10%値引でカード会員はラッキー、コンビニオーナーは夫婦で年365日働き年収200万、これでいいのか

食べられることなく食品ロスとして処分されるコンビニのおにぎりやパン類(筆者撮影)

セブン-イレブン・ジャパンは消費期限接近の食品を買うと「カード会員へ最大10%還元」と発表

大手コンビニエンスストア、セブン-イレブン・ジャパンが、消費期限接近の食品を買うと、最大で10%、カード会員に還元することを発表したと、6月26日付で毎日新聞が報じている。

セブン「最大10%還元」、ローソン「着実に効果」 食品ロス対策競う(2019年6月26日 毎日新聞)

セブン-イレブン・ジャパンの加盟店に配布される機関誌では「機会ロスをなくそう」というテーマでオーナー座談会が企画された(筆者撮影)
セブン-イレブン・ジャパンの加盟店に配布される機関誌では「機会ロスをなくそう」というテーマでオーナー座談会が企画された(筆者撮影)

ローソンは愛媛と沖縄で消費期限接近の食品を16時以降に買うと「カード会員へ5%還元、5%はこども支援へ」

同じく大手コンビニエンスストア、ローソンは、消費期限の食品を16時以降に購入すると、カード会員へ5%還元し、5%は満足に食べることのできないこどもの支援へ提供すると、2019年5月17日に発表した。2019年6月中旬より、愛媛県と沖縄県の450店で実験を開始している。

2019年6月26日付の毎日新聞の記事によれば、よい効果が出ているとのこと。

竹増社長は「開始2週間で(良い)効果が出ている」と明かし、廃棄する食品が減った割合は「事前の予想通り」と述べた。

出典:セブン「最大10%還元」、ローソン「着実に効果」 食品ロス対策競う(2019年6月26日付毎日新聞)
ローソンが実験を始めた「Another Choice(アナザーチョイス)」(筆者撮影)
ローソンが実験を始めた「Another Choice(アナザーチョイス)」(筆者撮影)

大手コンビニ各社の取り組みは「最初の一歩」

2019年5月17日の、NHKニュース7(セブン)やラジオなどの取材でコメントした通り、これら大手コンビニ各社の取り組みは「最初の一歩」だ。ゼロではなく、一歩を踏み出したことは、前進だ。

取材したコンビニのうち1店舗の外観(筆者撮影、白黒加工)
取材したコンビニのうち1店舗の外観(筆者撮影、白黒加工)

夫婦で休みなく年間365日働いて年収200万円と語るコンビニオーナーは1人2人だけではない

2017年から取材をしてきて、コンビニオーナーの休みの無さには驚いている。365日、一度も休んだことはない、というオーナーは、1人や2人ではない。夫婦二人でやっていて、妻には週に数日休んでもらい、自分は365日休み無しというのも聞いたし、妻が入院しているので基本的にはワンオペ(1人で担当する)という事例も聞いた。

では、それだけ働いたら、さぞかし年収は高そうだが、「年収200万円」という。これも、1人や2人に聞いた話ではない。

2019年6月の取材では「必要経費を差し引くと実収入ゼロ」という話も聞いた。貯金を切り崩して生活している。

消費期限の手前に設定された「販売期限」で廃棄される食品(オーナー提供)
消費期限の手前に設定された「販売期限」で廃棄される食品(オーナー提供)

独自の「コンビニ会計」で売れ残り食品のコストは8割以上、オーナーが負担している

休みは無いし、年収は夫婦で200万。その上、食品が売れ残っても原価を損益計算書に含めないため、売れ残り食品のコストの8割以上をオーナーが負担している(企業によって割合は8割、8.5割などと違う)。

2019年6月1日号の週刊ダイヤモンドがコンビニ地獄というタイトルで特集した。まさに「地獄」だと思う。

コンビニ会計では売れ残りの廃棄は原価に含ませない。そのため見かけ上の利益は大きくなり本部の取り分は見切りするより廃棄する方が大きくなる仕組み(辰巳孝太郎議員の公式サイト)
コンビニ会計では売れ残りの廃棄は原価に含ませない。そのため見かけ上の利益は大きくなり本部の取り分は見切りするより廃棄する方が大きくなる仕組み(辰巳孝太郎議員の公式サイト)

「人間らしい暮らしがしたい」

「食品ロス」にテーマを絞って取材をしていても、コンビニオーナー座談会では「人間らしい暮らしがしたい」という発言が出た。

ここ2年だけを見ても、取材させて頂いたオーナーで、辞めていった人を何人も見ている。

コンビニオーナー座談会(島田幸治氏撮影)
コンビニオーナー座談会(島田幸治氏撮影)

「コンビニ業界で本部がこれだけもうかっているのは富の再配分に問題がある」

イオンの岡田元也社長は、日本経済新聞の取材で、コンビニ本部とオーナーとの富の再配分に問題があることを指摘した。

イオン傘下のミニストップも反省して根本的な解決策を出す必要がある。24時間営業が適正かどうかというのは本質的でない議論だ。コンビニ業界で本部がこれだけもうかっているのは富の再配分に問題がある

(中略)

それによって加盟店がもっと時給を出せれば人は集まると思う

出典:革新、日本ではらちあかぬ イオン・岡田氏が描く未来 【未踏に挑む】(2019年5月19日付日本経済新聞)

コンビニは便利だ。筆者も定期的に買い物している。でも、その便利を享受する裏側で、「便利」と引き換えに、誰かが我慢や健康を害すること、家族との時間を犠牲にすること、命を削って働くこと・・・などを強いられているなら、それはおかしい。是正されなければならないと強く考える。もし会社の経営陣が、現場にそうさせていて平気でいるとしたら、理解に苦しむ。

コンビニオーナー座談会で(島田幸治氏撮影)
コンビニオーナー座談会で(島田幸治氏撮影)

コンビニ本部は現場のオーナーの声を聞いて欲しい、が、代わりに公正取引委員会と経済産業省に聴いて頂きたい

マスメディアの報道を通し、大手コンビニ本部の発表は聞こえてくる。が、現場で働くオーナーの声はほとんど聞こえてこない。大手コンビニ本部は、自社の売上を作ってくれている、現場のオーナーの声を聞いて欲しい、と願う。

だが、「本社業務で忙しい」のかもしれない。

であれば、代わりに、公正取引委員会と経済産業省には、しっかりと彼らの声を聴いて頂きたい。

筆者が取材した大手コンビニオーナーたちは、ポイント還元の施策に対し、「カード会員でもそうでなくても同じお客様なのに、カード会員だけにポイント還元するのは不公平」と語っている。

本部が優越的な地位を背景に自らに有利な契約を結び、加盟店主に負担を強いるようなやり方は、持続可能ではない。

加盟店主の声に徹底して耳を傾け、時代に即した健全な関係づくりを急ぐべきだ。

出典:(社説)コンビニ本部 時代に即した改革を(2019年6月24日付朝日新聞)
コンビニオーナー座談会で筆記するオーナー(島田幸治氏撮影)
コンビニオーナー座談会で筆記するオーナー(島田幸治氏撮影)

従業員の幸せを願い、食品ロスもほぼゼロの経営者は6月25日「ガイアの夜明け」で特集

食品ロスがほぼゼロ、従業員の幸せを考えて飲食店、佰食(ひゃくしょく)屋を経営している中村朱美(あけみ)さんは、2019年6月25日、テレビ東京系列「ガイアの夜明け」で特集された。

京都・佰食(ひゃくしょく)屋の国産牛ステーキ丼(筆者撮影)
京都・佰食(ひゃくしょく)屋の国産牛ステーキ丼(筆者撮影)

取材で伺った彼女の言葉を紹介したい。

そのコンビニの考えは、もう古いと思うのです。売り切れたら機会損失と言わはると思うんですが、ずっと棚に補充されているほうが機会損失、と思うんですよ。「ずっとある」と思うと、人は購買意欲がかき立てられない。ない日があるからこそ、あったとき買う気になるんですよね。そういう波を、あえて企業が起こすのは、消費者の知らなかった幸福感を生む、と思っているのです。

(中略)

あるのが当たり前じゃなくて、このものに価値があると思える幸せを企業が提供することも「あり」なんじゃないかなと思います。

ものがないほうがものを大切にするし、ないほうがそのものに対する愛情も湧くし、皆さんが残したりしなくなるのにな、と。機会損失という考えは間違っているよなといつも思うのです。

(中略)

業績至上主義みたいな「利益を、利益を」という考えを、経営者の人たちが、いま一度立ち返って、何のための利益なのか、なぜずっと追い続けなければいけないのかと考える時機が来たと思います。

出典:50食しか売ってはいけない!働き方のフランチャイズ目指し 売上増や機会損失からの脱却と従業員の幸せ

企業の責任とは、売上の数字を上げることだけではないし、食品ロスの数字を下げることだけではない。見かけだけ、何か環境に良さそうなことをやっているように振る舞うことでもない。その企業で働く人が「幸せ」と感じ、少しでも長く働き続けられるよう、働く場を整えてあげること、せめて「人間らしい暮らし」をできるようにしてあげることが大切なのではないだろうか。