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令和初の節分にお勧め!「恵方巻」ならぬ昭和の「巻きずし」

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

もうすぐ2月3日。令和初の節分だ。

筆者が生まれた昭和、「節分」といえば、豆まきがメインだったと記憶している。「鬼は〜外、福は〜内」というあれである。

平成になって、すっかり日本に定着した「恵方巻」。その発祥には諸説あるが、普及したきっかけとなったのが、1989年(平成元年)に大手コンビニエンスストアが「恵方巻」という名前で販売を始めたことだと言われている。

つまり、昭和の頃は「恵方巻」という名前はなかったことになる。

関西出身の昭和生まれの人たちに聞いてみた

「恵方巻、昔は関西だけだったよね」という声もよく耳にする。

それでは、昭和生まれで関西出身の方たちは、家で「恵方巻」のような太巻き(海苔巻き)を作っていたのだろうか。大阪府・京都府・奈良県・兵庫県の方にそれぞれ聞いてみた。

大阪府

残念ながら、家で恵方巻を作って食べた記憶はありません。

出典:大阪府出身の女性

京都府

うちは「恵方巻」なんて言葉もないです。どう考えてもビジネス用語、キャッチコピーですね。

京都には、そんな風習はないと思いますが・・・

京都はとにかく「鯖(さば)寿司」文化ですね。

京都の吉田神社は数百年の歴史で「豆まき」の風習があります。

具材はなんであれ、私にとっては、ただの「太巻き」か「海苔巻き」です。

出典:京都府出身の男性

奈良県

子どもの頃は、ずっと祖母が手作りしてて、祖母が亡くなった後は、母が作ってたわ。家によると思うけど、うちはそうだったよ。

具は、かんぴょう、しいたけ、卵、きゅうり・・・生ものは入れていなかったかな。

最近は、母も作れなくなって、私もめんどうくさくて、作らないで買ってるけどね。

出典:奈良県出身の女性

兵庫県

もちろん、あるよ。2年前は10本以上作ったよね。

具は、定番のしいたけ、高野(こうや)豆腐、かんぴょう、卵。それ以外に、トンカツ、牛肉のしぐれ煮、ツナ缶。

あとはサーモンや、まぐろなど、家族の好きなもので巻いたり。

ただ、最近は少人数の家庭が増えたから、スーパーで買って済ませてる人の割合は確実に増えてるわ。

出典:兵庫県出身の女性

大阪・京都・奈良・兵庫、それぞれ伺ったのが1名ずつなので、参考程度ではある。

ツイッターで「昔、恵方巻を家で作っていましたか?」のアンケートを実施したところ、大阪府堺市の方から「太巻きを作って丸かぶりやっていました」というご意見を頂いた。関西の中でも、作る・作らないに差があるようだ。

奈良と兵庫の方は「家で作っていた」。具材は、かんぴょう、しいたけ、高野豆腐、卵、きゅうりなどが共通する定番で、定番の具材に生ものはない。

太巻きの具材は七福神にちなんで七種類の具材(福)を「巻き込む」という考え方もあるようだ。

奈良・兵庫のお二人とも「最近は買って済ませている」「買っている人も多いのではないか」とのこと。

では、家で作らないとすれば、どこで買っているのだろう?

60%近くが「スーパーで買う」

株式会社Wizleapが運営する総合保険メディア、ほけんROOM(ルーム)は、2020年1月20日〜21日、インターネットを通して、10代から60代以上の男女1,031名を対象に、恵方巻と食品ロスに関する意識調査を行った。

その結果によると、「2019年、恵方巻はどこで買いましたか」という質問に対し、最も多かったのが「スーパーで買った」で57.9%。6割近くがスーパーで買っている。

16.7%が「家で作る」

次に多いのが「家で作った」の16.7%。

ほけんROOMが実施した恵方巻と食品ロスの調査結果。「去年(2019年)恵方巻はどこで買いましたか?」
ほけんROOMが実施した恵方巻と食品ロスの調査結果。「去年(2019年)恵方巻はどこで買いましたか?」

「家で作った」と答えた男性は14名、女性は109名。

「家で作るのは高年齢層」・・・かと思いきや、女性109名のうち、50〜60代は6名のみ。20〜40代が103名と、女性全体の94%を占めている。

ほけんROOMが実施した恵方巻と食品ロスの調査結果。「2019年、恵方巻はどこで買いましたか?」の質問に対する、年代別の回答
ほけんROOMが実施した恵方巻と食品ロスの調査結果。「2019年、恵方巻はどこで買いましたか?」の質問に対する、年代別の回答

コンビニが3位。その他に寿司店が入っている。この時期、コンビニやデパ地下では大々的に恵方巻販売の告知を展開しているが、この調査の対象者に関しては、スーパーで買った人が多いようだ。

東京都の講演では「食べない」「買わない」が圧倒的

2020年1月25日、東京都練馬区主催で区民100名程度を対象に行った、筆者の講演でも聞いてみた。恵方巻を「家で作る」「店で買う」は少数派で、圧倒的に多かったのが「何もしない(買わない、食べない)」だった。

休日に、わざわざ時間を使って食品ロスのことを学びにくるくらい熱心な層なので、バイアス(偏り)はあるだろう。地域が東京ということもあるかもしれない。が、日本全国、必ずしも恵方巻を買う人・作る人ばかりではない、ということだ。

2020年1月25日、東京都練馬区主催、食品ロスをテーマにした筆者講演(株式会社office3.11撮影)
2020年1月25日、東京都練馬区主催、食品ロスをテーマにした筆者講演(株式会社office3.11撮影)

料理本には「巻きずし」

筆者が使っている料理本のうち、「日本料理」のテキスト(辻学園 学園長監修)には、「巻きずし」「細巻きずし」「だて巻きずし」などが載っている。

巻きずしの項には「その家らしさがよく出るのが巻きずし。楽しいことがある日の食卓に」とあった。寿司は寿司でも、にぎり寿司は外で食べるものというイメージに対し、巻きずしは、必ずしも外食とは限らないかもしれない。

辻学園学園長が監修した日本料理のテキスト(筆者撮影)
辻学園学園長が監修した日本料理のテキスト(筆者撮影)

恵方巻はバレンタインデーと同じく企業の販売戦略 消費者は冷静に

「恵方巻」は、バレンタインデーのチョコレート同様、企業が販売戦略の一環として作ったものに過ぎないのではないか。

上記調査結果だけ見ても、スーパーで買う人が6割近くを占める。なのにコンビニや百貨店は、ポスターや垂れ幕、チラシを作り、押せ押せで売ってくる。顧客の強いニーズがあって売っているというより、彼らが売り上げを上げたいから売っているだけなのでは?

であれば、われわれ消費者が、その販売戦略に乗せられるのはどうなのだろう。

スーパーなら、期限が迫ったものを見切り(値引き)販売をしてくれる。もし店内調理をしているスーパーであれば、2月3日夕方近くに、店頭在庫や客の入りを見ながら作る数を調整することが可能だ。

だが、コンビニはそうはいかない。

2019年には経済学者が恵方巻のロス金額の試算をし、10億円を超えるとのことだった。それだけ捨てておいて、「福を巻き込む」ことを望むのは難しいだろう・・・。

周りに踊らされず、自分の食べたい時に食べたいものを買うもしくは作るのが一番

この時期、恵方巻の値段は全体的に高い。寿司を食べるにしても、皆の真似をして、2月3日に買って食べる必要はない。

企業の売れ残り食品は、企業だけが処分費用を払うわけではない。税金を使って家庭ごみと焼却処分される自治体がほとんどだ。

昭和の時代、家で作る「巻きずし」の習慣は、地域によっては、少なからずあったようだ。筆者の家では、巻きずしはたまにしか作らなかったが、家族の誕生日には、いつも自家製の「ちらしずし」だった。小さい頃から生もの抜きの寿司を食べていたので、寿司は今でも大好きだ。余るほど大量に売って捨てられて欲しくないし、このまま食料廃棄の代名詞であって欲しくない。

大量生産・大量販売・大量廃棄の時代は終わった。

2020年1月17日、農林水産省は、小売業者に対し、恵方巻の需要に見合った予約販売を勧めている。大手コンビニ3社はじめとした26の小売業者が農林水産省の呼びかけに賛同し、恵方巻のロスを減らすと明言している。

2020年、令和初の節分は、家で巻きずしを作ってみてはどうだろう。巻きす(すだれのようなもの)がなくても、クッキングシートなどを使って簡単に巻く方法もある。

注:書籍の表記をそのまま引用したため、「寿司」「すし」「・・・ずし」など、表記が混在しています。

参考情報

豪華な巻きずしを誰でもカンタンに巻けちゃうスゴ技SP(NHK ガッテン!)

2020年1月23日付 「ほけんROOM」実施  節分後に残った恵方巻は半額で売れる?恵方巻とフードロスについての意識調査

コンビニ恵方巻きは食品ロス問題の象徴だ

「売れ残り試算16億円?」節分夜35店舗の恵方巻、閉店前で残り272本 税金投入され大部分が焼却処分

「恵方巻きやバレンタインの売れ残りに税金8000億円近く投入」食品企業社員すら気づいていない真実とは

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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