われている中、不謹慎と言われるかもしれないが、今回のコロナ禍は、日本社会に「新しい生活様式」と「グリーンリカバリー」をもたらすことになりそうだ。

しかし、衝撃的な東日本大震災と福島第一原子力発電所の爆発事故で変わらなかった日本社会が、なぜコロナ禍で変わろうとしているのだろう?

100兆円(!)以上のESG投資

その企業の財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)要素も考慮して行うESG投資が、日本でも2016年からの3年間で6倍に急成長しているという(1)。

国連が責任投資原則(PRI)で、生命保険料や年金積立金を預かって投資している企業に、ESGの課題を投融資に反映させることを求めたことが大きいと言われている。

少しうがった見方をすると、生命保険会社や銀行がそれぞれの経営に、国連の持続可能な開発目標SDGs(エスディージーズ)と、温室効果ガス排出削減の国際的な枠組み「パリ協定」への取り組みを入れるとしたら、ESG投資をするしかないということなのかもしれない。

それはともかく、日本生命は2021年4月から、総額で約70兆円にもなるという、保険契約者から預かった保険料を運用する投融資すべてにESGを反映させるという(2)。また、第一生命も約36兆円の保険料の運用をESGを考慮して資産運用するという(3)。この2社だけでも100兆円以上のESG投資になるのだ。

つまり、これからは企業だって、SDGsやパリ協定に沿った経営を行っていないと評価されないし、資金が集まらないということだ。これが10年前の3.11からの復興と今回のコロナ禍からの復興の決定的な違いなのかもしれない。

吹き荒れるジェット気流なみの逆風

今回のコロナ騒動でいちばん割を食った業界のひとつは間違いなく航空業界だろう。新型コロナウイルスの世界規模のパンデミックのため、海外との行き来はおろか、国内での移動も最小限にすることを政府から求められ、どの国のどの航空会社も大幅の減便を余儀なくされている。

さらに、航空業界にはかなりの逆風が吹いていることが、欧州投資銀行(EIB)と市場調査会社BVAの共同調査からわかった(対象:EU27カ国27,700人、期間:2020年10〜11月)。

回答者の74%が、新型コロナによる渡航規制が解除されても、気候変動などの環境問題を理由に、飛行機の利用頻度を減らすつもりであると答えているのだ。その利用頻度については、「常に」と回答した人が43%、「時々」と回答した人が31%という結果だった(4)。

そして、移動が長距離でなければ、飛行機よりも列車を選択すると回答した人が71%もいる。さらに42%は、気候変動への懸念から、二酸化炭素の排出量を最小限に抑えるために、バカンスは自国または近隣の国で取ると答えているのだ。

ドイツ人、フランス人、イタリア人が気候変動のたまえに諦められること(出典:EBI公式サイト)
ドイツ人、フランス人、イタリア人が気候変動のたまえに諦められること(出典:EBI公式サイト)

また今回の調査から、気候変動対策のために、飛行機、肉、新しい服、ビデオ・ストリーミング・サービス、自動車のうち、どれかをあきらめるという選択肢を与えられた場合、ヨーロッパでは飛行機をあきらめると回答している人が最も多いことがわかった。約4割の人が飛行機をあきらめると回答している。

衝撃的だったのは、Netflixなどのビデオ・ストリーミング・サービスよりも、飛行機の優先順位がもっとも低かったということである。同じように温室効果ガスの排出源であっても、自動車は最も必要とされているのだが(5)。

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食品ロス対策や省資源化について、日本の報道は「食料が余る前提」の表面的な内容に偏っています。SDGs世界ランキング上位を占める北欧や欧州はどのような取り組みを行っているのか。食品ロス問題を全国的に広め数々の賞を受賞した筆者が、国際組織から入手する情報を含め、日本メディアが報じない「ここでしか知ることのできない食品ロス問題最新動向」を提供します。

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奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/第一回食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

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