世界3億6800万人が給食を食べられず「子どもには食べ物を大切にと言っているのに…」廃棄 新型コロナ

(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応で、4月の給食が中止となった。それに伴い、ある自治体は、給食食材の廃棄処分を決めた。でも、「それはあんまりだ」ということで、栄養教諭が、給食の食材を食品ロスにしないよう、教育委員会にさまざまな方策を提案した。最終的には、校長判断で手が上がった学校は職員が食材を買い取りにしようとした。すると校長が「職員に食中毒が出たら私は責任を負えません」と答え、結局、廃棄処分になってしまったという。

栄養教諭の憤りと悲しみ

栄養教諭の「はなぶさ」さんは「子どもたちにはいつも、食べ物は大切にしようと言っているのに、なんという矛盾」と憤りを感じている。

ツイートのメモだと文字が小さいので、勝手ながら概要をまとめてみる。

2020年4月の給食が中止となった。キャンセルができない食材があり、自分が所属している自治体は、製品の特性上、廃棄処分を決めてしまった。理由は、段ボールに入っている大袋から分けるとき、衛生面の懸念があること、チルド製品なので温度管理が難しいこと。

それにしても廃棄処分はあんまりだ!と思い、教育委員会に対し、食品ロスにしないための下記の提案をしていた。

1、直売りや地域の人への配布

2、フードバンクへの寄付

3、こども食堂への寄付

4、職員の買い取り

5、地域のスーパーマーケットで袋詰めして販売

6、スーパー以外の場所で販売し、収益を給食会計に戻して補填

教育委員会や関係団体からは、下記の回答があった。

1の直売りは衛生面や温度管理が難しく、今は人が集まることはできるだけ避けたいので現実的ではない

3のこども食堂への寄付は、賞味期限が短いため、難しい

5のスーパーでの販売は、業者から買ったものを第三者に売ると転売になるのでできない

6は「調べます」

最終的には、4の職員買取について、自治体にある学校のうち、栄養士のいる学校に限り、校長の判断で手が上がった学校だけ職員買い取りが許された。

「これで食材を無駄にせずに済む!」と、所属校の校長先生に許可を取ろうとしたところ、

「いくら栄養士が分けてくれるにしても、食材を袋に分けて入れるとなると、いったん外に出すわけだから、衛生面でリスクがゼロではない。もし職員に食中毒が出てしまった場合、私(校長)は責任を負えません」ということで、自分の所属校での買い取り処分は見送りになった。

自分はなんて無力なんだろう・・・と思うと、その夜から眠れなくなった。

子どもたちには、いつも「食べ物は大切にしましょう」と言っているのに、法律や、決まりごと、責任が邪魔をして、正しいと思う行動が取れない。なんという矛盾だろう。

SDGsや持続可能な社会を作るなんて、どこの世界の話なのだろうか?

私たちは、この仕組みを変えなければいけないと強く思った。

余剰となってしまった給食食材を一般に販売するため、食べて応援!学校給食キャンペーンというサイトも立ち上がっている。でも、前述のように、組織のトップが許可しないなどの理由があり、すべての余剰食材が販売できるわけではないだろう。

給食用パンに使われている脱脂粉乳は免税のため、他の用途に転用できない

筆者も初めて知ったが、給食用のパンの原材料に使われている脱脂粉乳は、免税だという。そのため、給食以外の用途には転用できないことになっている。4月7日、群馬フードサービス株式会社は、公式ツイッターで現状を訴えた。

それを知った「給食ひろば」さんが声をあげ、参議院議員の竹谷とし子さんが、税関に申請すれば、無償提供であれば給食以外にも転用できることを確認して下さった。

窓口に行かずとも、税関に郵送かFAXで関係書類を提出すればよいとのこと。

群馬フードサービス株式会社は「声をあげて、一歩前進できてよかった」と投稿した。

「給食ひろば」さんによれば、学校給食研究改善協会が、全国の都道府県の学校給食会に対し、給食以外の用途にも使える対応の依頼通知を出したとのこと。

新型コロナ対応で飲食店では持ち帰りが活発に

一方、新型コロナ対応で外出自粛となり、飲食店は、持ち帰りでの販売を積極的に勧めるようになった。これはとてもいいことである。

が、しかし、コロナ以前は、持ち帰りを頼んでも、許可してくれる飲食店は少なかった。筆者の経験上だが、たとえ手をつけていない食事でも、生ものでなく火を通した中華料理でも、「保健所が厳しいから」「食品衛生の問題から一律禁止」と言われることがほとんどだった。

今は、飲食店が食中毒を起こすリスクよりも、経営が立ち行かなくなるリスクの方がずっと大きくなったのだと思う。諸外国ではすでに持ち帰りは許容されていることが多い。これから気温が上昇してくるので食中毒に気を付ける必要はあるが、臨機応変に持ち帰りが許容されてきたこの傾向は、食品ロス削減の観点からは、とてもよいと考える。

新型コロナの影響で学校給食を食べられなくなった子どもは世界に3億6800万人

WFP(国連世界食糧計画)は、2020年3月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で学校給食を食べられなくなった子どもたちがどの国にどれくらいの人数いるかを示すデジタルマップを作成したと発表した。

Global Monitoring of School Meals During COVID-19 School Closures(COVID-19による休校の間の学校給食グローバルモニタリング)によれば、2020年4月18日現在、学校給食が食べられなくなった子どもたちは、下記の通り、世界に3億6800万人以上いる。

休校措置をとった国: 199

給食を食べられなくなった子どもの数: 3億6,885万973 名

休校になった学校のうち、WFP(国連世界食糧計画)の提供する給食がある国: 52

休校によりWFP提供の給食が食べられなくなった子どもの数: 1,215万8,233名

アメリカではドライブスルー形式やピックアップ方式で給食を渡す例も

世界的に休校措置が取られ、学校での給食が食べられなくなる中、それを子どもへ届けようとする工夫が見られる。

米国のノースダコタ州のファーゴ公立学校区では、校区内にある11,000人の学生(高校3校、中学校3校、小学校14校)に対し、時間帯と場所を決めて、ドライブスルー形式、あるいは徒歩で取りに来るピックアップ形式で、給食を渡すことになった。指定場所は、小学校や高校の駐車場や、地域のバス停など、時間帯を変えながら20カ所以上を公式サイトで案内している。児童生徒本人が受け取る場合は、身分証明証は必要ない。児童生徒の代わりに保護者が受け取る場合、学生証など、指定された身分証明証3種類のうち、いずれかを示せばよく、就学前の子どもを連れている場合、要望があれば、3食渡してくれるという。

非常時にも配布できる給食の可能性は?

アメリカの昼食給食の場合、ハンバーガーやピザの場合もあり、日本の学校給食に比べると、持ち帰りがしやすいという面もあるかもしれない。日本なら、たとえば、おにぎりと汁気の出ないおかず、果物、パック牛乳という組み合わせであれば、持ち帰りのしやすい給食になるかもしれない。

新型コロナ対策のため、給食食材の行き場がなくなり、売り上げを失った人が大勢いる。食材を食品ロスにしないために走り回っている人もいる。

かたや、学校給食がなくなってしまったため、母親が自分の夕食を抜いて子どもの昼食に充てたため、体重が4キロも痩せてしまったという事例があった。

毎年、自然災害が発生する昨今。2020年に入り、新型コロナウイルス感染症対策のために、小中高校は何度も休校措置になっており、そのたびに給食の食材ロスや給食を食べられない子どものことが課題にあがる。たとえ休校措置になったとしても、給食の食材を廃棄にせず、食事を必要とする子どもたちに渡すことができるような、臨機応変な対応と施策が必要ではないかと考える。そうでないと、国としてSDGsを目指すと謳いながら、飢餓(SDGsのゴール2)と食品ロス(SDGsのゴール12)を減らすどころか増やすという矛盾を生んでしまうことになる。

SDGs(国連広報センターHP)
SDGs(国連広報センターHP)

参考情報

WFP: Monitoring of School Meals During COVID-19 School Closures

Fargo Public School -Meal Distribution ( April 16th, 2020)

夕飯抜いて子の昼食に 給食ない1カ月、4キロやせた母(2020年4月15日付、朝日新聞)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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