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家庭ごみからもおせち?!1〜2万円するおせちを「余ったら半額値引き」の繰り返しでいいのか?

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

2020年1月15日、テレビ朝日系列の報道で、今頃なぜ?おせちが人気 Xmasケーキも大セールというのがあった。通販の楽天市場のサイトを見てみると、確かに、おせち料理が2万円強で買えるとある。半額で2万円以上か・・・。

筆者は一年近く前の2019年2月5日に「え?なぜ2月にクリスマスケーキやローストチキンやおせち売ってるの?」恵方巻だけじゃない余る季節商品という記事を書いた。

フードバンクには2万円を超えるおせちが寄付されていた

おせちが余ってしまう現象は、今に始まったことではない。筆者がフードバンクの広報責任者を務めていた2011年秋から2014年秋にかけての3年間、正月明けになってから2万円以上のおせち料理が寄付されてくるのを目の当たりにしていた。昔と違い、今のおせち料理は冷凍で流通するものも多い。賞味期限が長めになっているのだ。

フードバンクには、丸型のクリスマスケーキも届いていた。クリスマスイブの前に届いていた。

筆者がフードバンク広報責任者のとき届いていたクリスマスケーキ(筆者撮影)
筆者がフードバンク広報責任者のとき届いていたクリスマスケーキ(筆者撮影)

テレビショッピングや通販で売れなくなったおせちの販売案内もあった

フードバンクの広報を辞めた後も、おせちが余っていることを耳にしていた。たとえばテレビショッピングや通販で販売されるはずだったおせちが、何らかの事情で販売できなくなり、大晦日近くに、急遽、友人や知人などに「おせち買いませんか?」と告知をしていることもあった。

家庭ごみからもおせちが・・・

お笑い芸人でごみ清掃員としても大活躍している、マシンガンズ滝沢秀一さんに取材したときには、家庭ごみからおせちやメロン、クリスマスケーキが出てくるという生々しい話も伺った。

ー季節ごとに、ちょっと違う食べ物のゴミとかはあるんですか。

滝沢:栗なんかもやっぱり出ます。イガグリのままだとか。そうだな。正月明けは、それこそおせち。半分ぐらい残されているだとか、クリスマスケーキが出るんですよね。

ーホールの半分?

滝沢:ホールの半分ぐらいですね。やっぱり食べ切れないという理由なんでしょうけれども。でも、ここ数年はちょっと多いような気もしないでもないんですよね。

ーそうですか。

出典:家庭ゴミからおせち、メロン丸ごと3個・・・ゴミ清掃員マシンガンズ滝沢さんが明かす家庭ゴミの中身(上)

取材に応じてくれた滝沢秀一さん(筆者撮影)
取材に応じてくれた滝沢秀一さん(筆者撮影)

冷凍が「冷蔵」で運ばれて全処分のおせちも・・・

2018年末には、運送業者が誤って「冷凍」を「冷蔵」にし、埼玉県から北海道まで運んだおせちが配達されなかったということもあった。

マスメディアは「安く買えてお得」を報道するだけでいいのか

冒頭のテレビ報道では、余ったおせちやクリスマスケーキをテレビ局がお値打ち価格で買い、女子アナウンサーが美味しそうに食べるシーンが報道されていた。

それはそれとして、視聴者に対するメッセージは何なのだろう。「余ったおせちやクリスマスケーキが破格の値段で買えるからお得よ〜♪」ということか。

廃棄せず、値段を下げてでも売る企業姿勢は評価できる。でも、自社で数を調整できる販売者の立場なら、「売り切りごめん」でいいのではないか。

今の日本の食品業界では、メーカーが欠品を起こすと、悪くすれば小売(コンビニ・スーパー・百貨店)から「取引停止」を命じられるため、作り手の立場は弱い。強い立場(優越的地位)にある売り手にしたがって、多く作らざるを得ない。

でも、結局、そうやって販売企業が余らせたものは、事業者が廃棄コストを払うだけではなく、われわれ消費者が納めた税金も使って焼却処分されているのだ。日本のごみ処理費は、食べ物も全てひっくるめておよそ2兆円におよぶ(環境省による)。

SDGs(国連広報センターHP)
SDGs(国連広報センターHP)

「日本のSDGsは周回遅れ」

SDGsの専門家が「日本のSDGsは世界から見て周回遅れ」と嘆くのも当然だ。

日本では「余ったら廃棄処分」もしくは「余ったらリサイクル」という考え方が多い。それも、十分に食べられるものを焼却処分やリサイクルしている。

SDGs達成度の世界ランキング1〜2位のスウェーデンでは、バナナの皮やコーヒーのかすなど、食べられない部分をグリーンエネルギー(再生可能エネルギー)にして、街中をバスが走っていた。

日本にも賞味期限切れスーパーが登場しており、90%以上引きなど、信じられないくらいの値引率で販売している。

賞味期限切れスーパーの発祥の地であるデンマークでは、値引率を20〜30%に留め、得た利益の一部を途上国などの支援に活用していた。

少なくとも「はーい!お得ですよ〜♪」と消費者を煽るだけの姿勢ではなかった。

食料自給率が37%なのに、世界中から食べ物を買い集め、とてつもない距離を移動させて環境負荷をかけ、その上、何万円もするおせちを、毎年、お決まりのように余らせている場合ではないだろう。何万円する食品は、見込みで作って余らせるのではなく、「完全予約制」にしたらどうか。

販売者やメディアが変わらないのであれば、われわれ消費者が賢く冷静になり、「安いよ安いよ」を繰り返す風潮を変えていく必要がある。余って安売りするより、適量作って売る方が、結局、製造者も販売者も消費者も安く済むのだ。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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