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工場取材レポ「処分する恵方巻きの量は2018と変わらない」大量廃棄で多くの人が気づいていないこととは

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
恵方巻きやおにぎりなど米飯が一緒に入ってくる(日本フードエコロジーセンター提供)

食品リサイクル工場に入ってくる恵方巻きの米飯は2018年も2019年も変わっていない

食品リサイクル工場の日本フードエコロジーセンターを取材した。社長の高橋巧一さんによれば、2019年2月2日も2月3日も、食品リサイクル工場に入ってくる米飯(恵方巻きの米飯と考えられる)の量は、2018年と変わっていない。通常稼働時のほぼ2倍だ。

日本フードエコロジーセンター社長の高橋巧一さん(筆者撮影)
日本フードエコロジーセンター社長の高橋巧一さん(筆者撮影)

農林水産省の通知により恵方巻き大量廃棄を多くのメディアが報道

2019年1月11日、農林水産省が小売業に対し通知を出したことで、多くのメディアが恵方巻き大量廃棄問題を報道してくれることにつながった。通知がなければこうはならなかったので、ありがたい。筆者のところにも1月11日当日、青森県で講演する直前にNHKから連絡があり、急遽、電話取材を受け、過去の映像を使って、ニュースウォッチ9に出演した。

農林水産省の「前年実績で作る小売をお手本に」について、大手小売は・・・

食品業界で、作り手(製造業者)より、売り手(コンビニ・スーパー・百貨店)は強い立場にある。作り手からは「適量(減らして)作りたい」と言っても、小売は欠品を許さない。したがって、小売より強い立場にある国が通知したことで、強制力はないものの、プレッシャーはかかったはずだ。

だが、農林水産省が「前年実績(と同じ数だけで)作るように」と言ったことについて、大手小売はスルーしているようだ。兵庫県のヤマダストアーは、2018年も2019年も、前年実績で作ると明言している。だが、大手小売は「前年実績を上回る」右肩上がりの販売目標を立てている。

2017年の取材では「予約販売はロスのためじゃない」と答えていた小売が2019年には「ロス削減のため」と回答

2017年1月に筆者が取材したとき、大手コンビニ3社とスーパー1社は「予約販売はロス削減のためですか?」という質問に対し、4社とも「予約販売は食品ロス削減のためではない」と回答した。しかし、2019年に農水省が通知を出したことで、ロス削減の対策として「予約販売」と答えている企業がある。矛盾している。

あるスーパーは「恵方巻き販売のうち、2018年は予約販売の割合が3割だったのを、2019年は5割に増やす」と答えている。これなら、店頭売りを減らすということなので、理解できる。

多くの人が「恵方巻きは100%完成した状態で捨てられる訳ではない」ことに気づいていない

大学名誉教授が、恵方巻きの売れ残りの金額を10億2800万円と試算した。「ここには廃棄コストが含まれていないので、金額はもっと膨らむ」としている。

だが、まだ含まれていないものがある。それは、製造工場から大量に捨てられる恵方巻きだ。恵方巻きとして巻いていないものもあるし、巻いてしまってから崩したものもある。

前述の試算もそうだが、製造工場での廃棄が忘れられており、考慮されていない。欠品できない現状では、製造工場での廃棄も膨大だ。

恵方巻きの形にはなっていないものが製造工場から入ってくる(2019年2月、筆者撮影)
恵方巻きの形にはなっていないものが製造工場から入ってくる(2019年2月、筆者撮影)

工業生産では量の微調整ができない

もう一つ、多くの人が気づいていないことがある。

食品を工業生産すると、一回に作るロット(量)が大きいため、量の微調整ができないのだ。

たとえば、恵方巻きをあと100本だけ製造したいとする。でも一回、製造ラインを回してしまうと、数千本以上できてしまう、ということになる。米飯を炊く釜も、家庭用と違って、大量に炊けてしまう。これは、おにぎりや弁当などの米飯も同じだ。

米飯製造工場を取材した時も、「製造ラインを回してしまうと、大量に炊けてしまうので、1合だけ欲しい場合、それ以外は全部廃棄する」と話していた。フードバンクが近くにできてからは、寄付しているそうだ。

米飯工場で多く炊けてしまった米飯を引き取るフードバンク(筆者撮影)
米飯工場で多く炊けてしまった米飯を引き取るフードバンク(筆者撮影)

微調整できないのは一部の売り手(コンビニ)も同じ

そして、量の微調整がきかないのは、作り手だけではない。一部の売り手も同様だ。

恵方巻きに関して言えば、見切り販売し、調理しながら微調整するスーパーと、それをしないコンビニとに、大きな違いがある

スーパーや百貨店は、客の入りや在庫を見ながら、作る量を調整できる。閉店が近づけば、見切りする。

一方、コンビニは、恵方巻きを中で巻いているわけではない。微調整がきかない。ほとんどの店舗は見切り販売もしない。

恵方巻きとして出荷されようと待機していた具材。食品リサイクル工場に運ばれるのはほんの一部であとは焼却される(朝日新聞社提供)
恵方巻きとして出荷されようと待機していた具材。食品リサイクル工場に運ばれるのはほんの一部であとは焼却される(朝日新聞社提供)

「欠品NG」の商慣習もロス増加に寄与している

「欠品したら取引停止処分の可能性」という小売からの指示も、製造業者にプレッシャーをかけている。日本全国50,000以上の製造業者が、欠品を恐れて多めに作っていたら、ロスは減るはずがない。

寿司は寿司屋でだけ売っていれば、こんなこと(大量廃棄)にはならなかった

絶滅危惧種のうなぎは、うなぎ専門店だけで売っていれば、ここまで資源が枯渇しなかったと思う。

同様に、恵方巻きは、寿司屋、寿司専門店だけが販売できるのであれば、ここまで大量廃棄が問題にならなかっただろう。

作り手も売り手も、需要に合わせて微調整できる生産・販売体制なら売ってよし、とすれば減るはず

工業生産は微調整ができない。

コンビニの恵方巻きも、微調整がきかない。

恵方巻き大量廃棄を少しでも減らすためには、作り手も売り手も、微調整できる生産体制と販売体制であれば作って売ってよし、とすれば、少しでも削減は可能になると思う。

百貨店(デパ地下)の寿司屋や、キッチンを持つスーパーなどは、ある程度、それができるだろう。

ノルマは止める!

関係者へのノルマによる販売目標達成など、もってのほか。即刻、やめる。

働く人が幸せになるための目標設定ならわかるが、そうでない、不幸になる目標達成は、止めること。

メディアは「絵(映像)」だけ撮って帰るのでなく、血税をごみ処理に年間2兆円費やす現状など、本質的なことを報道して欲しい

食品リサイクル工場には、2月2日から3日、4日にかけて、多数のメディアが殺到する。前述の日本フードエコロジーセンターも、この時期、毎年、連日、メディアが殺到して、大変な様子だった。

確かにマスメディアは映像や写真が求められる。だが「衝撃的!」「もったいない!」で毎年「ショー」で終わらせていては、2020年もまた同じ繰り返しだ。

年間2兆円近くもごみ処理費に税金を費やし、そのうち、水分量が多く重量の重い「食べ物」ごみが占めている割合は大きい。そして税金を負担しているのは私たち自身だ。みんなで減らさないとダメ、といった意識改革や行動につながる内容を報道して頂きたい。恵方巻き廃棄は、まだ他人ごとになっている。全員が自分ごとにしなければ解決しない。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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