スーパーの売れ残りバナナでバナナアイス!スウェーデンで食品ロスを活かすアイス会社

捨てられる運命にあったバナナのバナナアイス。(株)ワンプラネット・カフェ撮影)

「生産量の半分が廃棄されている」(*1)ともいわれるバナナ。熟したバナナは「シュガースポット」と呼ばれる茶色い斑点ができるなど、見た目は変化するが、美味しく、身体に良い成分も多くなる。だが、茶色や黒色になったバナナは、たいていのスーパーでは「売れ残り」として値引きして売られる、もしくは、処分されてしまう。

そんなバナナを引き取って「バナナアイス」として商品化している、スウェーデン・ゴットランド島のアイスメーカーGute Glass Gotland(以下、グーテ・グラス)を起業した二人、Jimmy Hardingz(ジミー・ハーディングズ)さんと、パートナーのKlara Schultz(クララ・シュルツ)さんを訪問した。

Jimmy Hardingz(ジミー・ハーディングズ)さん(左)とKlara Schultz(クララ・シュルツ)さん(右)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
Jimmy Hardingz(ジミー・ハーディングズ)さん(左)とKlara Schultz(クララ・シュルツ)さん(右)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

ゴットランド島は世界遺産の街がある島で、人口は6万人弱。スウェーデン国内外から観光客が年間80万人訪れる、「スウェーデンの沖縄」のような島だ。日本ではアニメ『魔女の宅急便』の舞台としても知られている。

グーテ・グラスは、この島の南部、Vamlingbo(ヴァーリンボー)に工場を構える、オーガニック材料を使ったアイスクリーム製造会社。観光地Visby(ヴィスビー)のアイスクリームパーラーや、工場での販売のほか、国内100店舗以上のカフェやレストランなどで販売されている。また、スカンジナビア航空会社(SAS)と協力し、機内食としても年間通して販売されている。

グーテ・グラス専用の車(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
グーテ・グラス専用の車(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

ブランド名は「ゴットランド島のアイスクリーム」の意

Klara Schultz氏(以下、クララ):会社を作ったきっかけは、ジミーが、ゴットランド大学でサステナビリティ(持続可能性)を学んだこと。サステナブルな社会の実現のために、何かを作ることができないかと考えたのが最初です。「グーテ・グラス」という、1982年に設立された会社が休業状態だったので、そのブランドを買い、10年前に設立しました。

immy Hardingz(ジミー)さん(右)とKlara Schultz(クララ)さん(左)(筆者撮影)
immy Hardingz(ジミー)さん(右)とKlara Schultz(クララ)さん(左)(筆者撮影)

Jimmy Hardingz氏(以下、ジミー):グーテ・グラスの「グーテ」は、ゴットランドという意味です。自分たちが住んでいる島。「グラス」はスウェーデン語でアイスクリームという意味です。

説明するクララさん(左)とジミーさん(左から2番目)、通訳兼カメラマンのペオさん(右)、筆者(右から2番目)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
説明するクララさん(左)とジミーさん(左から2番目)、通訳兼カメラマンのペオさん(右)、筆者(右から2番目)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

ジミー:最初は、地元の食材で、オーガニックで天然素材の原材料を使っていました。その後、スーパーでバナナが捨てられることを知って、バナナアイスにつながりました。ゴットランド島にあるスーパーマーケットのCOOP(コープ)にお願いしたところ、バナナが茶色くなって販売できなくなると、提供してくれるようになりました。

ゴットランド島のCOOPのバナナ。買い物に来る親のこどもたちは1本無料で食べていいのだという(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
ゴットランド島のCOOPのバナナ。買い物に来る親のこどもたちは1本無料で食べていいのだという(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

そのバナナの皮をむいて、冷凍します。皮が茶色くなっていても、問題ありません。逆に、まだ黄色いバナナよりも、味や香りがはっきりしています。

皮をむいて冷凍したバナナを持つクララさん(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
皮をむいて冷凍したバナナを持つクララさん(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

クララ:ここにメニュー(アイスクリームのフレーバー)があります。

工場内のホワイトボードに細かく書かれていた(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
工場内のホワイトボードに細かく書かれていた(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

クララ:バナナの他にも、イチゴやチョコレート、ラズベリー、パッションフルーツ、マンゴー、パイナップルなどのフレーバーがあります。

工場内(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
工場内(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

クララ:原材料は、牛乳、クリーム、卵の黄身、砂糖、蜂蜜のみで、添加物ゼロ。それを証明するロゴマークもつけています。

取材当日、働いていたのは2名(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
取材当日、働いていたのは2名(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

バナナたっぷり!含有量25%

クララ:では、バナナアイスを試食していただきましょう。

バナナアイスを手に持つクララさん(右)とペオさん(左)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
バナナアイスを手に持つクララさん(右)とペオさん(左)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

クララ:アイスクリームのベストな食べ方は、マイナス8度から10度ぐらいにすることです。(注:アイスクリームの保存はマイナス18度)このアイスのバナナの含有量は25%です。

―わあ、おいしい!すごく、いい香りです。

卵白を泡立てたメレンゲもオーガニックです。

アイスを盛り付けるクララさん(左)とジミーさん(右)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
アイスを盛り付けるクララさん(左)とジミーさん(右)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

ーこんなに香りのよいバナナアイスは生まれて初めて食べました。やはり、十分、バナナが熟していることで、香りが強く、味も濃厚になるのですね。

バナナアイス(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
バナナアイス(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

ーところで、アイスクリーム、日本では、アイスクリームの賞味期限表示は省略することが可能です。マイナス18度以下で保管するので、品質の劣化がゆるやかだからです。スウェーデンのアイスはどうですか?

クララ:賞味期限の期間は、自分たちで決めています。私たちは8カ月に設定しています。なぜかというと、もともとの色や品質が、長期間保存していると失われてきてしまう可能性があるので、賞味期限は8ヶ月にしました。

―日本でも、アイスクリームを作る会社の中では(保存期間を)決めてあるんだけれども、賞味期限表示は印字しなくていいんですよ。政府がそう決めています。

クララ:スウェーデンでは賞味期限表示は必要です。でも、その期間は、自社で決めることができます。原材料や保存設備によって違い、たとえば大きなメーカーでしたら、8カ月の賞味期限ではなくて、3年先の賞味期限を付けるところもあります。

―へえ!

クララ:一般の大手のアイスクリームメーカーや販売会社は、「冷蔵庫で5時間までは保存OKです」と書いています。添加物を使っているから。でも、グーテ・グラスの製品だと、5時間は持ちません。保存料などは使っていませんので・・・オーガニックの材料じゃないと、このマークは付けられません。

見向きもされなかった地産地消でオーガニックのアイス、ここにきて注目高まる

―こちらは何のマークですか?

クララ:「ゴットランド島で製造されたアイスクリーム」ということ。もちろん、バナナも使っているので原材料100%ゴットランド産・・・とまではいかないですが。地元で製造した、ということです。

一番上は、非営利の団体AkatabeによるAマーク、上から2番目はEUの環境ラベル、一番下はゴットランド島で製造されたことを表すマーク(筆者撮影)
一番上は、非営利の団体AkatabeによるAマーク、上から2番目はEUの環境ラベル、一番下はゴットランド島で製造されたことを表すマーク(筆者撮影)

クララ:ゴットランド島は、地元で製造する商品を増やすことに関して、とても努力しています。たとえばCOOPが、捨てる代わりにバナナを回収して私たちに渡し、商品を作るのは、どちらにとっても益となるwin-winのシチュエーション(状況)です。

アイスクリーム産業で成功するのはすごく大変です。添加物をたくさん使っている会社もあります。製造の流れとして、月曜日は全ての原材料をミックスし、火曜日はその後の製造工程へ進みます。熟させる工程として12時間必要です。

機械を説明してくれた(筆者撮影)
機械を説明してくれた(筆者撮影)

クララ:材料だけでなく、製造工程で必要なエネルギーも、できる限り、持続可能な再生可能エネルギーを使っています。今は風力発電機があり、使用電力のうち、50%は風力発電を使っています。冷凍する時、冷気を循環させて効率化をはかっていて、これを「リサイクル・クーリング・システム」と呼んでいます。マイナス4度の状態で、アイスクリームが、ソフトクリームみたいな形で出てきます。後は手で容器にパッキングする。ジミーは、10年前から、手でパッキングしています。

―1日にどのぐらい作れるんですか。

クララ:だいたい900リットルくらいです。

このバナナアイスは、捨てられる運命にあったバナナを使うことで、食品ロスを生かしたアイスだと言えます。

10年前、この事業を始めた頃、地元で作るオーガニックアイスには誰も興味を持ちませんでした。でも、今では、食品ロス削減への意識はもちろん、そのような食品をもっと食べて楽しみたい、地域に貢献したい、という意識が高まってきています。

ジミーさん(手前右)、クララさん(右上)、ペオさん(左上)、筆者(左手前)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
ジミーさん(手前右)、クララさん(右上)、ペオさん(左上)、筆者(左手前)(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

次にチャレンジしたいのはイチゴ

起業してから10年間、地道に経営を続けてきたグーテ・グラス。食品ロスとして使っている原材料はバナナだけなのだろうか。

―原材料として食品ロスを生かして使っているのはバナナだけなんですよね?

クララ:食品ロスはバナナだけです。

―アプローチとして、グーテ・グラスさんからCOOPにアプローチしたのですか?それとも逆ですか?

クララ:こちらからCOOPにアプローチしました。「バナナアイスを作りたいんですけど、バナナはありますか」「いっぱいありますよ」とCOOPから言われました。果物は、たくさんの量が捨てられます。

COOPで販売しているバナナを持つペオさん(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)
COOPで販売しているバナナを持つペオさん(株式会社ワンプラネット・カフェ撮影)

―ほかのフレーバーでも、食品ロスを生かす取り組みを増やしていきますか?

ジミー:いい質問ですね。イチゴは形が悪いと売りにくいので試してみたいです。現在はバナナだけです。食品ロスになるニンジンのアイスクリームも作ったことがあります。

―これまでの10年間で、一番うれしかったことと、一番つらかったことをお聞かせいただけますでしょうか。

オフィス内には「愛」という文字が掲げられていた(筆者撮影)
オフィス内には「愛」という文字が掲げられていた(筆者撮影)

ジミー:これまでの10年間は、大変でした。アイスクリームの良さを消費者に理解してもらうまでに、長い時間がかかりました。でも、頑固に「絶対成功する」と信じてやってきました。スウェーデン語で、本物の原材料のことを「リキティアルーバル」と言います。自然素材、添加物を使わない、本物の原材料で作ったアイスクリームは、市場にありませんでした。でも今は、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げられたことも背景にあるのでしょうか、そのティッピングポイント(転機)を越えて、売れています。

一番うれしいのは、消費者からの反応やフィードバックです。もう最高。すごくいい商品、本物の商品を売っているから、消費者の心の深いところまで届いている。

経済的なことを考えると、材料にこだわって会社を経営するのは本当に難しい。一年間、安定的に経営するのは、すごくチャレンジングなことです。

アイスクリームを作る初日、テトラパックの会社が来て、アイスクリームを作るための機械を設置してくれました。われわれが素人で経験が全くないのを心配して、「大丈夫なのか?」と。担当者から、「この機械は、こんな小さなスケールの工場のための機械じゃないんですよ」と言われたんです。

そして8年が経ち、2年前、同じ担当者に会いました。ちゃんと会社が存続し、事業が成功している姿を、彼らにどうだ!という気持ちで見せることができました(笑)。

工場入り口の前に立つクララさん(株式会社ワンプラネットカフェ撮影)
工場入り口の前に立つクララさん(株式会社ワンプラネットカフェ撮影)

魂を失ってまで成長したくない

ジミー:ゴットランド島だけではなく、全国に、たとえば大きなスーパーマーケットなどに販売を広げる予定はありません。あんまりそこまでやりたくない。

成長自体は否定しません。でも、自分たちの魂を失ってまで成長することには興味がありません。魂を失わない限り、成長したいと思っています。

大量に安定的に製造しようとすると、今の作り方では立ち行かなくなってしまう。自分たちのこだわりを捨てることなく、今の作り方にこだわって、「手作り」や「職人」のイメージを大事にしたいなと思っています。

  • 1)廃棄される運命にあるバナナを使ったお菓子を販売しているアメリカのショップ barnanaによる。

取材を終えて

スウェーデン人はアイスクリームが大好きだそう。冬でも、いつでも誰でも、歩きながら食べていて、いかつい警察官も、おじいちゃん・おばあちゃんも一年中、楽しむとのこと。

試食してみると、これまで食べたどんなバナナアイスよりもずっと香りがよく、おいしかった。熟した方が、おいしく香りがいいのに、熟したバナナが捨てられることに、矛盾を感じる。この取り組みは素晴らしいし、COOPの寛容な取り組みも賞賛されるべきだ。だが、はたしてこれと同じことが日本でできるだろうか、と、心の片隅で感じた。熟したバナナなど、食品ロスになっているものをビジネスの原材料として他者に提供する取り組みが日本にも広がることを期待したい。

クララさん(左)、ジミーさん(左から2番目)、株式会社ワンプラネット・カフェの代表取締役社長、エクベリ聡子さん(右)、取締役で通訳・カメラマンのペオ・エクベリさん(右から2番目)、筆者(真ん中)(グーテ・グラス撮影)
クララさん(左)、ジミーさん(左から2番目)、株式会社ワンプラネット・カフェの代表取締役社長、エクベリ聡子さん(右)、取締役で通訳・カメラマンのペオ・エクベリさん(右から2番目)、筆者(真ん中)(グーテ・グラス撮影)

謝辞

取材に際し、スウェーデン語を日本語に通訳して下さった、株式会社ワンプラネット・カフェの取締役でサステナビリティ・プロデューサーのペオ・エクベリさんと、同行して下さった、株式会社ワンプラネット・カフェ代表取締役社長のエクベリ聡子さんに、深く感謝申し上げます。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを負担しているものです。この活動は、個人の発信者をサポート・応援する目的で行なっています。】