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#EじゃなくてもAじゃないかビール本日発売「スペルは間違えたけど味は間違いなし!」サッポロ・ファミマ

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
2021年2月2日夜中から売り出されたサッポロ開拓使麦酒仕立て(渡辺幸裕氏撮影)

サッポロビールとファミリーマートが共同開発したビール、サッポロ開拓使麦酒仕立てが、ついに本日2021年2月2日、発売した。ファミリーマート限定販売。

先月1月8日には、「LAGER」(ラガー)と書くべきところ、「E」を「A」と書いてしまった(「LAGAR」)ため、発売中止が発表されていた。

LAGERと書くべきところ「LAGAR」と書かれたパッケージ(渡辺幸裕氏撮影)
LAGERと書くべきところ「LAGAR」と書かれたパッケージ(渡辺幸裕氏撮影)

その2日後、1月10日に書いた記事「サッポロさん・ファミマさん、「EじゃなくてもAじゃないか!」キャンペーンはいかがでしょう?」は、予想を上回る膨大な人数の方からアクセスしていただいた。

1月12日には国会議員の竹谷とし子さんが、国税庁と消費者庁に、スペルミスのままでも販売は法的に問題ないことを確認してくださった。

そして1月13日17時に、サッポロビールとファミリーマートの両社から、発売中止をとりやめ、2月2日に発売することが発表された。

1月21日、サッポロビールの高島社長が消費者庁の井上大臣に誤表記を報告した(関係ないが、筆者はこの翌日、食品ロスの政策提言で高島社長が座られた椅子と同じ場所に座った)。

1月31日、ファミリーマートは公式Twitter「おとなファミマ」で、あらためて発売を告知した。

サッポロビールも、ファミリーマートのツイートを引用する形で発売を告知した。

日付が変わると同時に購入・・・

筆者も2月2日には買おうと思っていた。すると、すでに買っている人がいた。一連の記事で紹介した、「#EじゃなくてもAじゃないか」発案者の中森真太郎さんだ。日付が変わる頃にもう購入されていた。どうやら、今日2月2日夕方、広島で放送される番組でも、発売になった経緯が紹介されるらしい。筆者の顔写真データなどもお送りした。

2021年1月10日、Facebookの筆者の投稿にコメントされた中森真太郎さんの書き込みと筆者とのやりとり(スクリーンショット)
2021年1月10日、Facebookの筆者の投稿にコメントされた中森真太郎さんの書き込みと筆者とのやりとり(スクリーンショット)

そして、もうお一人、元サントリー社員で、今回の発売中止が発表された際、筆者の記事をサッポロビール勤務の知人や友人にお知らせし、発売を打診していただいた、渡辺幸裕さんだ。渡辺さんは、日付が変わる直前にファミリーマートにサッポロビールを買いに走っていた。渡辺さんも中森さんも、ご自身の行動で発売がかなったビールが店頭に並ぶのを見て、感慨深い思いだったことだろう。

筆者は今朝9時過ぎに買いに行った。買い占めたら悪いかなと思い、ファミリーマート2軒で、それぞれ小サイズ(350ml、219円税込)と大サイズ(500ml、286円)を購入した。

筆者が購入したビール(筆者撮影)
筆者が購入したビール(筆者撮影)

「朝からビール買う人いるのかな」と思ったら、いた。丈の長いクリーム色のコートを身にまとった長身で細身の若い女性が、2本をかごに入れた。そして一瞬ためらった後、冷蔵ケースから、もう2本を出していた。

売り場につけられたPOPには、「スペルは間違えたけど、味は間違いなし!」と書かれていた。

すべての食品や農畜水産物に対し「捨てない」「活かす」情熱を

当初、発売中止で廃棄か関係者での消費になることだと諦めていたが、こんなにも多くの人が発売を待ち望んだということに驚いた。テーマや内容にもよるが、声をあげることで社会は変わるのだということを、身を持って知った。まわりの人たちが、数日間でのこの変化を直近で見て「ワクワクした」「感動した」と言ってくれた。

一方、今回のようなすさまじい情熱を、ビールだけでなく、他の食品や、肉・魚・野菜・果物といった農畜水産物の廃棄に対して向けることはできないのだろうか、とも思う。把握できる量だけでも、東京都民1400万人が一年間食べるだけの量を捨てている(年間612万トン)。実際にはそれ以上を廃棄している。

コンビニでは、給与所得者の平均年収(441万円)を上回る468万円分の食料が1店舗で捨てられている(一年間で)。自然災害で飲食料が不足する時に、賞味期限を多少過ぎても食べられる加工食品や、飲める水が、放置されたり廃棄されたりしている。今回のスペルミスもそうだが、健康被害の恐れがない理由で、莫大な量の食品が捨てられている。延期になったオリンピック・パラリンピック関連の食品も、いまだ倉庫に眠ったままという話を聞いた。包装資材も同様だ。

すべての食べ物に対し、「瑣末な理由で捨てることはしない」ということを、もっと多くの人が、思って、感じて、行動したら、こんなに食べ物を捨てないだろう。商慣習も変わっていくだろう。今、十分に食べることができない人や、給食しか食べるものがない子どもも、お腹が満たされるようになるかもしれない。微力ではあるが、そんな社会が実現できるために、筆者も尽力し続けたいと思う。

追記(2021年2月2日 12:47)

メルカリなどのサイトで転売が出回っていると聞き、サイトを見に行ったら、確かにたくさん出品されていた。 350mlが5缶で3,500円など(本来、350mlは1缶219円)。

酒類の販売には酒類販売業免許が必要で、免許なしに継続して転売していた場合、酒税法第56条違反となり、摘発されれば1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金となる可能性もある。多くの人の温かい気持ちが結集して販売が可能になったビール、一人で買い占めたり、免許なしで法外な値段で転売したりするの控えてほしい。

参考:

お酒の転売はどうすればできる?違法になるケースとその理由とは(物販総合研究所)

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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