小学生が考案!食品ロスを減らすための「食べ残しNOゲーム」

東京都内の国連大学近くで開催された「食べ残しNOゲーム」体験会(筆者撮影)

「食品ロス」という言葉がメディアに登場する回数は増えている。日本最大級のビジネスデータベースサービス「G-Search」によれば、主要メディア150紙誌に「食品ロス」という語句が登場した回数は、2019年は3,734回(2019年12月11日現在)。過去30年間で最も多かった2016年の2,964回を上回る。

今でこそ「食品ロス」は、多くの人が知る言葉となったが、そのずっと前に「食品ロス」に着目し、食品ロスを減らすためのゲームを開発した小学生がいる。現在、中学3年生の栗田哲(くりた・あきら)くんだ。

栗田くんが開発したのは「食べ残しNO(ノー)ゲーム」。

栗田哲くんが開発した「食べ残しNOゲーム」(筆者撮影)
栗田哲くんが開発した「食べ残しNOゲーム」(筆者撮影)

未来価値創造大学校のアドベンチャーコースに参加した栗田くんは、飲食店を営む父親の栗田太樹(たき)さんが抱える社会的課題の一つ「食品ロス」について調査や研究を重ね、NPO法人Deep People(ディープピープル)のアドバイスを受けながら、3ヶ月をかけて「食べ残しNOゲーム」を開発した。

その後も改良を重ね、2年近くの年月をかけて市販化にこぎつけた。

「食べ残しNOゲーム」は、プレイヤーが「パン屋」「寿司屋」「ラーメン屋」などの食べ物屋さんになる。店の出した食べ物の量と、客の食べた量とがピッタリ合うこと、つまり食べ残しをゼロにすることを目指し、売り上げを上げながらも食品ロスを減らしていく。

食べ残しNOゲーム(筆者撮影)
食べ残しNOゲーム(筆者撮影)

東京都の国連大学で開催された体験会

「食べ残しNOゲーム」の体験会が、2019年11月、東京都の国連大学で開催された。

NPO法人Deep People(ディープピープル)の中尾榛奈(はるな)さんが、ゲームができた背景をお話された。

栗田くんは、5人兄弟の末っ子なのです。お父さんが飲食店を経営していて、将来お父さんの会社を継ぐのが栗田くんの夢。その会社で、何か困っていることもあるんじゃないかということで、お父さんのとんかつ屋さんに行ってみました。とんかつ屋さんは、お客さんがお代わりをするのに、バックヤードに行くと、すごい量のキャベツが捨てられていたのを見たのです。それにショックを受けて、「自分がこれを何とかしないとな」と思ったのがきっかけでした。

調べていくと、「食品ロス」という、すごく大きな課題になっているということ知りました。小学生6年生なりに解決策を考えたとき、好きだったカードゲームで遊びながら食品ロスについて知り、考えられるものがあれば、みんなに意識してもらえるのではないかと思いつきました。

「あ、それ、ええやん。じゃあ、そのカードゲームを作ってみよう」と言って、1週間後に「先生、作って来ました!」と言って、画用紙を切って、手書きバージョンを持って来ました。遊んでみると「面白いやん。これをもっと良くしていって、もしかして商品にできるんじゃないかな」というのが始まりでした。そこから改善まで2年かかりましたが、美術の先生に協力いただいて、ほかの子どもたちに絵を描いてもらいました。

2018年秋に商品としてでき上がりましたので、多くの人に遊んでもらいながら食品ロスについて考えてもらいたい。栗田くんは、もう中3で受験生。栗田くん自身がそういう活動をしていくのはなかなか難しいので、私たちNPO法人が、このゲームを活用した食品ロスの啓発講座や出張授業をさせてもらっています。

国連大学で開催された「食べ残しNOゲーム」体験会の様子(筆者撮影)
国連大学で開催された「食べ残しNOゲーム」体験会の様子(筆者撮影)

「食べ残しNOゲーム」の概要

食べ残しNOゲームは、プレイヤーがお店屋さんになり、順番にサイコロをふって、カードを引いていく。

来店したお客さんは、持っているお金や食べられる量がそれぞれ異なる(筆者撮影)
来店したお客さんは、持っているお金や食べられる量がそれぞれ異なる(筆者撮影)

お店は、来店したお客さんの食べられる量ピッタリに提供すると、最もお金を得ることができる。でも、お店が持っているカードの食品グラム数がバラバラなので、ピッタリに合わせるのは難しい。

ハプニングを起こすアクションカードの数々(筆者撮影)
ハプニングを起こすアクションカードの数々(筆者撮影)

しかし、隣の人から「食中毒発生」や「注文間違い」など、ハプニングを起こすアクションカードが出されると、それに対応しなければならない。

ハプニングのアクションカードが隣の人から出されると、それに対応しないといけない(筆者撮影)
ハプニングのアクションカードが隣の人から出されると、それに対応しないといけない(筆者撮影)

最後に、一番お金を持っていたプレイヤーが勝つ。

実際にやってみると、結構、難しくて頭を使う。

食べ残しNOゲームに取り組む大人たち(筆者撮影)
食べ残しNOゲームに取り組む大人たち(筆者撮影)

小学校からの依頼が多く、食べ残しをなくそうとする意識につながっている

中尾さんの説明によれば、このゲームの依頼は小学校が多いそうだ。

出張授業の依頼が多いのが小学校です。小学校5~6年生の総合学習の時間や、家庭科の時間に呼んでいただいています。毎月の事務所での体験会や子ども食堂で、子どもたちがご飯を食べる前にして、ご飯を食べる意識を変えてもらおうというので、大阪では5回させてもらいました。

出張授業後のアンケートで「もう1回したいですか」という答えは、ほぼ「したい」です。たまに「したくない」という子がいますが、これは負けた子。

「またやりたい」という子が半分くらい(筆者撮影)
「またやりたい」という子が半分くらい(筆者撮影)

「食品ロスについて、よく分かりましたか?」という質問に対し、「言葉は知っている」という子が増えてきたように思います。子どもでも、4割から6割は「食品ロスを知っている」と回答があります。

「食べ残しNOゲームをきっかけに、自分の行動が変わると思いますか?」というのに対して「そう思う」が93.8%。「どうしますか」という問いに対して、「自分の食べられる量を知っておく」というのが一番多い回答です。

今日のゲームでは、(店の提供量と客の食事量を)ピッタリにすると儲かる、となっていました。外食するとき、自分の食べられる量を知っておいて、適正量を注文するということが無駄がなくていいんだ、という意識につながっています。

低年齢の子の感想では、「動物や植物の命をもらっているから、食品ロスはしてはいけないと思いました」というのがありました。こちらからは言っていませんが、子どもたちが感じ取って、書いてくれています。

大学生になると、飲食店でアルバイトをしている子が多いので、パン屋さんでアルバイトをしている子が「毎日2袋ぐらい捨てている」と書いたりします。

「日本の食品の安全・安心は、すごく誇りではあるけれども、これだけ捨てているのは、おかしいのではないか。安全・安心かつ食品ロスもなくしていけるような日本にしていきたい」という感想もいただいています。

栗田哲くんは、年末年始の受験を終えた2020年、どんな道に進んでいくのだろうか。これからが楽しみだ。

筆者が大阪府で食品ロスの講演を行った際、栗田さん親子が聴きに来てくださった。写真左端は大阪府で食品ロスの講演を主催して下さったNPOの代表、城一彦さん、左から2番目がお父さんの栗田太樹さん、右から2番目が栗田哲くん、右端は著者(関係者撮影)
筆者が大阪府で食品ロスの講演を行った際、栗田さん親子が聴きに来てくださった。写真左端は大阪府で食品ロスの講演を主催して下さったNPOの代表、城一彦さん、左から2番目がお父さんの栗田太樹さん、右から2番目が栗田哲くん、右端は著者(関係者撮影)

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