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冬なら卵は57日間、生で食べることができる 卵の賞味期限は「夏に生で食べる」を前提に決められている

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(ペイレスイメージズ/アフロ)

筆者が2018年5月17日に書いた記事「賞味期限切れ卵は生で何日食べられる?ニワトリが24時間かけて産んだ卵を賞味期限で容赦なく捨てる私たち」が、連日、Yahoo!ニュース個人の「ライフ」部門のアクセスランキングに入っており、驚いている。

おそらく、卵の賞味期限設定の背景や、夏と冬で食べられる期間が違うことが、まだまだ充分に知られていないということだと思う。

記事を書いてから一年近く経っても、毎日どなたかが読んでくださっていること、今日からの食生活や買い物が、今までよりよい方向に変わるかもしれない、と、嬉しく思っている。

一般消費者向け卵の賞味期限は「夏に生で食べる」を前提にパックしてから「2週間」と設定されている

日本卵業協会によれば、われわれ一般消費者向けの卵の賞味期限は、「夏場に生で食べる」ことを前提に、産卵後、パックしてから2週間と設定されている。

気温が10度以下の冬場なら、57日間、生で食べることができる

気温が10度以下の冬場であれば、57日間、生で食べることができる。

レストランなど、法人向けの卵は「温度管理がしっかりしている」という理由で、夏は16日間、冬は58日間と、賞味期間を変えている。

しかし、一般消費者向けの卵の賞味期限は、夏も冬も「2週間」と設定されている。

採卵してから生で食べられる期間(青い棒グラフ)。採卵から7日以内にパックされ、パックしてから2週間で賞味期限が切れる(日本卵業協会の情報を元に筆者作成)
採卵してから生で食べられる期間(青い棒グラフ)。採卵から7日以内にパックされ、パックしてから2週間で賞味期限が切れる(日本卵業協会の情報を元に筆者作成)

日本卵業協会の公式サイトの「卵の賞味期限はどれくらいですか?」には次のように書いてある。

Q1 卵の賞味期限はどれくらいですか?

A:時期により異なりますが、卵の賞味期限は安心して「生食」できる期限を表示しています。

サルモネラ菌の増殖が起こらない期間は卵の保存温度によって決まります。英国のハンフリー博士の研究に基づいて算出され、家庭で冷蔵保存する7日間を加えたものです。

夏期(7~9月)が産卵後16日以内、春秋期(4~6月、10~11月)が産卵後25日以内、冬季(12~3月)が産卵後57日以内とされています。

実状はパック事業者と量販店、バイヤーの話し合いで決めておりパック後2週間(14日)程度を年間を通して賞味期限としている所が多いようです。日卵協ホームページ「表示とタマゴの安心」を参考にして下さい。

出典:日本卵業協会公式サイト

日本卵業協会の回答にある「安心して生食できる期限」は、「一年を通して安心して生食できる期限」、すなわち「夏場であっても安心して生食できる期限」とも言えるだろう。

卵の保存温度と生食できる日数(理論値)(日本卵業協会公式サイトより引用)
卵の保存温度と生食できる日数(理論値)(日本卵業協会公式サイトより引用)

卵は賞味期限を過ぎても加熱調理して食べることができる

消費者向けの卵は、前述のように賞味期限が設定されている。したがって、賞味期限が過ぎたからと言って、すぐに捨てる必要はない。

日本卵業協会の公式サイトにも、次のように書いてある。

Q16 卵は賞味期限を過ぎたら食べられないの?

A:卵の賞味期限は「安心して生食できる」期間です。

期限を過ぎた卵は加熱調理(70℃ 1分以上、他の食材と混じる場合は75℃ 1分以上)して食べて下さい。

但し保存(常温保存等)の状態によっては腐敗確認し廃棄した方が安心です。

出典:日本卵業協会公式サイト

市販の卵のラベルにも、「賞味期限が過ぎたら、加熱調理して早めに食べる」旨が書かれている。

みんながみんな、すべての卵を生卵(卵かけご飯など)で食べているわけではないだろう。普段から加熱調理して食べている人も多いと思う。

市販の卵の表示の一例(筆者撮影)
市販の卵の表示の一例(筆者撮影)

賞味期限は「品質を保証する期間」ではない 適正な状態で保存された場合の「美味しく食べられる目安」

これは卵に限ったことではないが、賞味期限は「品質保証期間」ではない。

美味しく食べられる目安である「賞味期限」や、おおむね5日以内の日持ちのものにつけられる「消費期限」は、あくまで、適正な状態で保存された場合の期間だ。

賞味期限(黄色)と消費期限(赤色)。縦軸は品質、横軸は保存期間(農林水産省HP)
賞味期限(黄色)と消費期限(赤色)。縦軸は品質、横軸は保存期間(農林水産省HP)

直射日光に長い間当たっていたり、高温高湿の場所に放置されていたりすれば、たとえ賞味期限内・消費期限内であっても、酸化するなど、品質が悪くなってしまっている可能性はある。

ニワトリが24時間かけて産んだ卵、最後まで味わって食べよう

伝えたいのは「無理してまで食べよう」ということではない。

卵の賞味期限は夏場であっても生食できる期間が前提で設定されている背景を知り、新鮮なら生食で、賞味期限過ぎたらゆで卵や目玉焼きなどで美味しく食べよう、ということだ。

卵の賞味期限が、どういう理由で、なぜその日数に決められているのか、ほとんどの方は調べたこともないのではないだろうか。

ニワトリは、1個の卵を産むのに24時間かけている。1日に1個が産卵能力の限界だ(日本養鶏協会公式サイトより)

夏場でも安心して生食できる期間を示す卵の賞味期限。表示の数字だけを見て「過ぎたからあぶない」などと安易に捨ててしまうのではなく、味わって食べて欲しいと願う。

ただし、同じ食べ物を食べても、免疫力の低い人は受け付けない場合がある。小さなお子さんや高齢の方、病気にかかっている方などは、生の食べ物は避け、加熱調理したものを食べさせてあげたい。

関連情報:

賞味期限切れ卵は生で何日食べられる?ニワトリが24時間かけて産んだ卵を賞味期限で容赦なく捨てる私たち

日本卵業協会「タマゴQ&A」品質・保存編

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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