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子どもたちにご飯を!農林水産省が食育目的で備蓄米 Jミルクは牛乳を フードバンク、子ども食堂へ届け

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

2020年5月26日、農林水産省が、子ども食堂やフードバンクに対して政府備蓄米を無償で交付(引き渡し)できると発表した。これまでも学校給食などに使用する米の一部を無償または有償で提供していたが、対象者を拡げた形だ。

ただし目的は「米の備蓄制度」や「ごはん食の重要性」の理解をはかるため

農林水産省は、学校給食用などの政府備蓄米を交付する目的として、「米の備蓄制度」や「ごはん食の重要性」を理解してもらうため、としている。

フードバンクでは、福祉目的で、必要な人や組織へと食品が提供されることがほとんどだ。特に米(コメ)という食材は、日持ちがするし、ご飯さえ炊ければ一食になるので、需要が高い。一方、米は無駄になりにくい食材なので、余剰が出ることが少ない。

筆者は2008年から2011年まで食品企業としてフードバンクへ自社商品を寄付し、2011年から2014年まではフードバンクの広報責任者として務めてきた。限られたその体験だけでも、米が、いかに必要とされ、不足しているかを痛感する。

全国にはフードバンクが100程度あり、米や米を保存する設備が潤沢にあるフードバンクもあれば、常に米が不足しているフードバンクもある。あくまで個人の見方に過ぎないが、割合としては後者が多いように感じている。

今回の農林水産省の交付は、福祉の目的ではなく、食育を目的とするものに備蓄米を提供する、というものだ。量も、上限は年間60kgと制限されている。それでも、フードバンク関係者が2000年代から長年「政府の備蓄米をいただけないか」と願い、訴えてきたことが叶ったのは喜ばしい。

医療・福祉施設に牛乳を無償提供

一般社団法人Jミルクは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受けて、農林水産省と独立行政法人農畜産業振興機構の支援を受けて、全国の酪農乳業関係者と牛乳の無償提供を2020年6月14日まで実施している。

対象者は、医療施設や児童福祉施設、フードバンクや子ども食堂、高齢者施設など。

生乳の生産量は、今の時期が一年間で最も多い。一方、感染拡大防止のため、学校給食や飲食店がやむなくストップし、酪農家の方々が生産した生乳が行き場を失っており、このままでは捨てられてしまう。

日本全国で子どもたちを対象とした食の無償提供

農林水産省、Jミルクのほか、全国でも、子どもたちを対象とした食の無償提供が行われている。

秋田県横手市の7社は、5月16日、児童養護施設と母子支援施設に特製弁当80食を提供した。

東京都西東京市の中国料理店とイタリア料理店は、5月23日からの4週間、週末のみ、中学生以下の子どもにランチを無償で提供している。

静岡県焼津市の居酒屋は、子どものいる家庭やアルバイトのできない大学生を対象に、5月24日、弁当70食を無償配布した。

沖縄県糸満市の焼き鳥店は、5月21日から26日まで、毎日60食の弁当を無償で提供した。

このほかにも、医療従事者に食事やお茶を提供する動きも各地で見られている。

今回の農林水産省やJミルクの米や牛乳の提供が、それらを必要とする人や組織へ情報が届くことを願っている。

参考情報

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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