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肉汁ジューシー、衣サックサクの湘南名物「茅ヶ崎メンチ」もったいない精神を活かして金賞・グランプリ受賞

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
湘南名物「茅ヶ崎メンチ」をアピールする茅ヶ崎のレストランなんどき牧場(筆者撮影)

1970年創業の湘南野菜と肉のレストラン、なんどき牧場。地元で採れる野菜にこだわり、地産地消を目指している。「もったいない」の発想から、未利用・規格外の野菜や魚を使った商品開発をしている。店名の「なんどき」は、茅ヶ崎(ちがさき)のせつない恋物語が由来となっている。神奈川県茅ヶ崎市でレストランなんどき牧場を経営する、株式会社なんどき代表取締役の横山貢(みつぐ)さんを訪ねた。

店頭に掲げられた「なんどきの由来」(筆者撮影)
店頭に掲げられた「なんどきの由来」(筆者撮影)

豚肉の残りの部位が「もったいない」から湘南名物「茅ヶ崎メンチ」が生まれた

ー(筆者):茅ヶ崎メンチにもおからを使われているという。

横山貢社長(以下、横山):使っています。

ーあれも、もったいないを活かす一環なのでしょうか。

横山:健康志向というか。元々、お肉の中でも豚肉を結構利用していて。この辺では高座豚という銘柄豚があるんです。基本1頭買い。半分ずつ買うシステムで、うちが必要とする部位はロースとかヒレとか、10の中の3しかメニューに反映できなかったんです。残り7はもう一回、肉屋さんに引き取ってもらっていたんですけれども、結構高価な肉だし、もったいないなということで。何かできないかなということで、ミンチにしてハンバーグも作ったんだけれども。メンチカツにして、外のイベントでやっていたところ、これ(茅ヶ崎メンチ)が思い浮かんで。

レストランなんどき牧場を経営する株式会社なんどき代表取締役の横山貢氏(筆者撮影)
レストランなんどき牧場を経営する株式会社なんどき代表取締役の横山貢氏(筆者撮影)

ー2種類あるんですね。トマトとチーズ。

横山:基本はプレーンという、ベースのお肉だけのがあって。それにチーズの入ったのと、トマトと。トマトは結構、お勧めなの。なかなか、その発想ないでしょう?

ーミニトマトを入れるってことですね。

横山:豚肉だし、相性がすごくいい。ポークソテーは、ケチャップソースみたいのをやる(かける)じゃないですか。トマトの酸味って、すごく、豚肉と相性いいんです。トマトが好きな方が食べると、感動されます。

ーチーズもおいしそうですけれども。

横山社長:クリームチーズなので、チーズ好きな方が食べると。トマトメンチに関しては(テレビ番組の)「メレンゲの気持ち」と「ぶらり途中下車」でも(取り上げられて)。(お笑いタレントでグルメリポーターの)石塚(英彦)ちゃんと、石井(正則)さん(アリtoキリギリス)が、トマトの食べて「うまい!」と言っていました。

店内にタレント訪問時の写真が掲示されている(筆者撮影)
店内にタレント訪問時の写真が掲示されている(筆者撮影)

ーホームページに載っていたものですよね。第7回のフードバトルで金賞受賞されたのが、西暦で何年でしたっけ?

横山:2014年。

ーフードバトルが2014年で、かながわ商店街グルメコンテスト(グランプリ)は何年ですか?

横山:確か同じ年じゃなかったかな。毎年、なんらかの大きなイベントに出ていて、金賞はまだ2回しかない。ほぼほぼワンツースリーには入るんです。去年、おととしもずっと2位で、なかなか、トップに立つのは。

ーすごいですよね。ずっと入賞というのは。

横山:素材とか味付けにはこだわっているんで、通常のお肉屋さんが作るメンチとは、ひと味、ふた味違う。

ー京都(の佰食屋)でも、牛を丸ごと塊で仕入れて、すき焼きとステーキ丼と牛寿司にしているんですけれども。半端なのをミンチに店内でしてハンバーグにしているんですけれど、そんな発想ですか。

横山:それがおいしいんです。例えばモモとか肩だけでやっちゃうと単一的な味なんだけれども、いろんな部位が交ざることによって相乗的にうま味が増すという。ロース、ヒレ以外のところを全部交ぜて、硬めのところもあれば、軟らかいところもある。硬いところは、小さくひき肉にしてとか。

(スタッフに)ちょっと、うちのおいしいのを。メンチを揚げてもらって。

(茅ヶ崎メンチ登場)

茅ヶ崎メンチ(左)と豚の味噌漬け(右)(筆者撮影)
茅ヶ崎メンチ(左)と豚の味噌漬け(右)(筆者撮影)

ーパン粉も、すごく質のいいものを使われている、と。

横山:これ以上、いいパン粉は多分ないと思う。値段が通常の2.5倍ぐらいするパン粉。だから、サックサクです。

ー粗くひいているパン粉。

横山:粗びきです。このみそ漬けも・・・。

ーすごく香りがいいですね。

横山:特別に漬物用のみそを作ってもらっているんで。塩分だとか、その辺も調整して。

ー臭みがないです。

横山:このメンチもタマネギを使っているんです。肉屋さんのタマネギは結構、生のざく切りを入れるんだけれども、うちの場合はあめ色になるまで炒めたタマネギを使っているんで、肉の甘さにプラスされて。

ーパン粉が、ものすごい繊細な。

横山:すごく優しい。歯に刺さるようなパン粉じゃないでしょう?

ーびっくりしました。非常に質のいいパン粉だから。揚げ方にも工夫があるんでしょうけれども。

横山:丸(型)なんで、低温でちょっとじっくり揚げるというのが。手間ひま、時間を考えると、あまり得策じゃないんだけれども。まじめにこだわった理由の一つって、ジューシーに食べてもらいたい。肉汁が中に閉じ込められるんです。平たくするより。うちのメンチ、90%以上、肉ですから。メンチって、片栗粉を入れるパターンも(ある)。私も当初は片栗粉を3分の1ぐらい入れて作って。それもそれで食感がそれなりにおいしいんだけれども。逆に、このメンチはそういう混ぜ物が本当にタマネギぐらいしかない。

ージューシーさが保たれています。肉汁が。

丸型のメンチの中から肉汁が出てくる。外側のパン粉が細かくふわふわサクサクの食感で、他で食べたことはないテクスチャー(筆者撮影)
丸型のメンチの中から肉汁が出てくる。外側のパン粉が細かくふわふわサクサクの食感で、他で食べたことはないテクスチャー(筆者撮影)

横山社長:ひき方も、2種類、変えているんです。軟らかいところは大きくして、筋とかゼラチン質の高いところは細かくひいているんで、食感の変化というのは。

ーパン粉の食感もすごく驚きです。生まれて初めて食べた。皆さん、びっくりされるんじゃないですか。

横山:もっともっと(食べる人が)増えてくれてもいいと思うんだけれども。

ブームの食べものは一気に廃れる

ーこれ(茅ヶ崎メンチ)が誕生して何年になるんでしたっけ?

横山:もう10年ですかね。

ー食べ物って、一気にブームになったものって、一気に廃れていくので、じわじわ増えていったほうがいいですよね、恐らく。

横山:食べるものなんで、おいしくないと、リピートはしませんから。もの珍しいだけだと、1回で終わっちゃいますから。これ(茅ヶ崎メンチ)も、誕生したのは、端材を集めてミンチにして、外のイベントで売った。ちょうど茅ヶ崎のある店の部長さんが食べて「おいしい、これをやってみないか」というところから催事に広がったんで。

もったいないを活かすきっかけは地元農家の規格外野菜だった

もったいない、規格外や未利用を活かしたいという、そういう発想があると拝見して。なぜ、そのような思いに至ったのでしょうか?

横山:元々、規格外、未利用を手掛けたのは、ピクルスなんです。

ーカブですね。

横山:この辺は近隣農家がいっぱいいて、仲間もいるんです。間刈りや間引きがみんな捨てられて、畑の肥やしになっていたんで、「もったいないじゃん、ちょうだい」と言って、もらっていたんだけれども。基本的にカブでもニンジンでも大根でも、丸々1本見えるというのは、われわれ料理を提供する上では非常に価値があるという考え方なんだ。それで、付け合わせで使っていたんだけれども。(規格外は)出るときはめちゃくちゃ出るんで、店で全部使い切れんと。じゃあ、どうしよう?と。お総菜に使ったり、最終的にピクルス、漬物にということで、出たときにたくさん仕込んで、ピクルスはちょうど保存が効くんで、それで商品開発をした。それが、日本農業新聞という・・・。

ー受賞されたと。

横山:年間大賞を取ったという。その辺から始まっています。

(ピクルス登場)

ーありがとうございます。写真を撮らせていただいて。きれいですね。

規格外野菜を使った色とりどりのピクルス(筆者撮影)
規格外野菜を使った色とりどりのピクルス(筆者撮影)

横山:トマトも規格外なんです。多分割れていると思うけれども。

ー本当だ。

横山:割れているのが、ピクルス、漬物にとっては味の染み込みがよくて、一石二鳥なんです。

ーいろんな種類が使われているんですね。トマトとパプリカ。

横山:この辺、パプリカも作るようになってきて。キンカンは周りの駐車場の脇になっている。ユズとか、キンカンは結構(たくさん)。姫リンゴなんかも。

ー面白い。調味液のバランス、調合の比率があると思うんですけれども、決まるまでには結構・・・。

横山:味付けは試行錯誤します。絶えず進化していく、少し変わってきています。

ー一番難しいところかなと思うんですけれども。

横山:そんなに複雑じゃないんだけれども、バランスとか微妙なところが味に関わってくるので。

ー酸味と甘みと。

横山:ここ1年ぐらい前に薬膳を入れているんです。それが入ることによって、まろみや深みが増したのかなと。

ーかなり味が染み込んでいますね。

横山:ピクルスはこのミックスタイプと単体の丸ごとがあるんだけど、いろんな野菜が入ったほうが、鍋でいえば寄せ鍋と同じで、味が複雑に絡み合っておいしくなるんです。いろんな味が入っていろんなだしが出るというか。

ー切り方も工夫されているんですか。

横山:曲がったニンジンとか、そういうのもぐるぐる回しながら切って。

ー面を大きくしたほうが味が染み込みやすいということですよね。

横山:あとは厚さも。歯ごたえを持たせなきゃいけないので、その辺のバランスです。

ー厚過ぎず、薄過ぎずってことですね。

ニンジンは面が多くなるような切り方をされている(筆者撮影)
ニンジンは面が多くなるような切り方をされている(筆者撮影)

横山:年間通じると結構いろんな種類が。なんでもピクルスにしちゃうんで。キュウリ、ニンジンだけじゃないんだっていって。以前はレタスだとか、ホウレンソウもやったことあるんだけれども、これはさすがにちょっと。

ー合わなかったですか。

横山:そういうものだと思ってくれれば、お浸しの延長だと思えば。キャベツなんかは結構うまいです。

ー1970年に創業されて、当時はドライブインだったって。

横山:前身がドライブインなんです。

ー横山さんが入社されたのをきっかけに。

横山:ちょうど30年。この建物、2018年で30周年。

井出:じゃあ、1988年からということですね。ピクルス、摘果のブドウを使っていらっしゃるんですよね。

横山:ピクルスのラインナップの中で、藤稔(ふじみのり)という地元のブドウがあるんだけれども、「なんかうまくできませんか」というので、ピクルスに漬けてみようかなと。それを、おととし。

ー野菜よりも酸味が強いので漬ける時間を長くしてたんでしたっけ?

横山:結構、時間かかったんです。早いのだと3~4日たったぐらいからが一番おいしいんだけれども、藤稔に関しては結構酸味が強いというのと、ブドウの丸のまんまで漬けちゃったんで。皮があるんで液の浸透がしにくい。当初は漬けて3~4日たって食べると、ほぼ皆さん、酸っぱいと言われる。3~4カ月寝かせて出すとか、もう一回半分に割って、切った状態でもう一回漬け込んでやるという手法で、藤稔に関しては思った以上に大変でした。

ーいろいろ試行錯誤しながら。

横山:ほかの茅ヶ崎の飲食店でも藤稔のかき氷とかもやっていたし。甘く煮て。見た目はマスカットみたいで。

ー緑色していましたね、写真。

横山:おいしそうに見えるんだけれども、実際に食べると本当にレモン以上の酸味があると思うんだ。

ーリンゴに関しては、成熟したものよりも、摘果のほうがポリフェノールが10倍多いと青森で聞いてきまして。ブドウもそうかもしれないですね。

レストラン入ってすぐ、持ち帰り用の商品が並んでいる(筆者撮影)
レストラン入ってすぐ、持ち帰り用の商品が並んでいる(筆者撮影)

破砕米や未熟米など規格外の茅ヶ崎産玄米を活かした「茅ヶ崎アンダギー」

横山:この、茅ヶ崎アンダギー。沖縄のサーターアンダギーなんだけれども。茅ヶ崎の、同じ規格外玄米。

破砕米や未熟米など規格外の米を活かした茅ヶ崎アンダギー(筆者撮影)
破砕米や未熟米など規格外の米を活かした茅ヶ崎アンダギー(筆者撮影)

ー規格外玄米?

横山:を使っているんです、一部。

ー規格外というのは、何が規格外?

横山:破砕(はさい)米、未熟米。全体の総量、収穫量の5%出る、と言うんです。結構な量で。それを農家さんから仕入れて、中に交ぜて。もちろん、そのまま使っても。食物繊維だから。

ー(食物繊維)多いでしょうね、きっと。

横山:栄養価も。

ー(原材料欄を見て)茅ヶ崎産(の玄米粉)って。こういう生かし方があるんですね。

横山:デザインも茅ヶ崎のゆるキャラで「えぼし麻呂」という。うちはこれを使う食品第1号なんです。

ーそうなんですか、第1号!今回、いろいろ面白い商品を作られていて、牛乳プリンも、ハワイの。

横山:3年、4年経つのかな?ハワイのホノルルと(茅ヶ崎市が)姉妹都市になって。以前から牛乳プリンはあったんだけれども、そのタイミングでハワイの塩を隠し味に。あまり塩、塩していないんだけれども、あとでちょっと食べてみて。

ーありがとうございます。

ハワイの塩を隠し味に使った牛乳プリン(筆者撮影)
ハワイの塩を隠し味に使った牛乳プリン(筆者撮影)

未利用魚のサメも「サメバーガー」に

横山:茅ヶ崎も、最近だとサメ。

ー未利用魚ってことですよね。

横山:サメの開発(「茅ヶ崎地魚倶楽部」)。うちは、そのバーガーを作ってやったんです。

ー写真を拝見しました。

横山:サメ、イコール、臭い的なイメージがあるんだけれども、きちっと最初の処理が間違わなければ、非常に淡白で、おいしいというか、味付け次第。結構おいしく食べられるんです。

ーサメは珍しいですね。

横山:基本的にこの辺って、サメを食べる文化はないじゃないですか。

ーあまり聞かないです。

横山:九州のほうとか行くと、小倉かどこかあるらしいんだけれども。先日も、茅ヶ崎の芸術花火大会というのがあって、その時には限定100食だったんだけれども。即、完売しちゃった。

道路に沿って大きな看板がある(筆者撮影)
道路に沿って大きな看板がある(筆者撮影)

調理師学校で10年修行してからレストランなんどき牧場を立ち上げた

ー横山さんが1988年に入社されたのはもう卒業されて、すぐ(ここ)ということですか?ほかにも・・・。

横山:私は調理師学校を出て10年ぐらい修業しました。

ー10年修業してから。

横山:30年前にこの店を立ち上げたという。

ードライブインだったところをレストランにして。

横山:「牧場」というのも、お肉を売りにするというイメージ付けで、牧場という名前にして再スタートした。元々、私、修業は和食なんだ。本当は魚とか、そっちのほうが得意なんだけれども、なぜか肉になってしまって。

レストランでは食べ残しはほぼ出ない

ーすごいですね。今、食べ残し、食べ切れないほど取っちゃってというのが問題になっていますが、ここではそういうのを減らす工夫って、されていますか?

横山:特段、そういう食べ残しもないんじゃないかな。30年前にやった当初は食べ放題も、こんなに取って食べられるのか?っていうぐらい取って、案の定、ごみに、というのもあるし。一応、規定上、食べ残しはお金いただきます、とは小さく書いているんだけれども。

ーたくさん、ではないですよね。ここに特化されているから。どうしても、規模を拡大していくとそういう傾向が出てくる感じがあるのかなと。

横山:増えれば増えるほど、目も行き届かなくなるとか、弊害が出てきますよね。うちは店舗展開は頭にないんで。

ーいろいろ取材させていただいて、スーパーにしても飲食店にしても、増やさない経営者の方のほうが優れているように思います。

レストラン入り口で販売される持ち帰り用「茅ヶ崎メンチ」(筆者撮影)
レストラン入り口で販売される持ち帰り用「茅ヶ崎メンチ」(筆者撮影)

世の中はもったいないで溢れてる

横山:うちは今、この店は情報発信の一部と考えて、メンチやみそ漬けを外販、ギフトに流すようにしているので。もったいないというのは、いろんなとこで(見る)。百貨店でやっていると、特にパン屋。

ーパンは多いですね。

横山:毎日、ごそっと捨てるんだよ、あれ。そのまま袋ごと持ってこようかなと思っちゃうぐらいだけれども。

ー百貨店でもブランド力を気にするところはすごくそういう傾向があるかなと思って。

横山:値切りで売り切っちゃう考えもあるけれども、基本的にある程度ブランド力があるところはやらないから。余ったら完全に割り切って、捨てちゃう。

もったいないですね。

横山:コンビニなんかでも、結構、問題になっているじゃない。一時、勝手に値引きして売ったら、怒られてどうのこうの。

ーでも、今はもう値引きOK。OKだけれども本部のマージンが。捨てたほうが大きいという仕組みで。

横山:本部としてみればブランド価値は維持したいというのはあるから。分かるけれども。

ーそれでも、問題ですね。食べられない人もいるわけですから。うちは(パンは)予約して買っています。都内の某百貨店だとブランドを気にして閉店間際のお客さんにもいろんな種類を。

横山:そこなんです。百貨店側からしてみれば、商品がないのは駄目なんだという言い方をするから、そこそこそろえておかなきゃいけないというのがあるから。

レストランなんどき牧場の「湘南野菜 まるごとピクルス」(筆者撮影)
レストランなんどき牧場の「湘南野菜 まるごとピクルス」(筆者撮影)

今後も「もったいない」素材を活かす取り組みを続けていきたい

横山:規格外でも、残留農薬を今はすごく気にしているから、農家さんもそういった(安全性に留意した)取り組みをやっているみたい。以前から思えば、安全。

ー摘果のリンゴの方々も、そうおっしゃっています。従来の農薬のやり方だとできないので、試行錯誤して変えたっておっしゃっていました。

横山:同じ摘果でも、小田原寄りの湘南ゴールドというミカンが有名らしい。それの摘果を。摘果とか、B級、C級とか、規格外を仕入れて、ドリンク作ったり、夏はかき氷をやってみたり、今年はチャレンジする。

ーいいですね。

横山:数年前にはミニトマトのかき氷をやって、1回テレビで紹介されたことあるんです。

ーいろいろできそうですね。湘南ゴールドの緑のミカンとか。

横山:ポン酢なんかもできんじゃないかなと。

ーアイデアを考えられるのがお好きなんですね。

横山:作るのが好きなの。ちょっとした発想でいろんなのできるじゃないですか。なるべく規定概念にとらわれないで。いろんな角度から見て、作っていきたいな。

ー今後は道の駅(市の計画)があって、湘南ゴールドがあって、かき氷があって、ドーナツがあって、いろいろありますね。あとは定番を育てていって。

横山:茅ヶ崎は「ちがさき牛」という、頭数はめちゃくちゃ少ないんだけれども、そういうブランド牛もいて。ロースとかヒレは引っ張りだこでなくなっちゃうんだけれども、意外と内臓は残るんです。その内臓を全部交ぜてホルモン焼き、みそ漬けで、うちのオリジナルの味付けを作って。できるかもしれない。それも、もったいない

井出:そうですね。もったいない精神ですね。長時間ありがとうございました。

取材を終えて

専門誌の『現代農業』(農山漁村文化協会)に、横山さんが摘果ブドウのピクルスを開発した話が掲載されており、今回取材をお願いした。訪問してみたら、ピクルスだけでなく、茅ヶ崎メンチ、茅ヶ崎アンダギーなど、商品の多くが「もったいない」から発想されたものだった。公式サイトや、これまでにメディアに露出された記事からはわからなかったことなので、お話を伺ってよかった。道の駅計画をはじめとした今後の新たな開発商品も楽しみで、期待したい。

取材日:2019年1月16日

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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