日経ビジネス食品ロス記事に補いたい食品業界視点とミクロ目線 食品ロスは実験室で起こっている訳ではない

イタリア・ベネツィアのスーパーマーケットの青果売り場(筆者撮影)

2019年10月9日付の日経ビジネス(オンライン)に、「食品ロス」の量、もっとちゃんと算出しませんかという記事が掲載されていた。2030年までに食品ロス量を半減させるという数値目標が定まっている、にもかかわらず、その定義や算出方法が曖昧である、という指摘だ。

筆者の最初のキャリアは日用品メーカーの研究所だ。その後の食品メーカーでも、皮膚や腸内環境の臨床試験を行い、データを取っていた。データの重要性や、統計値に「ウソ」があることは、少しだけ把握している。

確かに日経ビジネスの記事の指摘通り、算出方法は曖昧だ。だが、筆者は、下記3つの主な理由により、「年間の食品ロス643万トン」や「2030年までに半減」という数字に、あまり意味があるとは思っていない。昨年と今年に2回、生出演した久米宏ラジオなんですけどという番組でも言及した(番組では久米宏さんも「政府の統計値は信用できない」と発言)。

恵方巻きの廃棄。売り物はもちろん、売り物の形になる以前のものが、コンビニのベンダーなど工場から処分される(日本フードエコロジーセンターにて筆者撮影)
恵方巻きの廃棄。売り物はもちろん、売り物の形になる以前のものが、コンビニのベンダーなど工場から処分される(日本フードエコロジーセンターにて筆者撮影)

1、一次生産品のロスはカウントされていない

肉、魚、野菜、果物など、事業者が定めた規格があり、それらは港や畑で捨てられている。だが、これら一次生産品の食品ロスは、日本の政府が発表している食品ロスの統計値(643万トン)にカウントされていない。大量に採れてしまったキャベツやレタスをつぶした場合も「生産調整」とみなされ、食品ロスの統計値には含まれない。このことは、農林水産省の食品ロスの担当部署に以前、確認させて頂いた。

株式会社日本フードエコロジーセンターは、売れ残りの食品を食品企業から受け入れ、豚の飼料にリサイクルしている。日本フードエコロジーセンターの社長で獣医師の高橋巧一さんによれば、豚肉用の豚は体重115kg前後で出荷されるそうだ。決められた体重の幅を超えた豚、太った豚や痩せた豚は、豚肉にはならずにさっ処分される。

給餌される豚(日本フードエコロジーセンター提供)
給餌される豚(日本フードエコロジーセンター提供)

魚は、底引き網で獲ると、ターゲットでない魚も獲れてしまう。そのような魚や、輸送途中でうろこが剥がれた魚、カニの足が一本もげたもの、貝のつぶの大きさが揃わないものなどは、売れない、もしくは極端に価格が下がるため、捨てられることが多い。通常1kgくらいのヒラメも、あまりに大きいヒラメは料理人が扱いにくいということで、せりに出しても売れ残ってしまい、処分される。そのような魚を出すお店もあるが、少数だ。

大き過ぎる魚。せりに出しても敬遠されることが多い(築地もったいないプロジェクト魚治にて、筆者撮影)
大き過ぎる魚。せりに出しても敬遠されることが多い(築地もったいないプロジェクト魚治にて、筆者撮影)

野菜や果物も同様だ。りんごなどの果実は、実を大きくするために摘果(てきか)という作業で実を落とす。それらは地面で放置される。摘果の果実を生かしてシードルを作ったり、りんごのお菓子を作ったりする企業もあるが、少数だ。規格外農産物や、利用されない「未利用魚」の販売も、大地を守る会の「もったいナイシリーズ」や道の駅など、限られている。

スウェーデンの規格外りんご。これらはジュースに加工されて販売される(筆者撮影)
スウェーデンの規格外りんご。これらはジュースに加工されて販売される(筆者撮影)

イタリアの行政を取材した際、イタリアの食品ロスのうち、64%はPrimary(生産段階)で発生していると答えていた。ここから推察すると、日本の一次生産品を食品ロス量(年間643万トン)に含めると、数字はかなり膨らむであろう。

規格外の梨。黒い斑点があるだけでもB級品となってしまい、価格が激減する(宗高美恵子氏提供)
規格外の梨。黒い斑点があるだけでもB級品となってしまい、価格が激減する(宗高美恵子氏提供)

2、全国で大量に発生している備蓄食品のロスもカウントされていない

全国の事業者や家庭で備蓄している食品には賞味期限がある。大規模な組織では、賞味期限が切れる数ヶ月や一年前くらいに入れ替えが行われる。職員に配布されたり、防災月間のイベントで使われたりするケースもあるが、廃棄されている量も多い。しかし、全国で発生している備蓄の廃棄も、日本の食品ロスの統計値にはカウントされていない。これも、農林水産省に前に確認させて頂いた。

毎日新聞の調査によれば、5年間に176万食、5億円分の廃棄が全国の行政で発生している。

総務省の調査では、国の行政機関のうち、42%が、備蓄食品を全部廃棄していたという結果が発表された。

ペットボトルのミネラルウォーターの賞味期限は飲めなくなる期限ではないという記事も大きな反響を頂いた。筆者は、なんとかして備蓄のロスを減らしたいと思っている。が、消費者・行政・メディアなど、多くの立場の人が誤解している以上、今後もロスは出ざるを得ない。

一次生産品のロスに加え、全国で大量に発生している備蓄食品のロスもカウントしていない以上、日本の食品ロスの統計値「年間643万トン」は、ますます意味をなさなくなる。

ペットボトル水の賞味期限は飲めなくなる期限ではない(筆者撮影)
ペットボトル水の賞味期限は飲めなくなる期限ではない(筆者撮影)

3、日本の目標設定はバックキャスティングではなくフォーキャスティング

日経ビジネスの記事には、「2030年までに半減する」目標の、「何年と比較して半減」か、書かれていない。

家庭系食品ロスは、2000年と比較している。今から20年近くも前だ。事業系食品ロスの比較対象も同様である。

消費者庁発表の食品ロス削減参考資料(p27)にも書かれている通り、2000年時点の家庭の食品ロスは433万トンだった。2016年には291万トンまで減っている。それでも20年前にさかのぼり、多かったときと比べて「半減」ということだ。このことを知っていれば、日本政府や食品ロス関係の偉い方々が定めた「半減」という目標が、いかに「達成」を意識して、できそうなところと比較して「半減」としているのか、理解できると思う。

消費者庁発表資料に家庭の食品ロスの半減について明記されている(消費者庁発表資料p27)
消費者庁発表資料に家庭の食品ロスの半減について明記されている(消費者庁発表資料p27)

デンマークの食品ロスを、5年間で25%削減した立役者であるセリーナ・ユール(Selina Juul)にこれを話したら、「それで、はたして効果があるの?」と疑問視していた。「達成するかもしれない。達成しないかもしれない。どちらでも何も変わらない。それでは何も達せられない」と。

デンマークのセリーナ・ユール(Selina Juul)(筆者撮影)
デンマークのセリーナ・ユール(Selina Juul)(筆者撮影)

日本の目標の立て方は、多くが「フォーキャスティング」だ。現状の実績から考える。食品企業の生産数量や販売目標も「対前年比○○%」とすることがほとんどである。2019年2月の恵方巻きの販売数量も、多くの大手企業がそのように目標を定めていた。

SDGs(エスディージーズ)はそうではない。

SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHP)
SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHP)

「未来のありたい姿」から逆算して目標を立てる、バックキャスティングの考え方である。

参考:

注目の思考法「バックキャスティング」とは(「視覚会議」公式サイト)

注目の思考法「バックキャスティング」とは(「視覚会議」公式サイト)
注目の思考法「バックキャスティング」とは(「視覚会議」公式サイト)

SDGsには、1番目のゴール「NO POVERTY(貧困ゼロ)」など、これは無理かもと思うような、高めの目標が掲げられている。EUやヨーロッパの国々の食品ロス削減の目標設定もそうだ。「50%削減が無理」と思われ、あとから「30%」に下方修正することも過去にはあった。

先日、取材でお世話になった、スウェーデン語の通訳の方(スウェーデン人)は、日本のSDGs1番(NO POVERTY)の翻訳が「貧困をなくそう」としていることについて、「"貧困ゼロ"と、"貧困をなくそう"では、ニュアンスや意味がまったく違う」と、日本の腰の引け具合を指摘していた。

食品ロスとFood Lossはイコールではない 定義統一は非常に困難

日経ビジネスの記事では、「食品ロスの定義が曖昧」と述べられていた。確かに「可食部(食べられる部分)」=食品ロス、と言っても、細かく言えば、日本の中でも食生活が異なるので、ある人にとって「可食部」であるものが、別の人にとっては「不可食部(食べられない部分)」かもしれない。

世界統一指標として、「FLW(Food Loss and Waste)スタンダード」というのがある。これは、食品ロスをどのように計測・報告するかの基準を定めるため、世界資源研究所(WRI)をはじめとした複数の組織により、マルチステークホルダーアプローチによって開発された。いわば、世界の食品ロスの実態をはかるための基準である。

しかし、一つの国の中でも食文化が異なるのに、世界で統一するのはとても困難だ。食品ロスの問題は、食文化の多様性とも関係する。

フィリピンで新年のお祝いに食べられる豚の丸焼き(レチョン)。イスラム圏では食べない(筆者撮影)
フィリピンで新年のお祝いに食べられる豚の丸焼き(レチョン)。イスラム圏では食べない(筆者撮影)

最近、気になっているのが「フードロス」とカタカナ表記される風潮だ。これを外国籍の方に「Food Loss」とそのまま伝えた場合、日本の意味(可食部)とは真逆の意味(不可食部)になることもある。昨日10月9日まで渡航していたフィリピン・セブの講義でもそうだった(農林水産省 日・ASEAN食産業人材育成官民共同プロジェクト)。

2019年10月8日、農林水産省 日・ASEAN食産業人材育成官民共同プロジェクトでの筆者の食品ロスの講演(関係者撮影、Food Value ChainのFBページ)
2019年10月8日、農林水産省 日・ASEAN食産業人材育成官民共同プロジェクトでの筆者の食品ロスの講演(関係者撮影、Food Value ChainのFBページ)

先日、米国人に「食品ロス」を訳してもらったら「Food Waste」と返ってきた。オランダ人とやりとりしていたときも、可食部の意味で「Food Waste」を使っていた。そのため、国際機関や英語論文などではFood Loss and Waste(FLW)としていることが多いのではないだろうか。日本の省庁は「食品ロス」という用語を使っている。

頻発する自然災害では家庭でも事業者でも大量の食品ロスが発生

日本では、自然災害が頻発している。2019年9月の台風15号は、千葉県に大きな被害をもたらした。停電になったため、家庭では、冷蔵庫に入っている食べ物を捨てた事例が多いと、千葉に実家がある方から伺った。停電のために家庭の食品を大量に捨てるのは、2018年9月の北海道地震でも同様だった。被災している人たちが、食品を捨てる前にグラムを測るのは現実的ではないだろう。

加工食品を日々製造している食品メーカーでは、いったん停電になれば、それまで製造ラインで調理していたものは、すべて廃棄する。2011年3月11日の東日本大震災でもそうだった。原材料を投入してから製品が出来上がるまでに何時間もかかるため、調理中のものは全て廃棄する。測っている余裕はない。

2011年4月、東日本大震災の支援食料をトラックに積んで運び、石巻専修大学でおろす筆者(関係者撮影)
2011年4月、東日本大震災の支援食料をトラックに積んで運び、石巻専修大学でおろす筆者(関係者撮影)

日経ビジネスの記事の通り、食品ロスの量を正確に算出するとなると、一年に何度も発生している自然災害により、家庭と事業者で廃棄する食品ロスの量も計測しなければならなくなる。日本の全家庭に、計測用のはかりがあるわけではない。

食品ロスの機会は数えればキリがない 毎日の食品検査、調理学校、春秋の新製品発表会、全国のマラソン大会・・・

筆者は、食品メーカーに広報の責任者として14年5ヶ月勤め、2008年からはフードバンクへ寄付する担当も兼務していた。東日本大震災を機に独立し、その後3年間は、日本最大規模のフードバンクで広報を務めた。その経験から言えば、食品ロスの発生源をたどればキリがない。

いちいち挙げるのも意味がないが、主なものだけ挙げてみても、次のように様々ある。

毎日の食品検査

官能検査や物性など、食品製造企業では毎日、品質検査が必要なため、製品の中から一部分を抜き取り、検査して、残っている大半の食べられる部分は捨てている。これは、食品分析センターなどの検査機関でも同様だ。厳密に言えば、検査する一部を除き、それ以外の食べられる部分は「食品ロス」である。これらを集めて冷凍し、フードバンクへ寄付している企業も、少数だが存在する。

新製品発表会

食品業界では、毎年、春と秋に新製品発表会を全国の主要都市で行う場合が多い。その時に、スーパーマーケットや百貨店、コンビニのバイヤーなどに渡すサンプル品や試食品は、必要数より多めに準備する。食品の提供者は残ったら別の機会に使うが、筆者がスーパーマーケット勤務者291名に調査したところ、かなりの割合で、メーカーからもらったサンプル品は消費しきれずに廃棄していた。

食品展示会

毎年、定期的に行われる食品の展示会も同様である。アジア最大の飲食料品展、FOODEX(フーデックス)から食品ロスの講演依頼を受けたこともある。フードバンク広報時代、東京ビッグサイトや幕張メッセなど、大規模な展示会場で開催される食品展示会で余ったものを集めてトラックで運び、炊き出しや食料支援で使っていた。だが、フードバンク団体が全国に100団体程度ある一方で、食品業界の会社は数万規模に及ぶ。食品ロスは、再利用(Reuse:リユース)が追いつかないくらい発生している。さらに海外企業の出展者も、余ったものを持ち帰ることができず、日本で捨てていく。

東京都内で行われた食品の展示会で余った食料品の一部。フードバンクに寄付してくれる企業は一部に過ぎない(筆者撮影)
東京都内で行われた食品の展示会で余った食料品の一部。フードバンクに寄付してくれる企業は一部に過ぎない(筆者撮影)

自主回収

自主回収は、残念ながら、毎年、食品業界で発生している。ロットナンバーではなく、電子タグで個別管理できれば、回収対象は少なくできる。だが、電子タグは現在、実証実験段階で、普及していない。したがって、食品関連企業はロットナンバーで管理し、トレーサビリティ(追跡可能性)を担保している。となると、疑わしきものは、念の為、すべて回収する。60万袋、100万個、といった単位だ。筆者も食品メーカー時代に経験したが、回収品は当然、全て廃棄する。家庭から回収したものは使えないが、自社倉庫や取引先で保管されていたものなら飲食可能だ。一部企業で、店舗在庫などを回収し、安全性を確認した上で寄付に活用する場合もある。が、それも、ごく一部に過ぎない。

電子タグを全ての飲食物に貼り付けるのはまだ実現していない。だが経済産業省は2025年を目標に、大手コンビニ5社の飲食物に1,000億枚の電子タグを貼り付けることを目標に掲げている(写真:2018年6月のローソン取材時にローソンより提供)
電子タグを全ての飲食物に貼り付けるのはまだ実現していない。だが経済産業省は2025年を目標に、大手コンビニ5社の飲食物に1,000億枚の電子タグを貼り付けることを目標に掲げている(写真:2018年6月のローソン取材時にローソンより提供)

コンビニのロス

コンビニ業界では、オーナーインタビューすると必ず話題に出るのが「おでん」の廃棄だ。今年2019年には、連日、最高気温30度を上回る8月6日に、大手コンビニが販売をスタートした。当然、売れ残る。廃棄する。大手コンビニ3社のうち、ローソンは年間廃棄量を公式発表しているが、残りの2社は発表していない。環境省が2013年に試算した値を発表しているが、取材の経験から言えば、これが全量ではないだろう。

消費期限の手前に設定された販売期限で廃棄されるコンビニの弁当類(コンビニオーナー提供)
消費期限の手前に設定された販売期限で廃棄されるコンビニの弁当類(コンビニオーナー提供)

調理師専門学校での野菜の切り方練習

調理師専門学校の教員から伺ったところ、たとえば生徒が4,000人以上いるとすると、皆が大根のかつらむきの練習をし、それらは済んだあと、廃棄しているという。まだ食べられるはずだ。

全国のマラソン大会でランナーに提供される飲食物

東京マラソンでは、ランナー向けに寄贈されたバナナが、2013年や2014年時点で、数万本単位で余っていた。当時、筆者が勤めていたフードバンクでは、これらをすべてトラックで回収し、炊き出しや食料支援で使っていた。が、ここ数年ではそれは行われていないようだ。2018年2月の東京マラソンで、飲食物供給ポイントをまわり、フードバンクに聞いてみたが、今はやっていないとのことだった。京都マラソンではこのような食品回収が行われているが、北海道から沖縄まで全国で行われているマラソン大会で、残ったすべてを回収するのは無理だろう。

京都マラソンではランナー向けの飲食物で余ったものをフードバンクが回収し、食品ロスとして廃棄せずに活用している。全国では、このような活用はほんの一例だ(京都マラソン公式サイトより)
京都マラソンではランナー向けの飲食物で余ったものをフードバンクが回収し、食品ロスとして廃棄せずに活用している。全国では、このような活用はほんの一例だ(京都マラソン公式サイトより)

このように、一部を挙げただけでもキリがないくらい、毎日、食品ロスは、この日本のどこかで発生している。他にも、スーパーの売り場での顧客の忘れ物や箱つぶれ、へこ缶(缶詰の缶がへこんだもの)、キャンペーン終了商品(キャンペーンの締切日が過ぎたが、中身は食べられるもの)、全国のお祭りなど、厳密には数え切れないし、忙しい現場で測りきれない。食品業界の人間や生活者の目線で考えれば、実験室でデータを取るようにはちゃんとしたデータが取れないことは容易に察せられるであろう。

家庭の食品ロスについては、昭和55年から定期的に家庭の食品ロス量調査を続けている京都大学や京都市の調査結果が参考になる。

京都大学の浅利美鈴先生が2018年5月の廃棄物資源循環学会のシンポジウムで発表した、家庭由来の食品ロスの写真(筆者撮影)
京都大学の浅利美鈴先生が2018年5月の廃棄物資源循環学会のシンポジウムで発表した、家庭由来の食品ロスの写真(筆者撮影)

「目標達成」が目標ではない

このように、食品ロスの量を算出することは、家庭においても事業者においても、並大抵のことでは立ち行かない。いちいち細かく厳密に測ることが必要とも思わない。日本の政府が発表している「年間643万トン」は、かなり少なめに見積もったものだ。ここに農産物の生産調整でつぶすものや、肉・魚・野菜・果物などの一次生産品、全国の備蓄の廃棄を含めれば、年間1,000万トンは超えるのではないかと筆者は見ている。

2018年5月、京都大学の浅利美鈴先生が廃棄物資源循環学会で発表。家庭菜園で作った野菜は、埋めてしまうと獣害が発生してしまうため、生ごみで捨てられている例があるという(筆者撮影)
2018年5月、京都大学の浅利美鈴先生が廃棄物資源循環学会で発表。家庭菜園で作った野菜は、埋めてしまうと獣害が発生してしまうため、生ごみで捨てられている例があるという(筆者撮影)

心に留めておきたいのは、食品ロス量半減の目標達成が、われわれの目標ではない、ということだ。測るのが目的でもない。

理想は「食品ロスゼロ」。でも、そう理想的にはいかないから、食品ロスを減らすことを目指している。「半減」という目標設定は、そのための指標や道しるべに過ぎない。

日本政府や、食品ロスに関わる関係者が、達成できそうな数字をこわごわ設定した時点で、日本の「半減」など、たとえ達成できようが、一部の関係者が胸をなでおろすだけで、国民にとって、たいした意味はない。

代替案:全体で算出するのではなく各組織や各家庭で測れば食品ロスの削減効果を見える化することは可能

日経ビジネスの記事には

計測が難しい分野を今のままにしておくと、いつまでも実態が把握できず、削減してもその効果が見えてきません。

出典:日経ビジネス 2019年10月9日付 「食品ロス」の量、もっとちゃんと算出しませんか

とあった。だが、前述の通り、現実問題、日本全体で厳密に計測して算出することは不可能だと筆者は考える。

代替案として、全体(マクロ)で考えるのではなく、個別(ミクロ)で考えればどうか。分解するのだ。日本の食品ロス全体は、結局は、ミクロの集合体だ。

事業者であれば、それぞれの組織が計測すればよい。ある一定規模の企業なら、それは可能だろう。先進的な企業は、すでに目標を掲げて実践を始めている。スーパーマーケットから日々発生する廃棄物を19分類して計測し、ピンポイントで発生原因を特定し、削減を実践したユニーはその一例だ。

各家庭でもそれは可能だ。全国初、兵庫県神戸市が始めた食品ロスダイアリーでは、測れば測るほど、一週目よりも二週目、二週目よりも三週目に食品ロスが減っていることが、効果としてわかっている。これを受けて、愛知県や宮城県など、全国の自治体でも、家庭で食品ロスを記録する「食品ロスダイアリー」が取り入れられ始めている。

筆者は、家庭(自宅)で発生する食品ロスと生ごみを計測し、乾燥させた後の重量とどう違うか計測している。すでに計測回数は500回を超え、削減できた量は130kgを超えた。家庭のロスを減らす一つの方法として、食品ロスを含む生ごみをコンポストにする、あるいは乾燥させることで削減できる効果が身にしみて実感できた。

食品ロスは、実験室で起こっているわけではない。現場で起こっている。厳密なデータを取れればもちろん理想的だが、ただでさえ忙殺されている現場の人間に100%を求めるのは酷だろう。計測より他のことが優先する現場もたくさんある。完璧ではなくても、できる組織やできる人から始めればいい。できる組織や個人は、食品ロス量の算出をすでに始めて、削減に向けての実践を今も続けている。

参考記事:

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