ドゥテルテ大統領と議員200名給与1ヶ月全額寄付、コロナ対策1億円に 日本の国会議員年収2183万円

President Duterte(フィリピンのドゥテルテ大統領)(写真:ロイター/アフロ)

2020年4月5日、米国のCNNは、ドゥテルテ大統領が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に1ヶ月分の給与を寄付すると報じた。閣僚らも、年内の月給の75%を寄付するという。

秘書官補や補佐官も給与の10%を寄付

CNNによれば、大統領は給与1ヶ月分を全額、閣僚らは2020年4月から12月までの月給の75%を寄付する。下院の議員200人は、政府の新型コロナ対策のための5000万ペソ(およそ1億737万円)の初期費用を集めるために、2020年5月分の給与を全額寄付することに合意した。

また、秘書官補や、大統領法律顧問室と大統領報道官室の補佐官らも、4月の給与の10%を寄付し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の最前線にいるグループに、経済的支援を続けていく、としている。

4月5日、同じくフィリピンのThe Star(スター)紙INQUIRER(インクワイヤー紙)、中国の新華社通信なども報じている。

日本最大のビジネスデータベースサービス「G-Search(ジーサーチ)」で検索したところ、フィリピンでの本件4月5日発表以降、4月11日現在までの間、日本の主要メディア150紙誌では報じられていないようだ。

過激な対応で知られるドゥテルテ大統領だが・・・

2020年4月4日付のCNNは、ドゥテルテ大統領が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の一つである自宅待機を国民が破った場合、警官らが射殺も辞さない事態が有り得ると警告した」と報じている

それまでも、麻薬の取締りなどで厳しい措置を講じてきたドゥテルテ大統領だが、新型コロナという難局と闘う政府に対し、意外にも心ある対応を見せている。共同通信の記事によれば、2019年3月時点で支持率79%を得ている。

フィリピンは脱プラスチック対策も地道に進めている

フィリピンというと、日本では「日本より下」という見方をする人が多いかもしれない。だが、筆者は2011年から毎年フィリピンに渡航してきて、脱プラスチック対策などは、局所的ではあるが、日本よりもぐんと進んでいる印象を持っている。

フィリピンのセブンイレブンでは、今から5年前の2015年ごろには、首都メトロマニラではプラ袋を使わず、紙袋に切り替わっていた。

下の紙袋は2020年2月時点で、フィリピン・セブシティのセブンイレブンで使われている紙袋だ。「生分解性」であることも明記されている。

フィリピン・セブシティのセブンイレブンでビン入り飲料を購入した際、紙袋に入れてもらった(筆者撮影)
フィリピン・セブシティのセブンイレブンでビン入り飲料を購入した際、紙袋に入れてもらった(筆者撮影)

地図上では見えないくらいの小さな島で、飲食店が軒並み竹やステンレスのストローを使っているのを見たときには本当に驚いた。しかも店員に「これはなぜ使っているのか?」と聞いたら「海(の環境)を守るため」と、即座に答えが返ってきて、ますます驚いた。

フィリピンの小さな島の飲食店で使われているステンレス製ストロー(筆者撮影)
フィリピンの小さな島の飲食店で使われているステンレス製ストロー(筆者撮影)

インフラ不整備のため農産物の食品ロスは多いが価値の高い加工食品はロスにしない

2012年から2014年まで、筆者は、フィリピンでフードバンクを立ち上げようという日本のフードバンクのメンバーとともに、現地でどのような食品ロスが生じているかを調査していた。

フィリピンの国家食糧庁(NFA:National Food Authority)や大学、FAOフィリピン事務所、JICA(ジャイカ:国際協力機構)、食品企業、地域の役所などを廻った。その結果、わかったのは、フィリピンでは加工食品の食品ロスが少ないということだった。通常のマーケットで売れないからといって、すぐ捨てることはなく、第二の販売場所で売る。それでも売れなければ第三の場で売る、といったように、とことんまで売ろうとするので、予想に反してロスは生じていなかった。

一方、農産物の食品ロスはそれに比して多かった。冷凍・冷蔵設備が整っていないことや、国内の物流コストが高いこと、先進国に課せられた農産物の規格に合わないなどを理由に、農産物ではロスが生じていた。

このように、途上国でサプライチェーンの前半で食品ロスが発生しやすい傾向は、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書とも一致している。

ジェンダーギャップ指数、フィリピンは世界16位、ASEAN1位、日本は世界121位

筆者は、青年海外協力隊として、フィリピンで暮らしていた。英語でのコミュニケーション能力の高さはよく知られていることだが、女性が組織のトップを務めていることなど、女性の活躍度も世界でトップクラスであることに、隊員時代、衝撃を受けた。

2019年12月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数によれば、フィリピンは世界16位、ASEAN(アセアン)では1位である。

対して、日本は世界121位。

もちろん、一つ二つの面だけで「フィリピンすごい、日本だめ」と言うつもりはない。日本にも誇るべき面がたくさんあることは、フィリピン人の友人からも再三聞かされている。

国のトップに痛み分けの姿勢があるかどうか

デンマークは、自宅待機の期間、政府はフルタイム勤務者には給与の75%を、パートタイム勤務者には給与の90%を補償する姿勢を見せた。また、フリーランスに対しては、対前年比で減額分の75%を補填するとした。

このことについて、SDGs世界レポート(13)デンマークはパート給料90%補填、安心して自宅待機可 新型コロナ対策で書いて、twitterに投稿したところ、

「(デンマークは税が高いからなのに)こういう、他国と日本を一点でしか比較しない人本当にバカだと思う」

出典:twitterの投稿より

と書いてきた人がいた。記事には、デンマークの所得税と消費税が高いことはきちんと書いてあり、それ以外に日本が学ぶべき点があるからこそ記事を書いているので、批判するなら記事を読んでからして頂きたい。

日本の消費税にあたるフィリピンの付加価値税は12%だから、北欧のように高くはない。

JETRO(ジェトロ)のデータを見れば、一人あたりの名目GDPは、フィリピンが3,104ドル(2018年)で日本(39,306ドル、2018年)の10分の1以下。ドゥテルテ大統領のこれまでの施策も、人権を考えると、全てが称賛に値するとは言えない。2020年4月11日現在、フィリピンでの新型コロナウイルス感染症による死亡者は221名となっている(COVID-19 Map (John Hopkins University and Medicine)

だが、今回の「1ヶ月分の給与全額寄付」の件は、国のトップ自ら給与を差し出すことで、国民だけでなく、国のトップも犠牲を払うのだという痛み分けの姿勢を示したとも言える。

憲法学者の木村草太さんは、BuzzFeedのインタビューに対し、

政府が常に批判的検証の対象となるのは当たり前です。リアルタイムでどんどん批判をしていく必要があると思っています。政府の活動に不適切だったり、サボったりしていることがあれば、国民はしっかりと表現の自由を行使して、批判すべき点は批判すべきでしょう。

出典:「政府をリアルタイムで批判すべき」緊急事態と法律、憲法学者の木村草太さんに聞く

と答えている。

日本でも、国が大変な時期に、国会議員の給与を削減し、震災の救済資金に充てたことがあった。

かつて東日本大震災で庶民が苦しんでいたとき、旧民主党政権は国会議員の給与を1人当たり月額50万円削減することで、総額21億円を震災の救援資金に充てた。

国会議員の給与は、月額約129万円、ボーナスも年約635万円もある。大臣や総理大臣はもっともらえる。さらに領収書不要の「文書通信交通滞在費」が月額100万円もらえて、さらに「立法事務費」も月額65万円もらえる。新幹線と飛行機の無料パスも付いている。加えて、政党には莫大な金額の「政党交付金」が交付される。

出典:政府のチグハグな対応にイラっとする人の目線、東洋経済オンライン

この記事を元に計算すると、国会議員の年収は2,183万円。大臣や総理大臣はそれ以上だ。記事の著者は「まだ議論は出ていないが、苦しむ国民のために政治家が身を切るような話が出てくることに期待したい。」と述べている。

今の日本では、国のトップが給与もボーナスもそのままだ。国民だけに痛みを命じ、経済的補償もしないからこそ、批判が噴出しているのだと思う。

参考情報

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。世界資源研究所(WRI)とオランダ政府が運営し食品ロス削減を目指すチャンピオン12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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